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2010年6月30日水曜日

フェラーリとイノベーション

  • Tue, Jun 29 
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  • 21:22  フェラーリとイノベーション:イノベーションとブランディングについて考えている。すでに商品があってそれをどのようにブランディングするかはマーケティングの領域だし、マーケティングリサーチが役に立たなくなった90年代にはアーカーのブランドエクイティ戦略がもてはやされた。
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  • 21:27  だが、イノベーションとブランディングに関してはきちっと議論されていない。アップル社のi-Padなどをみると、見事にイノベーションとブランディングが一緒になっている。このことが気になったのはフェラーリについて少し調べていたときである。きっかけは後藤治氏だ。
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  • 21:29  ホンダF1のエンジン開発を担当して業績をあげた後藤氏は、ホンダがF1から撤退した後、フェラーリでV10エンジンを開発する開発責任者となった。後藤の開発したエンジンは1996年よりフェラーリ・F310に搭載されて実戦に投入され、ミハエル・シューマッハのドライブで3勝を挙げる。
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  • 21:32  またデザインにおいても奥山清行氏が市販車のいくつかを担当したことは知られている。フェラーリが日本の匠を活用している。i-Podできいたよう話だ。このことを知ってびっくりしたのは日本人が活躍しているからではない。優秀な日本のエンジニアやデザイナーが参加してもフェラーリはフェラーリ。
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  • 21:35  経済的危機におちいっていたフェラーリの中興の祖はルカ・コルデーロ・ディ・モンテゼーモロである。ローマ大学卒業後に弁護士を目指しアメリカのコロンビア大学に留学した後、1973年にエンツォ・フェラーリの招きで当時成績不振に陥っていたF1のスクーデリア・フェラーリのマネージャーとなる。
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  • 21:37  以下はWikiPedia からの抜粋。「1991 年にはエンツォ・フェラーリ亡き後のフェラーリに社長兼マネージングディレクターとして再度入社。当時F1チームの慢性的な成績不振を抱えていた上、市販車の品質にも大きな問題を抱えていたフェラーリの建て直しに着手した。」
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  • 21:43  モンテゼーモロはF1監督にジャン・トッドを招聘し、さらに必要な人材を確保。その後、フェラーリは1999 年から2004年まで6年連続してコンストラクターズ・タイトル・チャンピオンに、ミハエル・シューマッハが2000年から2004年の5年連続でドライバーズ・チャンピオンを獲得。
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  • 21:45  さらにWikiから。フェラーリ社の市販車の品質も大きく改善させ、その品質で高い評価を得た355や456を開発し市場投入。フィアット傘下で高級スポーツカーメーカーとして有名なマセラティをフェラーリ傘下に。フェラーリとともに品質改善、売り上げを急増。 フィアット会長へ。
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  • 21:47  2004 年当時フィアットは慢性的な赤字を抱え経営難。再度経営建て直しに手腕をふるい、同社は2005年11月には単月黒字を計上。2005年7月に発売が開始された小型車であるグランデプントが、2006年1 月のヨーロッパ市場における販売台数1位に。長年の低迷から完全復活させた。
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  • 21:50  フェラーリとイノベーション: とまあ、モンテゼーモロの経歴をWikiから抜粋してきたが、僕は彼の経営手腕はイノベーションのブランディングにあるとおもっていて、、それもフェラーリの経営においてそれが確立したとみている。今晩はちょっとその辺りをしばらくTweetしたい。
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  • 23:01  フェラーリとイノベーション:独自にエンジンを開発してF1レースで活躍して、走りに徹した市販車を売る。この会社が経営危機に陥いる。当然だろう。
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  • 23:04  モンテゼーモロがフェラーリの再建にはいったときに、F1の強化を行う。フェラーリはF1を行うためにその資金を市販車の販売で稼いでいたと言われていた。それを逆転させるのだ。F1でフェラーリのブランドを確立して、その勢いで市販車を売る。品質を向上させ多くのファンをつかむ。後藤氏と奥山氏がフェラーリで仕事をしていた訳だが、それによってフェラーリが変わった かというとそうではない。フェラーリはフェラーリだ。モンテゼーモロのブランド戦略は揺るがない。
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  • 23:07  フェラーリのエンジンのブランド力を活用して、マセラッティを傘下に。やはり品質を向上させて多くの顧客をつかむ。また世界のお金持ちを相手に、フェラーリをうる会を頻繁に催す。F1を素人に運転させたりして、高級なおもちゃを売りつける。こんどのおもちゃは壊れにくい。その手腕は見事だ。また広告宣伝費はゼロ。
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  • 23:10  F1はイギリスのエンジニアたちが横のつながりでレースカーを開発してきた伝統にのっとたスポーツである。普通はイギリスに拠点を構えないと優秀なエンジニアを調達できない。モンテゼーモロは次々と優秀なエンジニアやデザイナーを引き抜いて活用していく。後藤治氏もその一人だ。
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  • 23:14  さて、経営が改善されたフェラーリだが、その収益構造がびっくりする。フェラーリは世界の超大金持ちに車をうっている。だがそこからの収益(売り上げではない)を上回る収益源を持っている。ちょっと数字をみてみよう。
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  • 23:22  以下はhttp://bit.ly/9zQqpD 数字からみるフェラーリを参考にしている。 データは2006年。市販車などの宣伝広告料は驚異の0円。フェラーリは広告を出さない代わりにF1に出場する事などによってフェラーリのブランドイメージを強めている。    
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  • 23:30  営業利益は3億3900万ユーロ、日本円に換算すると約400億円。年間販売台数は6587台。ちなみにトヨタは約860万台。利益の出所はフェラーリの売り上げはもちろんだが、加えてフェラーリのグッズ等のロイヤリティ。フェラーリのロゴが入ったグッズから、フェラーリと提携して出た商品まで。ブランド名を売ることで利益を得ている。
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  • 23:35  詳しい数字はいま調査中だが、売り上げの3割はグッズで、利益の7割はグッズからという話もある。モンテゼーモロのブランドビジネスの成果だ。彼は有名ブランド「TOD'S」の役員、お酒のチンザノ・インターナショナルや超高級家具「ポルトロナフラウ」、「カッペリーニ」等、数々の社長を歴任。
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  • 23:47  最近、フェラーリの工場の番組があった。National Geographicの特集である。 http://bit.ly/ciChYW これをみてびっくりするのは、フェラリーを素材からシートまで、エンジンも含めて最新鋭の工場と熟練の職人の組み合わせで作っている。
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  • 23:55  エンツッオ・フェラーリの時代は鍋職人に車体をたたき出してもらい、赤い色を塗ってアメリカのお金持ちに売るビジネスだった。そのうち車体のデザインをうけもつカロッツッリアが登場して、彼らは多くの車メーカーのデザインを請け負いビジネスを行う。速い車、速そうに見える車に価値があった。
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  • 23:58  だが、モンテゼーモロがフェラーリの経営を任されたときはそのようなビジネスは立ち居かなくなっていた。彼が着手したのはおもちゃをうって金を稼ぎF1につぎ込むビジネスモデルからの脱却であった。F1で強くなる。そこでうまれたブランド効果を生かすために市販車の信頼性を向上させる。
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  • 00:00  ファンを増やすために金持ちの道楽者にレースの雰囲気を楽しませる会を頻繁に行う。個人でF1をもってい てサーキットで走らせる道楽者は日本にもいるし、世界にも何人かいる。こうした人たちに5000台から6500台くらいの車を売る。だが、フェラーリを支 えているのは道楽者だけではない。
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  • 00:03  フェラーリストアがある。フェラーリのロゴが入ったグッズをうっている。ヨーロッパの各地にあるが、ここ の売り上げも利益も大きい。フェラーリを持っていない人がかっても後ろめたくない。フェラーリはフェラーリオーナーだけのものではないのだ。このようなブ ランディングはメーカーにしかできない。
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  • 00:07  強い車を作る、壊れない(フェラーリの場合は壊れにくい)車を作る。これはエンジニアリングの問題だ。 F1でブランドを確立して、それを市販車に、そしてグッズへと拡大していく。この手法こそがモンテゼーモロのイノベーションである。ミニカーでフェラーリ に夢を見る少年もフェラーリーの愛好者だ。
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  • 00:11  F1撤退をきめたホンダやトヨタは車で夢を売るブランドビジネスから撤退したと言える。20世紀の産業を ささえた車メーカーは21世紀に生き残っていくことは難しい。だが、F1のファンタジアに満ちたフェラーリはモンテゼーモロのブランディングイノベーショ ンで生き延びる。
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  • 00:16  フェラーリの次の一手はモンテゼーモロの次の社長がだれになるかにかかっている。だが、我々はモンテゼー モロのフェラーリ再建から実に多くのことを学べる。高いブランド品を限られた金持ちに売るビジネスではなく、社会に広く認知されるブランドを構築するため に技術を駆使する。
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  • 00:18  そして、そのブランドを販売するお店を作る。比較的安いお金でフェラーリの夢を見ることができるのだ。そ んな消費者をだれが馬鹿にできるだろうか?偽物のフェラーリに乗っている訳ではない。フェラーリというブランドを愛して、フェラーリのふりまくファンタジ アを楽しんでいるのだ。
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  • 00:20  エンジニアリングの使い方もすてきではないか。F1に勝つために一流のエンジニアを集める。信頼性のある フェラーリをつくるために最新の工場を造る。高品質なタッチを維持するために伝統的職人を活用する。そして、それを買う人がいてもいいし、かえなくても ファンになればグッズが買える。
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  • 00:23  いまいくつかのリアルプロジェクトを指導しているが、ものがつくれる人間がブランディングに手を出してほ しい。なにをどうつくればブランド価値が生まれるのか、フェラーリはそのよいお手本だ。高度なエンジニアリングと先端的なデザインを含み込む全体の姿をイ メージして、ブランディングを行うのだ。
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2010年6月27日日曜日

