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2011年2月26日土曜日

博士課程を生きのびる方法: 自己催眠術あるいは自律訓練法について

  • Fri, Feb 25

  • 10:34  ワークショップの参加者の一人から「奥出先生はどうしていつも元気なの」と聞かれた。その話をTAをお願いしているKMDの大学院生に話すと「初日に僕らもそんな話をしていたんですよ」と言うので、ちょっとその方法を紹介する。

  • 10:40  アメリカの大学院に留学して博士課程の勉強を始めた頃、非常に体調が悪くなった。疲労がたまり、胃も痛くなる。集中力も無くなる。膨大な課題をこなすために1日12時間ぐらい勉強しているのだが、とにかくすっきりしない。そんなときに何の本だったかわすれたが、自己催眠術の紹介があった。

  • 10:42  やり方は簡単だ。ベッドに横になって右手が重い、左手が重い、と思う。次に同じように右手が熱い、左手が熱い、としっかりと意識的に思う。最初は意味のない感じだが、2〜3週間続けると意識すると重くなったり熱くなったりする。3ヶ月ぐらい続けるとそんなに強く意識しなくても出来るようになる。

  • 10:46  この方法で自律神経をコントロールする方法を身に付けるのである。これで質の良い睡眠をとることが出来るようになる。目覚めもすっきりだ。この方法を続けているうちに2年か3年くらいたった頃だろうか、ただ寝ようと思うと直ぐに深く眠れるようになった。大体何処でも大丈夫だ。

  • 10:48  プロフェッショナルなトレーニングの方法はある程度確立している。医師も弁護士も、研究者もある時期2年なり3年なりに一気に膨大な知識を身体にたたき込む。ここが出来ているかいないかで専門家であるかどうかが解る。専門の分野はいろいろだが、専門家になるプロセスは同じだ。

  • 10:54  身体の限界まで知識をたたき込むわけだが、実はここで奇妙な現象に遭遇する。頭は身体よりも強いのだ。どんどん勉強をする。それが癖になる。すると頭が身体をオーバードライブする。これが強烈なストレスとなる。従って興奮している自律神経に休んでもらわなくてはならない。

  • 10:58  いまちょっとgoogleで調べたら自律訓練法をやってみよう、というサイトがあった。http://bit.ly/f9Mnyp  また、九州大学の心療内科がその方法を詳しく紹介していた。http://bit.ly/euxzlv 僕が行った方法と同じで、参考になる。

  • 11:01  自己催眠法を自己啓発やコンプレックス解消などに応用した多くの本が書かれている。まあそういった本の中にも使いやすいものがあるかもしれないが、個人差もあるので、一度基本的なところを自分で押さえてみて、実行してみたらどうだろうか。僕は以後30年、この方法のおかげで良い睡眠を得ている。

  • 11:03  補遺:膨大な知識を身体にたたき込むというところで、ちょっと一言加えておきたい。知識量が問題ではなくて、それだけの量の知識を一気に身体にたたき込むプロセスが大事である。その作業を通じて知識をこえた能力が身につく。法律でいう、リーガルマインド、である。プロになる瞬間だ。

  • 11:05  補遺2:このあたりは拙著『物書きがコンピュータに出会うとき』で書いた。一生に1回しかない研究者のプロになった瞬間のドキュメントである。
  • 11:42  RT @chocochocobo: 私もこれたまにやります。RT @NaohitoOkude: やり方は簡単だ。ベッドに横になって右手が重い、左手が重い、と思う。次に同じように右手が熱い、左手が熱い、としっかりと意識的に思う。最初は意味のない感じだが、2〜3週間続けると意 ...

  • 11:44  RT @needle: @naohitookude 最近だと動的に組み合わせた音声を再生して補助するiPhoneアプリもありますね(英語ですが)。時々使っています。 http://ow.ly/433Vz

  • 11:45  RT @suishess: 交感神経の緊張をとく方法ですね。演奏家などステージパフォーマーが本番前の緊張を和らげるにも有効とか。トレーニングが必要ですが。 QT @NaohitoOkude: 自律訓練法 http://bit.ly/f9Mnyp http://bit.ly ...

