- Tue, Apr 12
- 08:54 田村耕太郎さんのケネディスクール危機管理合宿のレポート。おもしろいねえ。アメリカの組織の良い面。日常世界を安全に管理するのは下手だけど、危機には伝統的に強いのがアメリカの組織。アポロ13号の時もそうだ。フロンティアの歴史かなあ。 http://bit.ly/eWZybe
- 09:41 昔手術室の医療ミスをなくすシステムの設計の為の調査を行ったことがある。事故がおこったときの対応をどうするか細かく想定して提案したら「いらない」と。事故が起こったらしょうがない。全力で対応するしかない。彼らが欲しいのは事故が起こらない仕組みだという。
- 09:44 そこで事故が起きる状況をかなり調べた。高度な作業を何人も出行う手術室のオペレーションは人間の能力を究極に使い切る場所の一つである。医療事故は非常に難しい自体に直面して起きることはほとんど無く、医師が起こっている事態を処理するために必要な能力の評価を間違うと起こる。
- 09:51 これは新米とは限らない。高度な手術をおこなっている病院から普通の手術を行う病院にローテーションで移り、5年で戻ってきたときに技量が落ちている。その時にもおこるし、年をとってきても起こる。手術は手術計画をたてて行うが、実際にはその計画通りには行かない。状況的行為で対処する。
- 09:54 その記録をノートやカードに保存して共有する。そこにはパターンが生まれているので手術室での事故を防ぐために不可欠の作業だ。しかしそれはまた特定の手術室というコンテキストに高度に依存している。ちょっと前まで慶應系と東大系では同じ手術でもどちらの向きからメスを入れるかがちがった。
- 09:56 こうした分野は「標準化」すると効果が下がっていくので、職人技として師匠から弟子へと継承していく。これに麻酔医が加わり、最近は医療機器を操作するエンジニアも加わる。こうした高度なシステムにおいて、僕たち部外者は事故がおこったときの対応を考えてしまうが、医者は違う。
- 09:58 事故が起きないシステムが欲しいというわけだ。事故が起きたときにどう対応するかのシュミレーターではなくて、事故が起きないナビゲーターが欲しいというわけだ。もう8年くらい前の話である。いまなら「ああ、こういったメンタルモデルなんだ」とすぐにデザインできるが、当時はその道具がない。
- 10:00 何度も手術室に立ち会った。(研究担当の教授という役割をもらっていた)手術計画に従いながらもその場その場の判断で別の行動をする。これをsituated actionと専門用語で呼ぶ。ゴールは明確だ。そのゴールに到達するときにいくつかの経路がある。
- 10:03 好ましい選択は事故が起きやすいところを避ける、である。タクシーの運転手がカーナビをみて渋滞の場所をさけるようにだ。避けられないときは自分よりも能力の高い医師にバトンタッチをする。そうして事故がおこる確率をできるだけさげる。もし起きたら総出で危機に対処するしかない。
- 10:05 日常的に必要なのは危険を避けて目的を達成する作業を支援してくれる仕組みだという。これは麻酔医のメンタルモデルだ。とにかく切って悪いところをとりたい外科医ではない。外科医が患者を手術しているときに、これ以上手術をしたら人命にかかわる、と言うのも麻酔医の大事な役割である。
- 10:07 最近は機械が手術室に入ってきていて、オペナースの負荷が下がっている。だがそれはそれで厳しいトレーニングがなくなるとミスがおきる割合が高まっていく。日常的な業務の中で事故を減らして手術のクオリティを上げていく。これはデミング博士の品質管理の方法だな。
- 10:10 この研究は3年ほどで終了した。手術室で医師は手も足も五感も全部動員して作業をしている。その状態でどのようなインターフェースを設定するのか、いくつか試したがどれも使い物にならなかった。が、じつはKinectが使えそうだなといま思っている。もう一度この問題に挑戦するつもり。
- 10:16 もう一つ大切な場所に緊急救命室がある。救急医療は外科とは別の分野だ。ここも大切である。ITと医療って医療知識にITを関わらせようとする研究がほとんどだけど、日々の手術室や緊急救命室における医師のプラクティスを支援する方法も大事だ。
analysis
2011年4月13日水曜日
危機管理と危機回避:医療事故をめぐって
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