マーケティング+デザイン思考

  • 2010年6月26日
  • 16:37  マーケティング+デザイン思考
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  • マーケティングの説明をすると、イノベーションをマーケティングの枠で判断する間違いをする。同じ問題を違う視点から論じているのではなくて、マーケティング+デザイン思考の思考枠組みが大切なのである。ここを少し考えたい。
  • :昨日デザイン思考とマーケティングの授業を芦澤君にお願いしたが、マーケ ティングとデザイン思考の順番を逆にしないように。つまりマーケティングの結果を超えていくのがデザイン思考だということ。マーケティングでは分からない 世界を創造するのがイノベーション。
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  • 16:43  デザイン思考とマーケティング:8割以上あるいは9割くらいはマーケティングで分かる世界だ。ここをふま えておくと、創造性のジャンプをする場所を間違えないで済む。自分で仮説的戦略を立ててみて、どう実行するのかを検討する。自分の欲望を実行するという気 持ちを忘れてはいけない。
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  • 16:47  ドラッカー『マネジメント - 基本と原則』の中で、マーケティングだけでは企業としての成功はない、と言う。イノベーション、つまり、顧客に新しい満足を生み出すことがなければ、組織 は生き残れない。イノベーションの善し悪しをマーケティングで判断しては駄目だ。ここを間違えてはいけない。
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  • 16:52  デザイン思考をきちんと行えば、顧客の欲望と自分の欲望は経験の拡大で一致しているはずだ。そこがメンタ ルモデルである。そこに焦点をあてるのがペルソナだ。Designing for the Digital Age237ページ。図書館に10冊くらいキープしてある本なので、ここをコピー。
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  • 16:55  マーケットセグメントは年齢や収入や何らかの技能などの特性を持つ。ペルソナは加えてメンタルモデル ゴールを持つ。ペルソナをたてて、イノベーションした道具を検討すると、我々の視点は人間側になる。その効果はびっくりするほどだ。日常世界で我々は自在 に、そして次に何が起こるか予測している。
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  • 16:58  自分の調査した日常世界をデザイン思考で分析し、それに簡単なマーケティング的な分析を行う。そして、魔 法をかけてイノベーションをする。魔法をかけるこつがペルソナを作ることなのである。全く使い物にならなかったマイクロソフトのウィンドウズをどうにか使 えるようにしたのはこの魔法の力だ。
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  • 17:01  このことはイノベーションの方法を身に付けたKMDの諸君がどう生きていくかにもつながる。基本的なマー ケティングの技術を身に付けておけば、マーケティング担当の人間にイノベーションを否定されなくて済む。あるいはマーケティングの専門家とコラボレーショ ンが出来る。
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  • 17:05  デザイン思考をマーケティングの手法でつかっているコンサルタントも多い。だが、資本主義の不思議は市場 から創発的にイノベーションが生まれてくることだ。この不思議がシュンペーターの発見であり、21世紀の資本主義はここから始まる。数理モデルも哲学もま だ未整理だ。この問題は博士課程だな。
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  • 17:07  マーケティング+デザイン思考。これが21世紀企業に対する経営戦略のコアであり、ここを誰が制するかが これからの企業活動の最先端。フィリップスデザインマッキンゼーのコラボレーションが一昨年おこなわれ、日本でもAXISで展示があったが、もう一息 だった。だが、挑戦は続いている。
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  • 17:09  KMDの学生にはこの最先端に飛び込む力を身に付けて欲しい。デザイン思考は小集団マネージメント論でも あり、新しいシステム論でもある。Wicked Problem は数理モデルの問題でもあるのだ。このあたりは秋に開講するデザイン思考の上級講座、デザイン思考と数理モデルで説明する。
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  • コメント紹介
  • 生活者の欲望を拾い上げて、その背後にある哲学を簡潔な文章で記述できると、21世紀のデザインが始まる。道筋は見えてきている。以下コメントを紹介する。
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  • masa_84
    そして生活者の欲望を駆り立てる。 RT @NaohitoOkude: デザイン思考とマーケティング:8割以上あるいは9割くらいはマーケティングで分かる世界だ。ここをふまえておくと、創造性のジャンプをする場所を間違え ないで済む。自分で仮説的戦略を立ててみて、どう実行するのかを検討す
    菅原 裕 dennis_50
    その通り! RT @NaohitoOkude: マーケティングとデザイン思考の順番を逆にしないように。つまりマーケティングの結果を超えていくのがデザイン思考だということ。マーケティングでは分か らない世界を創造するのがイノベーション。

デザイン思考 Day7

  •  Sat, Jun 26
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  • 06:00  デザイン思考 Day7: IdeationとTinkering 
  • さて、今週末はいよいよTinkeringである。経験拡大をしてIdeationを行った。たっぷりファンタジアをきかせて色っぽいアイデアを集めた。ここからコンセプトを作っていく。僕のデザイン思考ではコンセプトは可触だ。
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  • 06:03  デザイン思考 Day7: さわることが出来るコンセプトをIDEOのデイビッド・ケリーはプロトタイプと呼び、仕様書主導の開発からプロトタイプ主導の開発へと変えない限りイノベーションは出来ないとした。プロダクトデザインにおけるラピッドプロトタイプ主義である。
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  • 06:05  デザイン思考 Day7: 無数のアイデアを作りだし、そのなかから可能性のありそうなものをプロトタイプにする。このプロセスがABCのテレビで紹介されたときは皆が息をのんだ。開発において製造の直前で行われるプロトタイプがカジュアルに行われていた。このビデオを始めて見たときは驚いた。
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  • 06:07  デザイン思考 Day7: だが、いまこのビデオを見直してみると、なぜ、簡単な素材で色々試していた活動がいきなりけっこう説得力のあるショッピングカートプロトタイプに変わったのか、不思議に思わないだろうか?僕は不思議だった。なぜIDEOはあんなに説得力のあるプロトタイプを短時間に作れるのだろうか。
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  • 06:12  デザイン思考 Day7:もう大分前だが、Bill Morgridge がIdeoのオフィスの裏に連れて行ってくれた。工作機械がずらっと並んでいた。またそれを操作するエンジニアも多く働いていた。製造工程にプロダクトを提供するプロトタイプをつくる機械を企画の段階で使っていたのだ。
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  • 06:14  デザイン思考 Day7: Billは「まあこういうわけだ」と言って「このコストが経営を圧迫しているんだよ」と笑った。工作機械は非常に高価でIdeationの時に使っていたのでは開発コストが膨大になる。なのでマーケティングをして仕様書を書いて、確実なものだけプロトタイプを作る。
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  • 06:17  デザイン思考 Day7: 試行錯誤の段階でプロトタイプを行う。これはIdeoのケリーが企業に営業を行うときに強く主張したことである。Winogradが編集したBringing Design to Software(1996)でケリーはデザイナーは問題解決以上の事をすると言う。
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  • 06:19  デザイン思考 Day7: 今問題になっていることを解決するだけではなく、それ以上の何かを生み出すのがデザイナーであり、それがIdeationの方法であり、それは裏庭にある高価な工作機械によって支えられている。この部分がなければIDEOの方法は意味がないのだ。
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  • 06:20  デザイン思考 Day7: 何度もプロトタイプを繰り返す。ここが秘密だ。しかし、誰もが高価な工作機械にアクセスできるわけではない。組み込み基盤に至っては手が出ない。だが、この段階での試行錯誤Tinkeringが無ければデザイン思考は自己満足的な遊びだ。ここを直視しなくてはいけない。
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  • 06:22  デザイン思考 Day7: 経営危機におちいりながらも高価な工作機械をつかってIdeationとプロトタイプを隣接させて強烈なプロダクトを作り続けたIdeoだが、その工作機械の部分に革命が起きた。それがMITメディアラボでのパーソナルファブリケーション革命である。
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  • 06:27  デザイン思考 Day7: 3Dプリンターやレーザーカッターが工作機器の価格を徹底的に下げた。ニール・ガシェンフェルド『ものづくり革命』(2006)に詳しいが、7〜8年前にMITのメディアラボを久し振りに訪れたときには息をのんだ。工場設備が大学の研究棟の中にある。何でも作れる
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  • 06:29  デザイン思考 Day7: 6年ほどまえに稲蔭さんリーダーで始めたCrestの研究でまずおこなったことはパーソナルファブリケーション環境を研究室内に構築することだった。KMDはこの環境がほぼそろっており、「ほぼ」なんでも作れる。上流工程でプロトタイプを導入することが可能になった。
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  • 06:31  デザイン思考 Day7: SoundCandyとかPanaviとか名作もいくつかこの環境から生まれている。Ideoのプロダクトデザインにおける圧倒的なプレゼンスもこの革命で少し下がり、追い上げる会社も増えている。だが、もう一つ革命があった。それがフィジカルコンピューティングだ。
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  • 06:33  デザイン思考 Day7: これはTom IgoePhysical Computing(2004)に始まる。コンピュータはセンサーアクチュエータ半導体がつながったものに過ぎないので、なんでもコンピュータになる、ということを証明した本だ。この本の衝撃は強烈であった。
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  • 06:36  デザイン思考 Day7: これに二つの別の動きが加わる。ひとつは制御につかう半導体がオープンソースとして提供されたのだ。Arduino(アルデゥイーノ)という。この開発者Massimo Banzi『Arduinoを始めよう』(2009)が翻訳出版されている。
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  • 06:38  デザイン思考 Day7: もう一つの動きはこうした半導体をプログラムする言語がやはりオープンソースとして公開された。Processingという。ジョン前田という著名なデジタルアーチストがいるが、彼がMITの教授だったときに、弟子達が開発したJavaの方言である。
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  • 06:41  デザイン思考 Day7: この言語はプログラミングを学ぶときに、文字のアウトプットではなく、色や形や動きを確認しながら行っていく。この感覚がみについたあとでより効率的な言語を使っていけばいい。この言語でArduinoをプログラムしてセンサーやアクチュエータを動かす。
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  • 06:43  デザイン思考 Day7: この環境が出てきた数年前にSketching in Hardwareという小さな会議が開かれた。招待制の会議で、世界中からこの環境で短時間にプロトタイプを作ることが出来るインタラクションデザイナーが集まり、技を競った。小林茂氏がそこにいた。
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  • 06:46  デザイン思考 Day7: 小林茂氏はこうした動きのなかで『+Gainer』を2007年に出版した。キーボートとモニターとマウスというデザインではないコンピュータの作り方を紹介した本だ。ここに来て、我々は20世紀産業と決別を始める。
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  • 06:47  デザイン思考 Day7: まず、工作機械がパーソナル化して工場設備から切り離された。形のプロトタイプのコストが下がった。次に電子回路とソフトウェアというコストも時間もかかっていた部分が「フィジカルコンピュータ」のコンセプトで解体され、オープンソースとして供給され始めた。
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  • 06:49  デザイン思考 Day7: そして、デザイン思考が新しい工作機械と電子回路設計環境を統合して21世紀のものつくりの方法となっていく。これが大まかな流れだ。工作をしながら何をするのかを考える、これをIdeoはbuild to thinkと呼んだが、まさにプロトタイプ主義である。
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  • 06:53  デザイン思考 Day7: プロトタイプ主義のなかで一番わかりにくかったインタラクションデザインの部分については最近小林茂氏が『 Prototyping Lab 』を出版して、「距離を測る」とか「動きを検出する」などの方法をレシピ(配線図+サンプルコード)としてまとめた。
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  • 06:54  デザイン思考 Day7: さて、ここからが今回の講義の本番なのだが、ほぼ何でも作れるようになり、このTinkering技術を身に付けてみると、プロトタイプという考え方だけでは不十分ではないかという議論が出てきた。それがスケッチングという方法への注目である。
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  • 07:01  デザイン思考 Day7: この考えをBill BuxtonSketching User Experience(2007)で数年前から提唱してきた。プロトタイプはその名前の通り、タイプを決めることであり、頭の中にあるコンセプトを実際に作って可蝕にして、本当に使えるかを検討する。
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  • 07:03  デザイン思考 Day7: 使えるかどうか、usabilityの検証、これをコンセプトをプルーフすると言うが、を何度も行うのがプロトタイプ主義だ。勿論これを繰り返すことが魅力的なデザインを生み出す秘密だ。だがプロトタイプ環境が安価になり使い方が普及すると、もう一つ先が見える。
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  • 07:06  デザイン思考 Day7: それはコンセプトを作るところにも工作の思考をおうようしたらどうか?Ideationの瞬間にも工作を導入したらどうか、ということである。粘土やダンボールなどで形を探していく作業を僕は『デザイン思考の道具箱』ダーティプロトタイプと呼んでいるところだ。
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  • 07:07  デザイン思考 Day7: ここはBuxtonの言い方ではスケッチングだ。そしてもっと大切なことは、小林茂さんが教える電子工作の方法もプロトタイプにも使えるが、スケッチングにもっと積極的に使うべきだ。つまり、コンセプトをプルーフするためだけではなく、コンセプトを作るために使う
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  • 07:10  デザイン思考 Day7: Buxtonは「スケッチはプロトタイプではない」と前掲書の139ページで宣言している。デザイン過程の上流で行われる工作はスケッチだという。まずお金をかけずに捨てても良いような工作がスケッチだ。すばやくいくつもコンセプトを工作で作ってみる。
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  • 07:13  デザイン思考 Day7: スケッチを何度も繰り返しながら、何を作ろうとしているのかのコンセプトを明らかにして、わかってきたらプロトタイプにしてその有効性をプルーフする。さっさと安く何度もスケッチして、プロトタイプから製品にするときのリスクも洗い出していく。つまりぼんやりと作る。
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  • 07:15  デザイン思考 Day7: 早い段階でコンセプトをきめてプロトタイプをするとちまちました工作になる。時間がない、予算がないという話になる。だが、なにをつくるのかを議論でもブレストでもなく、実際の工作環境であれこれ作って考える。これがハードウェア・ソフトウェアスケッチングだ。
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  • 07:17  デザイン思考 Day7: この考え方をみにつけないと、Tinkeringは出来ない。インタラクションデザインにおいて、アイデアをコンセプトにまとめることは出来ない。小林茂さんの卓越したスケッチング能力を理解させ、それを君たちに伝授するワークショップは何人かの学生には行っている。
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  • 07:18  デザイン思考 Day7: 今週末は素早くスケッチングを行う。なんどもなんどもTinkeringしてコンセプトを見つけ、固めていく。この作業をしっかりと行いながら、もう一つ大事な事がある。それがペルソナの決定だ。デザイン思考にはペルソナを決めることが不可欠である。
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  • 07:21  デザイン思考 Day7: ペルソナとメンタルモデル 
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  • コンセプトとは利用者のメンタルモデルを反映したものでなくてはいけない。メンタルモデルとは提供された道具をつかって利用者が達成しようとしている目標である。メンタルモデルを表現する方法としてペルソナとシナリオ法がある。
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  • 07:25  デザイン思考 Day7: デザイン思考はイノベーションを実践する方法論で、初心者のうちはプロセスのステップを守ることが大切である。いつコンセプトをつくるのか、いつペルソナを作るのか、いつシナリオをつくるのか、のタイミングが大切だ。まだシナリオを作ってはいけない
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  • 07:29  デザイン思考 Day7: ペルソナ法はアラン・クーパー『 コンピュータは、むずかしすぎて使えない!』(2000)で紹介して、そのあとFace, Face2, Face3の本で展開され、最近ではDesigning for the Digital Age(2009)が扱っている。
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  • 07:31  デザイン思考 Day7: 民族誌から分析を行い商品開発をする方法はマーケッティングと八割方共通した方法である。だが決定的に違うのは、顧客のメンタルモデルを調査から解釈して作り出す点である。デザイナーが主観的に解釈して構築するのがメンタルモデルで、顧客の行動の目的の事である。
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  • 07:33  デザイン思考 Day7: 現象学的設計論にしたがえば、利用者のメンタルモデルが反映した道具をデザインする。この道具の仕組みがコンセプトである。コンセプトが目的を達成する道具として使うことが出来るかは使ってみなくてはわからない。目的を考えるときに武器になるのがペルソナだ。
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  • 07:36  デザイン思考 Day7: ペルソナは『デザイン思考の道具箱』でも説明したが、要するに映画やテレビドラマのキャスティングと考えてもらえばいい。35歳、独身、男性、年収1500万、世田谷区経堂で一人暮らし、という記述はマーケティングの属性であり、セグメント化とターゲット化の資料だ。
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  • 07:37  デザイン思考 Day7: こうした記述ではなく、固有名詞をいれて、顔写真をそろえ、配役をするような記述を考える。そして、かれのメンタルモデルつまり目的を決める。そのペルソナにどのように設計した道具を持たせると彼は目的を達成できるのか。複数のペルソナを考えることも出来る。
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  • 07:39  デザイン思考 Day7: このときどのような道具をどのようなペルソナに提供するとメンタルモデルつまり目的が自然に達成されていくか。ここまでの検証を丁寧に行って欲しい。しっくりと来ることが非常に大切である。無理矢理物語を作ったりしないこと。あとスケッチングを繰り返すこと。
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  • 07:41  デザイン思考 Day7: さて、今日はたっぷりと講義をした。スケッチングもペルソナ作りも楽しい作業である。何度も何度も繰り返して、これだ!!というコンセプトとメンタルモデルとペルソナを作りだして欲しい。聞いていて楽しくリアリティを感じるようなものができれば成功である。健闘を祈る。
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2010年6月26日土曜日