NUSDCCデザイン思考ワークショップ第4日目


  • Fri, Feb 25

  • 11:51  NUSDCCデザイン思考ワークショップ第4日目:Tinkeringの次は、スケッチングからプロトタイプへと移行する。Neil Gershenfeld Fab: The Coming Revolution on Your Desktopの意義から説明する。

  • 11:54  6年ちょっとまえだが、久し振りにMITのメディアラボを訪問してびっくりした。工作機械などに溢れていて、コンピュータグラフィックスと人工知能のメディアラボとは全く違う雰囲気になっていた。さらにその機械を使いこなす実践的な授業が提供されていた。

  • 11:56  ユビキタスコンピューティングを実現するのはこれだなと思った。ワイザーユビキタスコンピューティングの考えは普及していたが、それはPCが超小型化したものをネットワークでつなぐだけであった。8年ほど前に情報住宅を造って大規模な実験をしたのだが、生活環境に馴染まない。

  • 11:59  人間の頭はすぐに本質論を論じて一般的な答えを出そうとする悪い癖があるので、コンピュータと生活環境は馴染まないといったそもそも論が出てしまう。またその逆に無節操にコンピュータを日常世界に持ち込む愚挙も例を挙げればきりがない。

  • 12:01  ネットワークによるシステム的なサービスの提案が生活に着地しないのだ。家電メーカーと何度か共同研究をしたが、プロトコールの標準化ばかりでらちが明かない。そのうちに気がついたのは、下請け、孫請けの構造だ。ほとんどの電子回路はメーカーの人は作らない。アナログ回路にいたっては孫請けだ。

  • 12:04  ようするに組み込みと呼ばれている市場である。この仕組みがある限り、車とか冷蔵庫とかテレビしか作れない。ネットワークの方はユビキタスになり自在なコミュニケーションが可能になるが、それを人間に媒介してくれる「メディア」を自在に作ることが出来ないのだ。

  • 12:08  理論的にここを突き破ったのがMIT石井裕先生のTUIで(Tangible User Interface )だ。ユーザーインターフェイスはGUIである必要はない。インターフェイスをGUIに限定していたパーソナルコンピューティングの世界が変わる

  • 12:11  GUIが一気に普及したのはマウスをグラフィックスに連携させたからだ。エンゲルバートマウスの発明がGUIと結びついた。では石井さんのTUIがGUIに相とすると、マウスに相当するモノは何か?実はここに大きな問題点がある。

  • 12:12  僕はTUIはGUIのユビキタス版ではないと思っている。むしろTUIはマウスとおなじデバイスの話だと考えている。その意味でTUIはチューリング賞をもらっても良いくらいだ。しかしGUIに相当するインターフェイスの仕組みをユビキタスコンピューティングは持っていない。

  • 12:18  TUIの延長にKuniavskySmart Thingsがある。サブタイトルが Ubiquitous Computing User Experience Design となっているようにずばり本質的な議論だ。

  • 12:20  人間があり、smart thingsがある。それを「端末」としてユビキタスコンピューティングの世界に入っていく。前置きが長くなったが、GUIの次のユーザーインターフェイスをまだ我々は解明していない。マウスに相当するような何にでも使える端末をまだ見つけていない。

  • 12:23  日常世界を新しくデザインしていくためには「端末」を次々とデザインしてその有効性を検証することが必要だ。この作業を繰り返すためにパーソナルファブリケーションは強烈な武器なのだ。センサーとアクチュエーターからなる端末がネットワークにつながり、人間とインタラクションする。

  • 12:30  この複雑な関係をデザイン思考は挑戦するわけであるが、キーボード、マウス、ディスプレイという仕組み、冷蔵庫、テレビ、調理機器、洗濯機などの家電の仕組みを繋いだのでは邪魔で愚鈍な仕組みしかできない。これがインターネット家電やインターネット「テレビ」がデザイン的に未熟な理由である。

  • 12:32  家電やパソコンを「ハック」して組み替えるわけである。この「理論」と技術はTom Igoe小林茂さんたちによって確立した。Tinkeringの哲学的な意義である。さて、問題はハックして再構成したモノにもう一度形を与えなくてはいけない。形がないと人間は使えない。

  • 12:44  この段階で形を与えようとする。パーソナルファブリケーションの仕組みがないと1回に300万円500万円の単位でお金が消えていく。何度も試作を繰り返すと開発費は膨大になる。結局は新しい仕組みの開発は出来ないことになる。ここをこえないと、アイデアだけの作業になる。