デザイン思考とマーケティング

  • 2010年6月24日
  • 14:57  アーバンメディアグループ。芦澤君のマーケティング101の授業開始。KMDの学生でリアルプロジェクトを行っている学生は全員基本を押さえよう。マーケティングとはニーズに合わせて利益を上げることだということ。
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  • 15:00  コトラーがターゲット市場を選択して優れた顧客価値を創造し提供して伝達をして顧客を獲得し、維持し、育てていく技術および科学だと定義した。また社会的意義も説明した。個人が製品やサービスを創造し、提供し、他者と交換するとこで自分が必要とするものを獲得する社会的プロセス。
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  • 15:01  コトラーのマーケティングのフレームワークは、外部環境分析、事業機会の発見、市場の細分化、ターゲット市場の選定、ポジショニング、マーケティングミックスから構成されている。マーケティングミックスとは、製品の決定、価格の決定、プロモーションの決定、流通の決定、4Pという。
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  • 15:03  ニーズとウォンツ:ニーズとは生活者が必要と感じてもとめているもの。ウォンツはそのニーズを満たす特定のものが欲しいという要求。A地点からB地点に移動したい>>電車、自動車、自転車、徒歩、飛行機。AからBに快適に移動したい>>タクシー、グリーン車、飛行機のファーストクラス。
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  • 15:04  生活者が気がついていないニーズがある場合。高級車が欲しいというウォンツを持っている人がいたら、試乗会をおこなって、「やっぱり高級車じゃなくちゃ」と感じさせてニーズを喚起していく。
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  • 15:06  セグメンテーションとターゲティング:誰に売るのか?顧客ニーズを軸にして顧客を同質的なグループに分けて、売り先を決める。>>セグメンテーション。高級者が欲しいという人をさがすばあ、車を持っている人、いない人に分け、年収が1000万円以上の人とそうでない人に分ける。これで無駄を防ぐ。
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  • 15:07  セグメンテーションとターゲティング:誰に売るのか?顧客ニーズを軸にして顧客を同質的なグループに分けて、売り先を決める。>セグメンテーション。高級者が欲しいという人をさがすばあ、車を持っている人、いない人に分け、年収が1000万円以上の人とそうでない人に分けターゲットを決める。
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  • 15:12  SWOT分析 世の中が変化している時に、外部要因と内部要因とを分析して、チャンスを見つける。内部環境はStrenghtとWeakness, 外部環境は OpportunityとThreat。外部環境で顧客、競合他社、業界動向、社会変化を分析する。内部環境は技術、製造、販路を分析。
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  • 15:14  SWOT分析とデザイン思考:Step1:哲学とビジョンを策定 Step2 仮説的戦略を策定する。(0に入る要素をつなげたものが入る。)Step3:SWOT分析 Step4デザイン思考(フィールドワークからの一連の流れ)Step5:戦略策定(確定)
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  • 15:44  101がおわったので、グループに分かれてSWOT分析をする。まあ商学部でマーケティングを学べば最初にするようなことなのだが、KMDの学生の場合は自分でプロトタイプをつくっているため、SWOT分析の臨場感がちがう。しっかりと自分の位置を見極めて欲しい。
  •  

  •  
  • コメントから
  • 適切な助言ありがとうございます。各グループが発表するときは仮説的戦略とSWOT分析を合わせて発表して下さい。
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  • ywakabayashi
    仮説的戦略の設定がSWOTの前にが大事。RT @NaohitoOkude: SWOT分析とデザイン思考:Step1:哲学とビジョンを策定 Step2 仮説的戦略を策定(0に入る要素をつなげたものが入 る。)Step3:SWOT分析 Step4デザイン思考…Step5:戦略策定  
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2010年6月25日金曜日

デザイン思考 Day6

  • Thu, Jun 24

  • 04:22  デザイン思考 Day6: 今回は創造力についてである。哲学とビジョンを作り、技術の棚卸しをして、民族誌調査をした。君たちはたっぷりとアイデアを生み出すための引き出しを手に入れているわけだ。この引き出しにあるものを組み合わせていくうちに、突然組み合わせたものが全体として命を持つ。
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  • 04:24  デザイン思考 Day6: それが創造の瞬間だ。ブルーノ・ムナーリはこれをファンタジアと呼んだ。『ファンタジア』という素晴らしい本が出ている。この本でムナーリはファンタジアの作り方の法則を説明している。今日の講義はその詳細についてである。自分たちでいろいろと試して欲しい。
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  • 04:27  デザイン思考 Day6: ムナーリは想像力をファンタジア、発明、創造力の三つに分けている。芸術家やプロのデザイナーはこの三つが錯綜するプロセスを一般大衆には見せないで完成品だけ見せていればいいと考えているとムナーリは言う。そしてその態度は間違っていると。
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  • 04:29  デザイン思考 Day6: ものが生まれてくるプロセスは、記憶(「引き出し」だ)がファンタジアと発明と創造力のプロセスを経て想像力をえて、生産され、外部世界へと提供される。この流れの中でムナーリはとくにファンタジアに注目した。それは自由に思いをはせる能力のことだ。
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  • 04:32  デザイン思考 Day6: 発明はファンタジアとおなじ認識している事を結びつける能力だが、それが実用性に向かっていくという。創造力は発明とファンタジアを活用する方法であり、デザインの分野で活用される。ファンタジアと発明を会わせて社会の中に埋め込んでいく方法だという。デザインだ。
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  • 04:34  デザイン思考 Day6: 想像力とは視覚化の手段であり、ファンタジア、発明、創造力によって考え出されたものを目に見える手段にすることである。デッサンとか絵画とかそういった能力のことだ。そのなかでファンタジアがもっとも大切だとムナーリは言う。Ideationはファンタジアが必要。
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  • 04:38  デザイン思考 Day6: 第1の法則 ある状況を逆転させたり、相反するもの、正反対なもの、補足的なものを利用する。あべこべの世界だ。人間は相反するものをセットに記憶してきた。ルネ・マグリット<光の帝国(1954)>をムナーリは紹介している。読めない本、役に立たない機械などだ。
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  • 04:40  デザイン思考 Day6:第2の法則 ある相対の部位をなんの変更も加えずに増殖させる。阿修羅像の何本もある手とかインドの神様のイメージとかが来れに当たる。
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  • 04:42  デザイン思考 Day6:第3の法則 視覚的類似の関係を見つける。有名なものはアルチンボルドの描く果物や魚などを組み合わせた人の頭部がある。マン・レイ<アングルのヴァイオリン(1924)>ノ写真をムナーリは例としてあげている。
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  • 04:44  デザイン思考 Day6:第4の法則 色彩の交換。マン・レイの<ブルーで塗られたパン(1960)>を例に挙げている。コバルトブルーにぬられたフランスパンを食べたいとは思わない。色彩と可食性の実験である。自転車やタイプライター、ハムが白で塗られていたら本物でもイミテーションに見える。
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  • 04:48  デザイン思考 Day6:第5の法則 素材の交換。メレット・オッペンハイム<オブジェ、無題(1936)>をムナーリはあげている。陶器のコップの素材が毛皮に交換されている。MOMAでこの実物をみたときにはおどろいた。可愛いのだ。ルネ・マグリット<旅の思い出(1951)>は不気味だ。
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  • 04:49  デザイン思考 Day6:第6の法則 場所の交換。ベッドが寝室ではなくて公園に置かれていたら?マジシャンの帽子から鳩がでてきてびっくりするなど、いろいろある。
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  • 04:53  デザイン思考 Day6:第7の法則 機能の交換。厳密な機能をもったものを取り上げ、それとは違う機能のもとで使用する。花瓶としてのグラス、ライトとしてのワインボトル。ムナーリはチャップリンの映画『黄金狂時代』でおいしそうに靴を食べているシーンを上げている。
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  • 04:55  デザイン思考 Day6:第8の法則 動きの交換 ふつうならゆっくりのものが早く動く。これは映画によってより発達した。はやいものがゆっくりと動くスローモーションは高速度撮影によって可能になった。ムナーリは自作の映画『時間のなかの時間』(1964)を紹介している。
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  • 04:59  デザイン思考 Day6:第9の法則 ディメンションの交換。サイズが通常より大きくなる、あるいは小さくなる。ボトルに入った船とか、建物より大きなゴリラ、キングコングとか。盆栽もそうだ。嘘をつくと伸びていくピノキオの鼻を例としてムナーリは上げる。
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  • 05:03  デザイン思考 Day6:第10の法則 ひとつの身体に異なる要素を融合させる。様々な動物の部分をくみあわせてひとつの動物のようなものをつくる。それはモンスターになる。フランケンシュタインや蠅男などだ。気持ちが悪い。ルネ・マグリッド<共同の発明(1935)>が例としてあげてある。
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  • 05:05  デザイン思考 Day6:第11の法則 対象の重さを変える。重いと思ったものが軽い、ときに感じるファンタジアである。これもルネ・マグリッド<ピレネーの城(1961)>が例として紹介されている。
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  • 05:08  デザイン思考 Day6: 第12の法則 関係のなかの関係をつくる。いままで説明してきた関係をくみあわせて表現をする。ヒエロニムス・ボッシュ<快楽の園>を例として上げている。以上がムナーリの紹介するファンタジアの法則である。
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  • 05:09  デザイン思考 Day6: ファンタジアを紹介したのは、日常生活の観察をもとにIdeationを行うと発明つまりは工夫が中心になってしまい、創造力つまりデザインを行うときに、どきどきわくわくする(あるいはぞくぞく、げんなりする)感情的な要素が抜け落ちてしまうからだ。
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  • 05:12  デザイン思考 Day6: ファンタジアの手法は手法であって、これを使ったからといって素晴らしく創造力に溢れるものが作れるわけではない。この法則を組みあわて作りだしたものを他者が見て感動しなくてはいけない。コミュニケーションが必要なのだ。このことを心してファンタジアの技法を使う。
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  • 05:14  デザイン思考 Day6: イノベーションは引き出しにあるものの組み合わせだ。問題を解決する(発明する)ためだけではなく、ファンタジアを生み出すためにも組み合わせを工夫する。そして発明とファンタジアを組み合わせてドキドキするイノベーションをデザインする。それが創造力だ。
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  • 05:16  デザイン思考 Day6: 創造力によってできたものを想像力で形や動きにしていく。このときには別の能力が必要になっていく。この話は来週である。早朝講義これにて終了。では諸君のファンタジアに満ちたIdeationの発表を期待している。授業は9時からだ。
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  • 09:09  デザイン思考 Day6: 授業のコメントから。デザイン思考の本質とは関係ないのだが、ビデオで上手にスケッチが出来る学生がちらほらでてきた。アングルも編集も良い。だが、かな らず三脚を使って取るように。手持ちだとその映像が別の意味をもつ。三脚でとる習慣を付ける。
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  • 09:12  デザイン思考 Day6:  アイデアを出すということをブレーンストーミングと勘違いしてはいけない。 たしかに方法はブレーンストーミングだ。だがそのまえに技術の棚卸しと民族誌調査を行っている。また哲学ビジョンも作っているはずだ。それをふまえてアイ デアをだす。いくらでもでるはずだ。
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  • 09:13  デザイン思考 Day6: ホワイトボードを前にして、ただアイデアをだす。これはいけない。この作業は楽だし結構充実感があるので、初心者こればかり行ってしまう。しっかりと Ideationの前の作業を確認してアイデアを作る。ここを確認すること。
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  • 09:16  デザイン思考 Day6:次に必要なことは色気である。経験をもとにIdeationを行うとムナーリが いう「発明」が多くなる。それは必要だが、デザインはこれにファンタジアが加わらなくてはいけない。紹介した12の法則をもとに工夫してみよう。上手に可 愛いアイデアを作ったグループもあった。
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  • 09:19  デザイン思考 Day6 あと、one idea one conceptといわれるものを作ってはいけない。初期のMITメディアラボの作品はこの手のものがほとんどだった。「王様のアイデア」で売っている商品 はこの種類のものだ。面白いが、日常生活を豊かにする道具にはならない。
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  • 09:21  デザイン思考 Day6: 僕は普通に使われている「コンセプト」という言葉をいくつにもの種類にわけている。デザインプロセスの分割はISOの人間中心主義のプロセスと同じであ る。だが、実践の方法が違う。まずフィロソフィーとビジョン。両方ともコンセプトといっても良いことだ。
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  • 09:28  デザイン思考 Day6:  ちょっと難しいが志向性 intentionという哲学用語がある。人間がものや現象にむかう態度 attitudeを示す。そのなかでもっとも根源的なものが信念(フィロソフィー)と欲望(ビジョン)である。この二つを別に意識する。ここがまず第一 歩。
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  • 09:34  デザイン思考 Day6:  次に技術の棚卸しと民族誌調査をする。これはフッサールの言う日常世界を調べていくわけであるが、注目点はtrigger, breakdown, appropriationである。日常世界の中でこの3つの現象を見つけていく。それが濃い記述と5モデル分析だ。
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  • 09:37  デザイン思考 Day6:  ここまでがDay6の課題。たっぷりと色気のあるアイデアをつくり引き出しに入れ、技術の引き出しと合わせる。それを組み合わせてコンセプトを作ってみ る。ハードウェアスケッチしてみることが今週末の課題である。くわえて、ペルソナを作りゴールを考える。以上。
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2010年6月24日木曜日