  • 12:46  デザイン思考のワークショップの多くはここに挑戦していないので自己満足である。IDEOはここに挑戦しているが、経営を揺るがす膨大な投資を行ってきた。そこにパーソナルファブリケーションの機械が登場したわけである。かなり画期的なことだ。
  • 12:51  SFCの田中浩也さんが、自ら隗より始めよ、の精神で学生と一緒にMITのHow to Make (Almost) Anything (ほぼ何でもつくる方法) を受講した素晴らしいレポートがある。 http://fab.sfc.keio.ac.jp/howto2010/

  • 12:58  さて、問題はデザイン思考の中でパーソナルファブリケーションの占める位置を明らかにすることである。この段階になるともう「思考」では無くなっている。だがほかに言い言葉もまだみつからないのでデザイン思考のくくりで議論を進めておきたい。

  • 13:36  3Dプリンターとレーザーカッター、NC旋盤が基本となる。センサーとアクチュエータとネットワーク接続、およびこうした機能を統括するマイコンによってできた構造を収納する仕組みを作るのである。したがって形と機能のせめぎ合いになる。そのときに形もイノベーションしなくてはならない。

  • 13:38  RT @nium_: @NaohitoOkude 外部のモノであるデバイスが棄却され、身体だけが残る、という可能性もあると思います。例えば Skinput の延長線上です。また、マウスのような「共通の様式」の価値も薄まるかもしれません。

  • 13:56  @nium_ コメント有り難うございます。僕の研究はこちらにシフトしています。また身体の(無意識な)動きと意識の論理的な仕組みがカップリングされているところをみつけて、そこにインターフェイスしていくことも始めています。そこの多様性が「TUI」の次の課題にもなりますね。

  • 14:06  さて、センサー・アクチュエーター・ネットワークを今までにない方法でくみあわせて形にするまでのプロセスをPanaviを例として説明した。http://d.hatena.ne.jp/panavi/  手作りの形から、レーザーカッターを使う形に、そのあと柏樹さんのデザインで仕上げ。

  • 14:38  ここまでのプロセスを詳細に写真をつかって説明をした。このあたりまで出来ると、テレビ局の取材に対応したり展示会へのデモ出展が出来るようになる。ここまで出来たら次はいかにこのプロトタイプをビジネスに結びつけるかを考える段階に入る。これはこのデザイン思考ワークショップでは議論しない。

  • 14:41  議論しないがスコープとしてはしっかりと持っておくことが大事である。コンセプトの段階から社会的スコープを明確にすることが大事なのだ。スコープはビジネスではビジネスモデルだろうが、なにもビジネスとは限らない。制度的インパクトもスコープの中に入る。資金をどう調達するか、これも大切。

  • 14:43  以上を説明して、次はNUSインキュベーションセンターの3Dプリンターと建築学部のレーザーカッターがおいてある場所の見学。20数名で奨学生の修学旅行のようにでかけた。こうした機械が工学部に無いわけではない。だが使う用途が違っている。実際にTAが機械を動かして見せた。

  • 14:47  パーソナルファブリケーションの哲学と実際の現場の両方を見学した後はグループに分かれてスケッチをプロトタイプに変形する作業をグループ毎に開始した。ダンボールの状態のプロトタイプでいいではないか、あとは実際のモノを作るだけだし、という感じで乗り気がしないグループが出てきそうで心配。

  • 15:23  という感じで午後のワークショップが始まったが、やり始めると少しずつエンジンがかかってきた。またTAがそれぞれ適切に作業をサポートしていた。デザイン思考をしっかりと身に付けている大学院の学生が5名以上。これは強力だなあと今更に感心。メンバーの教員の学生が応援に駆けつけたりした。

  • 15:24  というわけで6時すぎまでワークショップは続いた。作業は明日の午後早くまで続く。作り始めると作業は楽しい。(この項 完)

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2011年2月25日金曜日

NUSDCCデザイン思考ワークショップ第3日目


  • 15:50  NUSDCCデザイン思考ワークショップ第3日目:昨日のワークショップを振り返っておきたい。今日は場所をGlass Houseに移動して9時から小林茂さんのレクチャーを開始。DCCは学部学生のためのプロジェクトで今年が第1年目。50名ちょっとは成績優秀者から選らんだ。