デザイン思考と経営戦略

  • 2010年6月23日

  • 12:45  1時からS社へのワークショップ。1000億円規模の会社はグローバル市場に出て行かないと生き残れない。売り上げがやはり世界市場で伸びているからだ。そこに新しい産業システムを見つけ出し、自社の強みを展開できるか?その方程式は4000億円くらいまでの多くの日本の企業に共通する。勝負だ!
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  • 16:11  S社ワークショップ終了。工場の生産性と製品の魅力。この二つを一致させた商品開発がグローバルを生き残る秘訣。いまさらだけど。ここはコアとモジュールの組み合わせでイノベーションをするのだが、何をつくるかとどう作るかの問題であり、メタデザインとメタエンジニアリングが必要。
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  • 16:15  なにをつくるかは、ブルーオーシャン戦略と直結する。これって非常に難しい。作るものが分かっていれば安く早く作ればいいからだ。ここは民族誌的手法とイノベーションが直結するところだ。だが、何を作るかが分かっても駄目だ。どのようにつくるか、つまりメタエンジニアリングが必要になる。
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  • 16:16  作ることが決まったときに、どう作るかがきまる。またどう作るかの方向性がみえると何を作るかが見えてくる。どう作るかの基本は誰でも作れるところをモジュールにして、自分しか作れないところをコアにする。このとき、技術的に優れているものがコアとなるわけではない。人に作らせないところがコア。
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  • 16:18  インテルはCPUが言うまでもなくコアだが、それをコアにした理由は利益率10%が維持できるからだ。日本のメーカーがコアとしてきた基盤自体の競争力をなくすために、CPU以外の部品をモジュールにしてしまった。誰でも作れるようにしたのだ。そこで競争が始まり価格が下落する。
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  • 16:20  いわゆるオープンアーキテクチャーだが、そのためにはインターフェイスを公開してモジュールを差し込めばコアであるCPUが使えるようにする。この基盤の設計は結構難しく、始めはインテルが台湾のメーカーのOEMをしていた。そのうち台湾メーカーが基盤を作るようになる。
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  • 16:22  次にインテルが取った戦略は「自作文化」をプロモーションすることだ。PCBIN(だったかな?)を秋葉原に作った。そこでコンピュータが自作できるというキャンペーンをうった。加えてブランド戦略を打つ。「Intel in It」というものだ。部品に過ぎないCPUを主役とした。
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  • 16:24  「インテル入ってる」という日本語のコピーを英語にしたものといわれているが、このキャンペーンでインテルは一気にPC市場を押さえるのだ。この動きと同時にマイクロソフトの勃興が始まる。マイクロソフトはインテルのCPU,つまりコンピュータのコアに踏み込んでOSをつくった。
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  • 16:25  結果としてコアにマイクロソフトは組み込み、世界制覇を成し遂げたわけだ。ここのOSやCPUは日本製にも良いものがあったが、この戦略のもとに敗れ去ったのである。ちいさな部品会社に過ぎなかったインテルが巨大企業になった。日本企業はなぜこんなことがおこったかびっくりして見ていた。
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  • 16:28  同じ事はGoogleにもいえる。グーグルのコアはどんどん拡張するコンピュータ、つまりクラウドコンピューティングである。この仕組みをつかってどのようなビジネスをするかの試行錯誤をしていた。一時はサーバーを売っていたりした。そのうち広告連動サービスを見つけ、巨大化した。
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  • 16:29  実は日本のi-Modeも同じ仕組みである。利用者が増える度にコンピュータを増設すればいいようにして、対応した。同じ技術であるが、その技術をビジネスのコアにするか、問題解決の方法に位置つけるかで大きく変わってくる。i-アプリはi-Modeのサービスだったが、普及しなかった。
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  • 16:31  問題は、なぜ日本の会社(というかアメリカの一部の会社以外)はこのビジネス戦略がとれないか、ということである。唯一この戦略に近いのが任天堂だ。過去20年間の歴史をみてみると、基本的に自分の手を動かして製品やサービスを作っているかいないかの違いに思える。
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  • 16:33  いや、日本人は手を動かしているというかもしれない。だが手を動かしているレベルと商品の企画をするレベルが違っている。何を作るかとどう作るかを同じレベルで同じグループの中で検討していないのだ。したがって、製品の設計力が低くなる。コアとモジュールの切り分けは設計力以外の何者でもない。
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  • 16:40  台湾にフォックスコンという会社がある。3兆円以上売り上げている会社だ。中国に工場がある。最近労働者の自殺が相次ぎ新聞記事になった。アップルも任天堂もここで製品をつくっている。一見、ものつくりが海外に出て空洞化している例のように見える。またそう言われてきた。
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  • 16:42  だが、どのレベルをものつくりとするかである。日本の企業の多くは本社で設計が出来ない。仕様書をつくって外注である。そこから孫請けに出て行く。そして出来上がったものを本社工場で生産する。工場設備の生産性で勝負するわけだ。その方法が通用しなくなっている。
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  • 16:43  設計を終了して、生産だけを委託する。これがEMSといわれる形だ。日本の企業もEMSを使うが、多くの場合は、EMSがわに提案をさせている。アップルは言うまでもなく社内でプロトタイプを繰り返し、設計が終了してからEMSに出す。知財はすべてアップル社が持つ。ここがポイントだ。
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  • 16:45  設計が済んでいるので、部品をどう調達するか、どこで組み立てるのかは外部に委託しても利益率を高く保てる。この設計力が徹底的に欠如しているのが多くの日本の会社である。したがって、利益も出なければイノベーションもおこらない。設計力という上流でものつくり(プロトタイプ作り)がない。
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  • 16:47  考えたり戦略をたてたりするのではなく、ものつくりにこだわって設計に夢中になると、日本の家電メーカーでは子会社に出向させられる。全体を設計している人あるいはグループがどこにあるのかもはっきりしない。この体質から抜け出さない限り、日本企業ではイノベーションは無理である。
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  • 16:49  実は日本だけではない。韓国も台湾もシンガポールもメタデザインとメタエンジニアリングが出来ない。儒教的な手作業蔑視の文化ではないかと勘ぐりたくなるほどだ。あっけんからんと自分で作っていく精神が必要なのだ。戦後の日本を支えたのはこの精神だ。どこで消えたのだろうか。
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  • 16:51  パナソニックの唐津一、東芝の西堀栄三郎、ソニーの盛田昭夫、そうそうたるイノベーションの大家だ。つくってみなくてはわからない、出来たら人にみせる、できるようになったら協力工場にだして、また出来ないことに挑戦する。この精神が戦後の経済発展を生んだ。まったく跡形もない。
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  • 16:52  こうしたイノベーションは世に出るまで7年くらいかかるという。そのあいだ、日本の大企業は中央研究所の片隅でイノベーションの実験を続けてきたのだ。この仕組みがこわれるのは、国際会計標準が導入されたためだ。説明の出来ないわけのわからないことをやってはいけないというわけだ。
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  • 16:54  この仕組みで日本は一気に大企業内のイノベーションのリソースを失う。国際といってもアメリカ標準だ。ではなぜアメリカではイノベーションが生じるのに日本では駄目なのだろう。アメリカは、これはアングロサクソン的資本主義の特徴なのだが、二つの基準の使い分けをしていたのだ。
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  • 19:51  きちんとした会社の株式市場(NYSE)とリスクに挑戦するイノベーションの会社のための株式市場(NASDAQ)の二本立てだ。この方式で長い間イノベーションを実行してきた。リスク市場の立ち上げを日本は怠った。だがこれは20年くらい前の出来事だ。ここ数年情勢はさらに変わっている。
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  • 20:00  P&GとかGEがイノベーションに乗り出しているのだ。このあたりは僕の『デザイン思考の道具箱』にすこし書いた。詳しくは『ゲームの変革者?イノベーションで収益を伸ばす』 でP&Gの会長A.G. ラフリー が分かりやすく述べている。大企業もイノベーションを考えなくてはいけないのだ。
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  • 20:02  ベンチャーと彼らのための株式市場であるNASDAQに依存しないで、大企業がイノベーションを行うためにラフリーが提案しているのは、企業の会計制度の中にリスクをとるイノベーションの予算を組むことである。極論すればこれだけのことだ。だがここに踏み込んでいる日本企業はあるだろうか。
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  • 20:03  もちろん、イノベーションのリスクはある。それを出来るだけ少なくするためにデザイン思考が用いられる。新規に事業をはじめるために、マッキンゼーなどのコンサルタントに依頼すると、可能性が考えられる事業にかんして綿密な調査が行われて、計量的に証明される方向が提示される。
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  • 20:05  数値によって裏打ちされた決定に従ってプロジェクトを実行して失敗してもそれは実行担当者の責任にはならない。これだけしらべてだめだったのだから、という言い訳になる。コンサルタントへの膨大な費用も事業の失敗も正当化される。最初のうちはそれで済むだろう。だが長期的にはそうはいかない。
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  • 20:07  ここで、意思決定をするときに、数値の積み上げではなく、プロトタイプで行ったらどうだろうか。事業の新規性、魅力など、実際に動く仕組みで説明したときの説得力は数値による証明より強いだろう。加えて、上流工程、つまり何を作るべきかを考えているときのプロトタイプ作成費用などしれている。
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  • 20:09  つまり、大企業組織において、経営戦略的意思決定をするときに数値の積み上げではなくて、プロトタイプで行う。それがうまくいくかどうかはやってみなくては分からないが、それは数値を積み上げても同じだ。だとすると、デザイン思考はコスト面でもイノベーションの有効面でも、経営戦略立案に有効だ。
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2010年6月23日水曜日

デザイン思考 Day5

  • 2010年6月22日
  • 08:00  デザイン思考 Day5: 民族誌調査の報告と分析 今日は各チームから民族誌調査の報告と分析を発表してもらう。民族誌調査をする方法はインタラクションデザインにおいて普及しているが、そのほとんどがなぜ民族誌調査をするのかの本質を見落としている。すこし原点に戻ってみよう。
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  • 08:02  デザイン思考 Day5:民族誌調査に対して現在デザイナーやエンジニアとしてある程度業績を上げている人は心のなかで「馬鹿にしている」。俺たち専門家が英知と創造性を駆使してものを作っているのに、それに普通の人のアイデアがかなうわけはないだろう、というわけだ。デザイナーやインタラクションデザイナーはきっと、「僕を誰だと思っているのだ!」と叫んでいる。
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  • 08:05  デザイン思考 Day5: 固有名詞をだすのは控えるが、そんなデザイナーやエンジニアばかりである。それにたいして、ユーザーの意見を聞き、ユーザーの為に作っています、という会社のメッセージがある。これを掲げていない会社はほとんど無いだろう。で、そのときのユーザーとは消費者なのだ。
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  • 08:07  デザイン思考 Day5: ユーザービリティスタディがそれだ。またマーケティングで顧客調査をする。質問票を使うこともあれば、フォーカスグループを使って観察することもある。こうした情報にテレビプロデューサーなどの「アイデアマン」のコンセプトを加えて商品開発をする。で、なぜ民族誌調査?
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  • 08:09  デザイン思考 Day5: 民族誌調査を行う理由はこの方法以外次世代の商品やサービスを作る方法がないからだ。20世紀生産様式において活動しているデザイナーやエンジニアも21世紀システムで活躍しようと思うならここは避けて通れない。また民族誌的手法の20世紀システム適応は意味がない。
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  • 08:11  デザイン思考 Day5:したがって、20世紀デザイナーが20世紀システムにむけて民族誌的手法で作られたデザインをみて、馬鹿にする気持ちは分かる。僕も実は同感だ。ではそもそも21世紀システムに向けてのデザインとは何か?ここを理解しないと民族誌調査は意味がない。
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  • 08:13  デザイン思考 Day5: 基本は現象学と解釈学だ。いま博士論文工房の課題論文になっているUsing Computersにおいて、コンピュータを使ったシステムをどのようにデザインするかが論じられている。そう、民族誌調査はコンピュータシステムを活用するシステムをデザインする方法なのだ。
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  • 08:15  デザイン思考 Day5: KMDの修士1年生の諸君は今回メディアデザイン基礎でほぼ全グループTinkeringを行い、インタラクションを電子回路(コンピュータ)をつかって作ってアイデアをコンピュータでスケッチした。この部分なしにはデザイン思考は意味がないのだ。胆に命じて欲しい。
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  • 08:18  デザイン思考 Day5:  センサーやライトやモーター、簡単な半導体、こんなものが「コンピュータ」なのか?と思うだろう。そうだ、それがコンピュータなのだ。コンピュータは爪切りやトンカチみたいな「道具」だ、こうウィノグラードは1986年にUsing Computersで述べた。
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  • 08:20  デザイン思考 Day5:  コンピュータを「人間」にして複雑なプロセスを人間の手を煩わせることなく処理する仕組みを作ろうと研究者がやっきになっていたときに、その方向は間違いだ、コンピュータは道具として進化するべきだと述べたのだ。そのときウィノグラードが注目したのが日常世界だ。
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  • 08:23  デザイン思考 Day5:  コンピュータが使いにくいとか、簡単に使い方を覚えたいとか、すぐに使えるようにして欲しい、といった意見をよく聞く。我々の日常世界にコンピュータが導入されたときの意見だ。20世紀エンジニアやデザイナーはこの現象を調査して分析して結論を出そうとする。
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  • 08:25  デザイン思考 Day5: だが、そんなことは無理だ、というのがウィノグラードの意見だ。いくら民族誌調査で問題点を「気付いても」問題は解けないのだ。そもそも合理的認識をこえたところに日常世界があることは、フッサールの現象学の説明をしたときに言及した。ではどうすればいいのか。
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  • 08:29  デザイン思考 Day5: 現象学が注目する大事なポイントに注目してみようというわけである。それは3つだ。まず身体の延長として意識できる存在かどうか。2番目は壊れることを想定しているかどうか、最後がちょっと難しいのだが、意識の外におけるかどうか、である。現象学的な検討は博士まで待て。
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  • 08:32  デザイン思考 Day5: この三つの注目点を意識して、日常生活を観察すると、それは一連の会話の連鎖からなっている。会話が何かを引き起こし、またどうにもならない状況、これをbreakdownという、を生み出す。ここをどうにかする道具を作ることがコンピュータシステムデザインの目的だ。
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  • 08:34  デザイン思考 Day5:新しい道具は日常生活の新しい可能性を提供するかもしれないし、新しい活動領域を生むかもしれない。だが、そうはいっても何が起こるかどうなるかは日常世界の中に新しい道具を導入してみないとわからない。予見不可能性という。なので、道具をデザインする仕組みが変わる。
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  • 08:36  デザイン思考 Day5: デザインしてみてその道具を経験して、breakdownが生じる。何度か挑戦しているうちに、何となく出来上がる。これをappropriationという。日常生活という舞台を提供するために民族誌調査を行うのだ。そしてbreakdownを記述する。
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  • 08:39  デザイン思考 Day5: breakdownの記録は主観的解釈である。この服、にあってるかなあ、という判断は、当人の主観であり、所属しているコミュニティに依存しているだろう。いろんな解釈を生み出せるような道具が大事であり、必要なのはオシャレを決めてくれるシステムではない。
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  • 08:42  デザイン思考 Day5: つまり、民族誌調査から得るべき事は、どのようなコンピュータシステムが必要とされているか、ではなくて、新しい道具が調査した日常世界に導入されるとどのように人々の経験の可能性が広がるか、なのだ。デザインするとはこの可能性を拡大することなのだ。
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  • 08:45  デザイン思考 Day5: ワードプロセッサー、表計算ソフトは人間が他者と会話する可能性を拡大した。メール、Web、と振り返ってみると、人間がコミュニケーションするメディアとしてコンピュータシステムが道具としてデザインされてきたことが分かる。25年前にウィノグラードが述べたことだ。
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  • 08:57  デザイン思考 Day5: 25年前はコンピュータ画面とマウスとキーボードの時代だ。現象学的設計論はAlan Cooperがありえないほどの低品質のMSWindowsの再設計に導入して成功し、Macは最初から積極的に導入してインターフェイスを作ってきた。その影響は多大だ。
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  • 08:59  デザイン思考 Day5:だがこの流れがもう一度変わる。センサーとアクチュエータの価格がCPUの価格と共に劇的に下がり、ユビキタスコンピューティングか可能になる。さらにパーソナルファブリケーションの登場で形を自由に作れるようになる。コンピュータの画面上に限られていた設計論の対象が変わる。
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  • 09:01  デザイン思考 Day5:インタラクションデザインの可能性が一気に広がるのだ。21世紀デザイン領域の登場と言っていい。ところが奇妙なことに、この新しい領域において、20世紀デザインの亡霊がうろつき始めている。20年以上も前にコンピュータスクリーンデザインからは消えていた亡霊だ。
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  • 09:18  デザイン思考 Day5: 稲見さんから。>第三のポイントは「身体の延長であるかのように無意識化できるか」ですよね。第一と逆に見えるので確かに博士からですかね>>そうです。ここは博士ですね。でも博士過程の学生2名、小泉君と杉浦君はこの授業取っているので、そこを目指すように。
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  • 09:20  デザイン思考 Day5: センサーとアクチュエータとネットワークが組み合わさるとデザインの領域がネットワーク上に拡大して、さらに時間軸が加わる。経験の範囲と質が一気に広がり、身体の関与のレベルも深まる。このあたりは理屈だけではなく、実際にTinkeringしたときに経験したはずだ。
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  • 09:22  デザイン思考 Day5: 交差点で待っているときに、反対側にいる人と「会話」をして、足でリズムを刻んで、交差点の模様が点灯して、そのうちにリズムが生まれる。このコミュニケーションはメッセージ交換を超えてコミットメントを引き起こす。
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  • 09:23  デザイン思考 Day5:  さらに、うまくできないというbreakdownからうまくいった経験に向かう。交差点における経験の選択肢が一気に広がるイノベーションを生み出した。メディアデザイン基礎でここまでプロトタイプ出来た君たちである。ぜひともこの先に向かおう。そのための民族誌だ。
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  • 09:25  デザイン思考 Day5: 今日発表してもらう民族誌の報告と分析はあたらしい道具をユビキタス環境と形の冒険を組み合わせて創り出すための貴重なリソースである。ここからインスピレーションを得て、日常世界を一気に楽しむ新しい道具をデザインしよう。デザインをインタラクション環境に持ち込め。
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  • 09:29  デザイン思考 Day5:現象学的設計論の基本は解釈学的民族誌によって発見した日常世界に新しい道具をもちこみ、いまある日常生活のファンタジーを引き起こすことにある。人間の存在の尊厳さを実感させるようなドキドキワクワクするエモーショナルデザインをめざせ。早朝講義終了。教室で会おう。
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  • 17:45  デザイン思考 Day5: 授業コメントから。日常生活の「濃い記述」をするときに、主観的な理解、つまりは解釈を恐れてはいけない。行動を時間軸で記述して、思ったように書く。解釈を恐れると、ありきたりのことになる。日常世界の解釈学なのだ。濃い記述がデザインのバネになる。
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  • 17:47  デザイン思考 Day5: 濃い記述と5つのモデル分析ができたら、次は記述の中に trigger と breakdown を探す。一連の動作が始まる。そこは大事だ。また動作を始めようとしてうまくいかなくなることもある。これも非常に大事だ。アクションや会話の連鎖を明確に意識する。
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  • 17:49  デザイン思考 Day5: 濃い記述と分析ができたら、最初のIdeationに入る。普通にブレストをして大きめのポストイットに100くらいアイデアを出す。それから粘土やダンボールでアイデアを作る。沢山作る。コンセプトにすることを焦らない。
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  • 17:52  デザイン思考 Day5: appropriationを発見することもある。ライブにいって演奏に感動したのに、ビデオを見直すとそうでもない。ではなぜライブで感動したのか。こうしたことが見つかるのが、Triggerやbreakdownがたっぷりと詰まった良いフィールドワークである。
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  • 17:55  デザイン思考 Day5: 民族誌調査の目的は3つ。1)自分が意識できる範囲でデザインをすると時間軸のあるインタラクションデザインは作れない。2)コンテキストから切り離せる道具でないと面白くない。4)新しいコンテキストに持っていくと楽しい道具でないと魅力がない。
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  • 18:12  デザイン思考 Day5: ラポールができたうえで、濃い記述と分析をおこない定性的判断までできたチームがある。ここまできたら、goal-directed design になる直前だ。図書館でDesigning for the Digital Ageを覗いてみよう。いろいろわかる。
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2010年6月19日土曜日

博士論文工房 パラフレーズにむけて

  • 2010年6月18日
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  • 08:40  博士論文工房 これから論文のパラフレーズということを覚えていく。まずは最初の課題である"Using Computers"を読んでみる。この論文はウィノグラードの主張する現象学的設計論の基本であり、『コンピュータと認知を理解する』の最終章だ。ハイデッガーの現象学がちりばめられている。
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  • 08:45  博士論文工房 読んでいくのは結構難しいが、基本はコンピュータは道具だ、ということだ。コンピュータは頭脳だというのが一般的な考え方で、いまでも気がつかないでそう考えているエンジニアは多い。だが存在論的デザイン(ontological design)と彼が呼ぶ方法は全く違う。
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  • 08:50  博士論文工房 ウィノグラードはインタラクションデザインという新しい領域が生まれてくることをBeyond Calculation: The Next Fifty Years of Computing (1997)で述べている。非常に重要な研究者だ。
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  • 08:54  博士論文工房 さて、この論文を読んでいくわけであるが、最初の論文なのでちょっと英語の勉強の準備もしておこう。本論文に2週間から3週間をかける。20弱の部分に区切りの良いところで分ける。見出しがあるところはその固まりで。無いところはまあ区切りの良いところで。
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  • 09:00  博士論文工房 まずは音読。ゆっくりと正確に発音していく。発音が分からなければ辞書を引いて発音記号を確認しておく。さて、ここからが今日の話のメインなのだが、辞書をそろえよう。まず研究社の英和中辞典。大人なのだから革装を買うこと。次にPocket Oxford Dictionary
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  • 09:03  博士論文工房 中辞典は内容的には何を買っても変わらない。だが大学受験をするわけではないので落ち着いた辞書がいい。革装であることは非常に大切。手触りが違う。紙ではなくて電子辞書?あまりお勧めしない。英辞郎はいい。ネットで英辞郎で意味を知る。辞書はちょっと別の目的だ。
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  • 09:08  博士論文工房 辞書を引くのは語彙を増やすためだ。一冊ノートを用意しよう。小振りの大学ノートがいい。音読をした部分で分からない単語を書き写し、発音記号と品詞を書く。加えて基礎的な意味。この単語帳を手元に置いておいて、時々見直す。自分用の単語帳が出来ていく。
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  • 09:19  博士論文工房 英英辞書も必要だ。僕は長い間ESL(English as a Second Language) 学習者には必携とされる Oxford Advanced Learner's Dictionaryを使っていた。だがこの辞書は必要としている意味がなかなか出てこない。
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  • 09:25  博士論文工房 斉藤兆史さんは『英語達人塾』でPocket Oxford Dictionaryの革装版をすすめていたが、残念ながらこれはいま絶版。この辞書はアメリカ語が少ないとされる。アメリカ語版もある。まあどちらでも言い。二つあっても良い
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  • 09:31  博士論文工房 さて、これで道具はそろった。音読して、分からない単語を書き出し、辞書から必要な情報を書き写す。これを2週間ちょっと続けてこの論文を読み切ろう。焦ることはない。ゆっくりとやればいいのである。
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2010年6月18日金曜日