  • 15:52  これについてはプロジェクトの責任者である副工学部長が「失敗だったかな。来年から創造性で選ばなくては」とちょっと言っていたが必ずしもそうではない気もする。見方がおもしろい。スタンフォード大学のd.school的な社会的使命感を持っていることが解る。まあ、だから優等生なんだろうけどね。いずれにしても俊英である。彼らがワークショップをするための場所としてGlass Houseが作られた。2階建てである。

  • 15:56  SFC時代の奥出研究室のスタジオのような雰囲気もある。小林さんのレクチャーはここでやることに計画の当初からの計画である。全員にTinkeringを行ってもらうので一望しながらやろうという計画である。また参加者はTinkeringを非常に楽しみにしている。

  • 16:03  講義は小林さんのローランド時代のスライドから始まった。シンセサイザーにビデオ編集機が紹介された。ローランド退職後IAMASで教え初めてGainerを作った話をへて、PrototypeLab出版までが手短に紹介された。この本で紹介されている作品は、編みロボなどおもしろいね。

  • 16:06  小林さんはその後Arduinoをつかったボードを開発する。このボードをつかって「ハードウェアスケッチング」というコンセプトで活動を始めた。スケッチングとは文字通りスケッチである。絵を描くときにどんな絵にしようかなどいろいろなことを考えて気軽にスケッチをかく。

  • 16:08  この感覚で気楽にスケッチを描くようにハードウェアを組み立てようというのがハードウェアスケッチである。絵はスケッチできる。粘土やダンボールでも形のスケッチが出来る。ところがハードウェアになると気軽に出来ないという状況を改善すべくArduinoが導入されたのだ。

  • 16:10  ビデオを使っても簡単に「スケッチング」できる。デザイン思考にビデオを導入することをためらう会社が多いが、このリテラシーは一度身に付ければ後は簡単なのでおすすめだ。さて問題はハードウェアである。ここで簡単にスケッチができれば何を作ればいいかが非常に簡単に解る。

  • 16:11  なんどかハードウェアスケッチングを繰り返してプロトタイプへと向かっていくのである。出来上がったプロトタイプは展示会なので展示可能になっている。このプロセスからできたモノとして非常に評価が高いのはMountain Guitarである。このビデオは素晴らしい。

  • 16:19  さてスケッチプロトタイプであるが、どのように違うのか?Bill BuxtonSketching User Experience において、手間暇とお金を掛けないで素早く作るプロトタイプをスケッチと呼んでいる。(138p)

  • 16:20  ものをつくるときに何度も何度もスケッチをすることが大事なのだ。そのためにArduinoがある。短時間でどんどんとスケッチを行わせる。今回のワークショップはこの作業の管理を徹底して行っている。もっと時間があればとか余裕があればという意見が出てくるがそれは間違いだ。

  • 16:21  このワークショップを計画するときもそこに注意をした。クロッキーという作業を知っているだろうか。短期間にスケッチをどんどん行う。すると細部ではなくて面や線で対象を見ることが出来るようになる。ハードウェアスケッチングでも同じである。ゆっくり行うと全体が見えない

  • 16:23  だが粘土はともかくハードウェアでスケッチを行うのは難しい。これが定説だ。それを覆せないかといろいろな人が過去10年ほど工夫をしてきた。そのなかで最近になってArduino周辺の技術がまとまってスケッチが出来るようになってきた。ここを理解してもらうのが3日目の目的である。

  • 16:27  小林さんが実際にファシリテーションを行ったハードウェアスケッチングのワークショップの写真が何枚か投射された。何が作れるかの写真もおもしろかったが、どうやったらハードウェアでスケッチできるかの説明のスライドは非常に説得力があった。

  • 17:20  いくつかおもしろい作品の紹介があった後、Tinkeringの説明に入った。まずはPhysical Computingの話から。Tom Igoeがこの本を出したときは衝撃的だった。コンピュータという箱をハックすると中はセンサーとアクチュエータとそれを媒介する基盤だけになる。