KMDで学生に学んで欲しいこと

  • KMDは何を学ぶところかをすこしはっきりとさせてみたい。
  • 16:29  音楽プロジェクトのミーティング終了。新しい音楽市場をプロトタイプ主義で作る試み。音楽のダウンロード だけがデジタル技術の使い道ではない。音楽出版社という面白い存在、ブッキングエージェントの未組織化、ライブ音楽の価値。やることはいっぱいある。それ にプロトタイプ主義で挑戦しよう。
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  • 18:26  Webをつくったりプロトタイプを作ったり出来る能力がKMDにいると身につく。それをつかって、ビジネ スの戦略を自分の責任で作って試してみる。どうすれば目的が達成されるのか、それをプロトタイプして社会にもちこみ、何度も反復して仕上げていく。それを 素早くできる能力は教えているはずだ。
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  • 20:02  KMDの学生はビジネスに戦略的に出て行く。このセンスを磨かなくてはいけない。社会的貢献だってお金が 絡む。誰かが一人遊びするお金をくれるとおもっていると、いつまでたってもものをつくれる力のある人は浮かび上がれない。自分で戦略的に社会に打ってで る。プロトタイプを作って試してみる。
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  • 20:04  金儲けをしろ、といっているわけではない。お金が好きなら金融に行けばいい。ものやサービスをつくって社 会に打って出るという行為は資本主義の根幹だ。ここを見据えた人間になって欲しいのだ。そのために自分のちからでWebやプロトタイプをつくる方法を教え ているのだ。それを使って攻めろ!!
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  • 20:06  世の中のためになるために活動する。すると立ちはだかってくる敵が見える。合理的で功利的な制度は「鉄の 檻」とマックス・ウェーバーが言っているように、一度出来たら普通には壊す方法はない。そこを破壊的技術で足下から崩すのだ。そのためにプロトタイプ主義を 教えている。
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  • 20:07  鉄の檻だけで資本主義は出来ていない。破壊的技術によるイノベーションも資本主義の中に組み込まれてい る。これがシュンペーターの教えるところだ。テクノロジーベンチャーとは破壊的技術を使ったイノベーションで行うのだ。先端技術を競うわけではない。
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  • 20:09  KMDの諸君にはイノベーションに必要な破壊的技術とそれを活用する創造性を教えてある。それをつかっ て、資本主義の荒海に飛び込んで、多くのことを学ぶのだ。何度も飛び込めばそのうち泳げるようになる。その練習場がKMDのリアルプロジェクトなのだ。お ぼれれば助ける。そのために先生はいる。
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  • 20:15  KMDはメディアイノベーターを育成する大学院だ。海兵隊のようなものだ。陸軍・海軍・空軍ではなく、そ のすべてである。MOTともMBAともポリシースクール、アートスクールのどれでもなく、そのすべてである。イノベーションという目的にむかってあらゆる スキルを駆使しながら向かっていく。
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  • 20:17  そして、破壊的技術によるイノベーションをおこなったら、それをもとに起業する。社会を変える。勿論全員 がそうなる必要はないが、先頭を突っ走っている学生は社会にそのまま出て欲しい。そのために十分な支援のエコシステムをKMDが提供できるか、これは我々 教員に課せられた課題だ。
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  • 20:19  KMDは4年目に向けて大きくカリキュラムをイノベーションする。 Master of Media Innovator を目指して学生も頑張っていこう。勇気を持って戦略をたて、自信を持ってプロトタイプを社会に示してすすむのだ。明日のク ラスターミーティング最終日プレゼンに期待!
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デザイン思考 Day4

  • 2010年6月17日

  • 08:36  デザイン思考 Day4: 民族誌調査について。デザイン思考においてはフィールドワークが基本である。調査される側の人をインフォーマントと呼ぶ。調査者とインフォーマントがお互いに合意関係にあることをラポールがあると呼ぶ。この関係を築くことが民族誌調査の第一歩である。
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  • 08:38  デザイン思考 Day4: だがこのことがなかなか分からない。調査をするということがそれ自体大義のあることだと思ってしまうのだ。だれか専門家をみつけて調査をしたいと思う。だが相手にしては迷惑な話だ。自分の仕事中に訳の分からない学生がやってくる。調査をすれば相手に迷惑をかける。
  •  
  • 08:40  デザイン思考 Day4: それにもかかわらず、調査をさせてくれる。これはまずは相手の好意である。だが、それだけではやはり駄目だ。相手を尊敬すること、それが必要だ。何を尊敬するか、それを見つけることがフィールドワークの第一歩である。好奇心と尊敬は違う。ここがなんとも難しい。
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  • 08:42  デザイン思考 Day4: 師匠・弟子モデルはその意味でも有効だ。そもそも弟子入りするには相手への尊敬がいる。半端なことでは弟子にはなれない。フィールドワークでインフォーマントを見つけるとは、相手のことを知り、尊敬した上で弟子入りをお願いしなくてはならない。ここが第一歩だ。
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  • 08:43  デザイン思考 Day4: 不思議なことに相手を尊敬して弟子入りをする能力が出来ると、ごく自然体でインフォーマントとラポールを築くことが出来る。街をあるいていても面白いこと不思議なことに出会い、興味ある人に遭遇する。僕が「開かれたパーソナリティ」と呼んでいるところだ。
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  • 08:45  デザイン思考 Day4: 師匠が見つかったとしよう。無事弟子入りできた。次に行うことは観察である。師匠の行っていることを2時間観察する。ただひたすらノートにメモをとりながら、わからなければちょっと質問をする。なにか「発見」しようとすると、メモはあまり取れない。ただ観察する。
  •  
  • 08:46  デザイン思考 Day4: 観察がおわったら、すぐさまラップアップという作業をする。時系列に従っておもいつくまま観察したことを文章にするのだ。すぐにやると意外とたっぷり文章を作ることが出来る。これを「濃い記述」とも言う。これが分析や発想のもとになる最も大切な資料だ。
  •  
  • 08:48  デザイン思考 Day4: このとき記述が真実であるかどうかは関係がない。自分が現象を解釈した主観的な記述でいい。この方法が解釈学的人類学と呼ばれる所以でもある。たっぷりと解釈的な記述がある。ここが大切だ。次にこれを分析する。
  •  
  • 08:50  デザイン思考 Day4: 分析は1)フローモデル、2)時系列モデル、3)物理モデル、4)アーティファクトモデル、5)文化モデルの5つである。濃い記述をもとにこの5つのモデルをすべて作る必要がある。これは日常現象を全体的に見るためのエクササイズで、必ず行わなくてはいけない。
  •  
  • 08:52  デザイン思考 Day4: デザイン思考の上級者になると5つのモデルを必ずしも作る必要はないが、最初は大切である。やってみるとわかるが、人によって作りやすいモデルが異なる。世界を見ている視線に個人差があるのだ。それを調整しながら日常世界を観察する能力を磨いていこう。
  •  
  • 08:53  デザイン思考 Day4: 民族誌的手法は難しい方法ではない。専門家を必要としない。方法は簡単だがそれを用いる君たちの人間的な成長を要求する。他者に対する思いやりや寛容、心を開く態度、そうしたことを身に付けないとよい民族誌は書けないのである。頑張って挑戦しよう。
  •  
  •  発表コメントから
  • 14:22  デザイン思考 Day4 。ビジョンと技術の棚卸しの関係について、技術が分かりすぎている学生が陥りやすいのは、どのように作るかの視点が落ちる。どの技術で何をやるということは簡単に言える。だが、ビジョンからアイデアをつくり、そのアイデアをどのように実現するかが棚卸し。
  •  
  • 14:25  デザイン思考 Day4: 民族誌の方法をインタラクションデザインに持ち込んだのはルーシー・サッチマンである。『プランと状況的行為 人間‐機械コミュニケーションの可能性』が翻訳されている。彼女はカリフォルニア大学のバークレイ校で人類学を学んでいた。一方アルバイトで秘書をしていた。
  •  
  • 14:27  デザイン思考 Day4: サッチマン女史のアルバイト先はゼロックスのParc。コンピュータ研究のメッカだ。そこで開発した高性能複写機をオフィスで働いている人は使えない。それは利用者のリテラシーや知性が低いからだとエンジニアが話しているのを小耳に挟んだ。彼女はむっとして言った。
  •  
  • 14:29  デザイン思考 Day4: だったらその複写機を何台がバークレイ校において、どのように利用するかビデオに撮ったらいい。ビデオを再生してみると、たしかにオフィスで働く人は使えなかった。しかし、世界的な経済学者も、ノーベル賞を取っている物理学者も使えなかった。そこから研究が始まった。
  •  
  • 14:32  デザイン思考 Day4: 人間は意識した行動(彼女はこれを計画と呼んだ)と状況に合わせて無意識に行う行動(これを状況的行動と呼んだ)がある。この二つを上手に組み合わせて人間は複雑な行動をする。したがって、ここを理解してデザインしなければいけない。この結論を受けて再設計された。
  •  
  • 14:34  デザイン思考 Day4: いま我々がなんとなく高性能の複写機をつかえるのは、ここで開発されたデザイン言語が埋め込まれているからである。サッチマンはその後Parcに勤務し、民族誌的調査の専門家が何人も雇用された。だがそのあとめざましい成果は出ていない。調査が詳しすぎるのだ。
  •  
  • 14:36  デザイン思考 Day4: 僕は民族誌調査は方法としては簡単なので、デザイナーやエンジニア、あるいは経営を行う者が身に付けておく能力だと思う。すくなくとも民族誌を専門にする者がデザイナーとエンジニアとコラボレーションする必要がある。専門的な調査を行うと実現が難しいビジョンが出る。
  •  
  • 14:40  デザイン思考 Day4: 民族誌調査でいくら強調しても強調しすぎでないことは、相手を尊敬することである。そもそも尊敬するから弟子入りするわけだ。10年ちょっと前にホームレスの民族誌をおこなったチームがあった。「尊敬しろと先生が言ったしな」とおもってホームレスのおじさんを見た。
  •  
  • 14:42  デザイン思考 Day4: するとおじさんは上手にダンボールとビニールシートで家を造っていた。そこで彼らは「おじさん、上手に家を造りますね。作り方をおしえてください」とお願いした。とても良い調査になったのだが、ホームレスのおじさんは感動した。
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  • 14:43  デザイン思考 Day4: 「どうしてホームレスになったのですか」「さびしくないですか」と聞く奴ばかりなのに君たちは「家の作り方を教えて下さい」と聞いてきた、というわけだ。彼は自分の身の上を話し始め、授業の最後に大学にやってきて話をして帰った。尊敬するとは素晴らしいことなのだ。
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2010年6月16日水曜日

デザイン思考 Day3

  • 2010年6月15日  デザイン思考Day3

  • 07:33  デザイン思考 Day3: 今日はビジョン技術の棚卸しの発表をまず行う。ビジョンは欲望であるが、中級レベルなので表現する言葉を戦略的に選ぼう。楽しい食卓が欲しい、ではなくて、恋人と食事をするときにロマンチックなレストランみたいな照明になる食卓が欲しいである。どこが違うのか。
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  • 07:37  デザイン思考 Day3: 恋人って誰?食事って何?ロマンティックって?どんな照明?といった疑問がわいてくる。聞き手が疑問を多く持つビジョンをつくる。するとそれに答えなくてはならない。この質疑応答の連鎖が非常に大切である。ウサギのぬいぐるみのような胡椒ひきが欲しいとかね。
  •  
  • 07:39  デザイン思考 Day3: これはやってみると意外に難しい。なぜ欲しいのか、この問題を深く考えていないからだ。この段階でのビジョンは仮で良い。調査や分析、さらにはアイデアを作っていく段階で変わってもいい。だがこの段階でビジョンを明文化しておかないと、反復作業がおこらないので、まとめておこう。
  •  
  • 07:41  デザイン思考 Day3: エンジニアリングを勉強してきた学生はとくに欲望を前に出してものつくりをしてこなかった。彼らの研究論文のイントロダクションはいつも表面的である。もったいない。イントロダクションが哲学とビジョンと社会の接点を書くところだ。自分が好きなものの理由を明文化する。
  •  
  • 07:43  デザイン思考 Day3: 技術の棚卸しはビジョンの詳細を考えてそれを実現する為の技術を個別に特定していく。ここは丹念に調べなくてはいけない。また最終製品を作るわけではなく、その効果を検証する為なので、ソフトウェアとハードウェアをつかって「スケッチ」をする感覚だ。
  •  
  • 07:45  デザイン思考 Day3: センサーと無線をつかう、というのではだめなのだ。どのセンサーを使って、どのような無線をつかうのか、その制御はどうするのか、を考える。実はものをつくるとき、このような上流過程で具体的な技術の話をするところが大切なのだ。それが可能になった技術革新がある。
  •  
  • 07:47  デザイン思考 Day3: 電子工作に使う部品が進歩して価格も安くなっている。センサーアクチュエーター(アウトプットを表現するスピーカーやモニターのようなもの、モーターでも良い)の価格もマイコンチップの価格も下がった。この段階で、ビジョンのアイデアを実現する仕掛けを考える。
  •  
  • 07:48  デザイン思考 Day3: 慣れないうちはぴんとこないかもしれないが、一度経験すると、アイデアを電子工作するときに部品選びからおこなうという作業が自然になる。この段階でこのような方法で技術の棚卸しをすることが非常に大切なのだ。すこし頑張ってリストを完成させよう。
  •  
  • 07:50  デザイン思考 Day3: いまはまだ、こうした段階で使う技術と商品を構成する技術の種類が違う。だた、PSocなどこの段階で使う技術のまま商品を構成する技術につながっていくものも開発されつつあるので、何を作るかのコンセプトがきまるまえに、アイデアの段階で技術の棚卸しを行う。
  •  
  • 07:54  デザイン思考 Day3:ヴィジョンと技術の棚卸しの発表がおわったら、民族誌の講義を行う。僕のデザイン思考は解釈学的人類学とよばれる、現象学の流れをくむ理論を元にしている。提唱者はクリフォード・ギアツだ。30年くらいまえに注目された理論だ。最新の理論ではないが、いまでも重要である。
  •  
  • 07:57  デザイン思考 Day3:民族誌的手法はIDEOが先駆的に取り入れた。ジェーン・フルトン・スーリ 『考えなしの行動』が翻訳されているが、この手法は単体のプロダクトをデザインするときには強力だ。だが、我々は複雑な人間関係のなかで日常生活を送っている。ここに攻め込むには非力だ。
  •  
  • 07:59  デザイン思考 Day3:ギアツの方法は、人間関係を観察して記録する。ただただ記録する。これを「厚い記述」と呼ぶ。自分の主観で記録を続ける。解釈学的人類学と呼ばれる所以である。だがこの記述が日常生活の行動を反映する。人間の行動の背後に隠された真実があるわけではない。
  •  
  • 08:02  デザイン思考 Day3:これはハンス‐ゲオルク ガーダマーがいった「解釈学」と同じ事なのだ。多くの人がただただ聖書を解釈してきたテキストが何百年分ある。その解釈が生み出すパターンの中に本当のことが潜んでいる。この考え方が現象学に大きな影響をあたえた。
  •  
  • 08:05  デザイン思考 Day3:現象学、とくにハイデッガーの現象学はアメリカでは ヒューバート・L. ドレイファス『世界内存在「存在と時間」における日常性の解釈学 』として紹介された。スタンフォード大学のコンピュータサイエンスの気鋭の人工知能研究者がこの本をに出会う。
  •  
  • 08:09  デザイン思考 Day3:実際には出版前のドラフトを読むのだが、ここでこの研究者はいままでの研究をすべて捨てて新しい方向に向かうことを決心する。彼がテリー・ウィノグラードであり、『 コンピュータと認知を理解する-人工知能の限界と新しい設計理念』で現象学的設計論が提案される。
  •  
  • 08:12  デザイン思考 Day3:ウィノグラードの影響は大きく、彼の設計理念は多くのソフトウェアエンジニアに影響をあたえ、それはGUIからユビキタスコンピューティングそして大規模データベースの検索にわたる。この手法をさらに推し進めたのがコンテキスチュアル・デザインと呼ばれる分野である。
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  • 08:18  デザイン思考 Day3:現象学的設計論における解釈学的人類学の方法を展開したのがHugh BeyerKaren HoltzblattContextual Design: Defining Customer-Centered Systems(1997)である。
  •  
  • 08:20  デザイン思考 Day3:彼らは「濃い記述」をもとに5つのモデル分析を行うことを提案した。これについては後ほど詳細を説明する。今日はここまで。ちなみに彼らのワークショップに参加したことがある。Holtzblatt氏に「日本人だと英語がわからないからここは出来ないわよ」と言われた。
  •  
  • 08:22  デザイン思考 Day3:赤いソフト帽をかぶった強烈な女史で、いきなりこうくるかとおもった。もちろん僕程度の英語力でも全然問題はなくワークショップは終了したのだが、普通の日本のエンジニアの英語力だとつらいかなとおもった。だけどこの方法はデザイナーやエンジニアにはぜひ身に付けてもらいたい。
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  • 08:43  デザイン思考 Day3:今日はもうすこし学ぶことがある。それは日常世界という概念とラポールという方法だ。日常世界はエドモンド・フッサールという現象学の創設者が提案した概念で、我々は非常に複雑な仕組みで動いている世界に暮らしているが、それを普通だと思っているという意味だ。
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  • 08:45  デザイン思考 Day3:簡単に見えても実は複雑。ここが日常世界のポイントで、この複雑さを描き出す手法が解釈学的人類学の「濃い記述」であり、これを分析するのがコンテキスチュアル・デザインの5つのモデルなのだ。大分民族誌の武器がそろってきた。だがこれだけではまだ不足なのだ。
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  • 09:17  デザイン思考 Day3:民族誌をおこなうにはラポールが必要。調査する側とされる側の間に成立する信頼関係である。これなしには日常世界のフィールドワークは不可能である。逆に言えばここさえ成立すればフィールドワークは簡単な方法なのでわざわざ専門家を育成する必要はない。
  •  
  • 09:19  デザイン思考 Day3:ラポールを構築する方法として前に紹介したContextual Designの中では師匠弟子モデルを提案している。これは非常に有効だ。調査する対象を師匠と考えて、師匠に弟子入りするのだ。人間関係を構築するときに調査する側の特権を取り去るうまいやり方だ。
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  • 09:22  デザイン思考 Day3:僕は調査をするときに相手を尊敬して良いところを見つけなさい。「隠された真実を暴いたり」「有効な方法を気付いたり」してはいけませんと20年間教えてきた。師匠弟子モデルを10年ほど前から使っているが、この方法では個人の倫理とかモラルをことさら言わなくてもいい。
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  • 09:24  デザイン思考 Day3:したがって師匠をみつけて弟子入りを許されれば、ラポール成立である。誰を師匠とするか、弟子入りが許されるか、ここが民族誌調査のカギとなる。みなでしっかりと議論をして良い師匠をみつけて、愛される弟子となる努力を今週はして欲しい。終了。授業で会いましょう。
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  •  授業中のコメントから
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  • 10:21  デザイン思考 Day3: ビジョンと技術の棚卸しの発表で気がついたこと、今後注意することをいくつか書いておこう。まずVoiceということを覚えよう。声である。発表するとき にはっきりとした声で発表する。自分の声を自分が確認して聞いている感じである。そして早口にしない。
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  • 10:23  デザイン思考 Day3: これは単に分かりやすくというわけではない。声で企画をつくっているのだ。人間の身体は、自分の声にかなり反応する。早口で小さな声で話すと企画のスケー ル感が出ない。骨太の企画は骨太の声で作る。自分の声を感じてはなせれば合格だ。これがVoice問題。
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  • 10:24  デザイン思考 Day3: rationaleを明確に。これはいつも言うことだ。ヴィジョンを発表するときは、なにがインプットで何がアウトプットか、その間にはどのような仕組み があるのかを明確にする。簡単なことが。でもそれを忘れて説明を始める。そのうち何が何か分からなくなる。
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  • 10:31  デザイン思考 Day3: 物語で語る。これは意外と難しい。概念的な枠組み(rationale)を図で示すと、その部分の説明をしてしまう。図を説明するときに物語になるように する。いつどこでだれがなにをするのかを前提で図を説明すればぐっとビジョンが明確になる。いつも物語を意識する。
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  • 10:33  デザイン思考 Day3:ビジョンを楽しむ。ビジョンをつくると、どうやってこれを実現しようか、アイデ アが浮かぶ。それを書き留めたり一枚の紙にrationaleを書いてアイデアをちりばめていく。この作業はすこし拡散気味にする。ここでコンセプトを作 ろうとすると、魔法が解ける。
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  • 10:35  デザイン思考 Day3:コンセプト、それもイノベーションのコンセプトは要素の組み合わせ以外の何者で もない。ヴィジョンをもとに作っていくアイデアはイノベーションのための要素なのだ。自由にいろいろ考える。アイデアをコレクションする。コンセプトを作 ろうとすると窮屈になる。注意すること。
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  • 10:37  デザイン思考 Day3: 魅力探しをする。compellingという言葉がある。ぐっとくる魅力みた いな意味だ。コンセプト作りをあせるとビジョンが色あせる。ビジョンは人々を魅惑しなくてはいけない。上手にここが表現できていたグループがいくつかあっ た。まずは人を魅惑することが大事だ。
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  • 10:39  デザイン思考 Day3: 技術の棚卸しが皆へたくそだ。コンセプトを決めてしまうと検討する技術が少な くなる。これでは棚卸しにならない。こつはアイデアをいくつもつくったあとで、似たようなアイデアで実際にサービスやプロダクトをつくっているところを調 べることである。沢山リストする。
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  • 10:41  デザイン思考 Day3: この段階で、類似のサービスがどのような技術を使っているかを検討する。セン サーであればどのような種類のセンサーなのか、LEDであればどのようなものなのか。ものだけではなくて、ソフトウェアも含む。アルゴリズムの名前もだ。 こうしたことをgoogleで調べる。
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  • 10:44  デザイン思考 Day3: アイデアを実現するには実にいろいろな技術が使われていることが分かるだろ う。こうした情報を大量の「引き出し」に入れて並べる。これが技術の棚卸しだ。実際に使えるか、その技術力があるかないかは必要はない。だが出来るだけ細 かく情報を分解していく。
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  • 10:46  デザイン思考 Day3: コンセプトをつくるまえにこの引き出しを作っておかないと、技術が決めうちに なってイノベーションの可能性が一気に下がる。ビジョンのまわりにアイデアを一杯ちりばめて、技術を調べて、大量の引き出しを作る。この作業を丹念に行う 必要があるのだ。
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  • 10:48  デザイン思考 Day3: 次回(明日)への宿題はビジョンと技術の棚卸しをしっかりとおこない、プレゼ ンをする。加えて、フィールドワーク先に連絡した進捗状況も報告する。誰を師匠とするか、コンタクトしたときの反応は、調査の可能性は?といったところを 各チーム3分で報告してもらいたい。
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