  • 17:22  我々の物理的な世界そのものにコンピュータ環境を導入することが出来るということが明らかになった。その解明は決して簡単ではなかった。抵抗から始まりさまざまな部品がぎっしりと詰まった箱を分解してその構造の意味を再定義する作業はかなりの知識が必要となる。

  • 17:24  Igoeはそこを明確にして記述した。この本によって、コンピュータの問題を考えるときに、キーボードと箱とモニターという形にこだわらなくても良いことを教えられたのだ。そしてArduinoが登場する。これは「オープンソースハードウェア」として登場した。

  • 17:29  このころインタラクションの装置を作ろうとすると、PicARMといったマイコンをプログラムする必要があった。まあいまでも本格的に作るためには必要だ。だがちょっと試すつまりスケッチするには大変である。この問題を解決するために工夫されたのがArduinoである。

  • 17:31  このマイコンをProcessingというプログラミング言語で操作すると、いままでかなりハードルの高かったインタラクションのスケッチやプロトタイプを比較的短時間で作り上げることが出来る。プロセッサーのつくりかたも「オープンソース」として公開した。昔僕の研究室で自作したこともある。

  • 17:33  これをつかってインタラクションのスケッチングをしようというのが3日目の午後に行われるワークショップの課題だ。今回はこの作業を支援するキットとしてGroveを使うことにして人数分のキットを手配した。なかなか良くできたキットで、センサーとアクチュエーターとマイコンを連結できる。

  • 17:35  以上小林さんの講義をサマライズしたが、非常に快適に講義はすすみ、聞いている人も楽しそうだった。午後は5つのグループにわかれてTinkeringの実習である。前日に作ったコンセプトの中で重要と思われる箇所のインタラクションデザインを行う。これが課題である。

  • 17:55  午後はワークショップをおこなった。ある程度のスキルを教えて、その後前日につくったコンセプトにインタラクションを加えていく。そして夕方にプレゼンテーションを行った。グループAは車椅子で快適に移動できるバスのデザイン。自動的に適切なスロープが出てくる仕組みをスケッチした。

  • 17:59  手堅いが、彼らのペルソナはハンディキャップのシンガーである。車椅子で移動しながら演奏を行い生計を立てている。この魅力的なペルソナが生きていない。高齢化社会になったときに、車椅子で動く人が「支援が必要な少数」では無くなる。実はここがポイントではないか。

  • 18:01  多数の人が「支援」が必要なら、それを提供することは特例ではなくなる。そして特例ではなくなったときに現在のシステムが崩壊するなら、それに変わるシステムを考えなくてはいけない。また快適な移動は乗り降りだけではなくて、バス停留所も含めたシステムが必要になる。この方向に展開したいね。

  • 18:13  グループBは家で脳梗塞の神経学的理学治療をする仕組みをインタラクションにした。リハビリテーションをしているときの環境を病院ではなくてリビングルームにする。したがってビープ音ではなく音楽にする。そのあたりはおもしろかった。

  • 18:14  がオリジナルコンセプトにあったオーストラリアにいる息子とのコミュニケーションがない。頑張ってはたらいでようやく経済的に恵まれ始めた勤勉なシンガポール人が脳梗塞になって治療をしている。仲間や家族とのコミュニケーションとリハビリテーションの作業が融合している瞬間を工夫する。

  • 18:16  グループCはNUS内の新しい交通手段。これもバス問題。バスでの移動は便利といえば便利だが末のも大変だし、乗り降りも大作業となる。若者でも大変だ。大きなバスの替わりに小型の無人自動車の提案。これ自体は珍しくないが、大学キャンパスで何台車を用意すれば需要をまかなえるのか。

  • 18:18  この段階で新しい移動手段を越えている。また個人で移動しているとも思えない。4人掛けくらいの無人自動車がニーズにあわせてキャンパス内を動き回る、というシステムを考えるのはどうなのか?学生の移動のパターンはどうなのか?いろいろと調べて考えることはありそうだ。

  • 18:19  グループDはタクシーに変わる新しい交通手段の提案。これも無人自動車。ネットワークの専門家がメンバーにいて、交通制御のリアリティも無人自動車の設計も自信がある。すごいね!ところでビジネス的にはどうなるのか?と質問。政府が買い上げるだろうという答え。これもなかなかびっくり。

  • 18:21  たしかにシンガポールならそうだとおもう。だがこれから先がある。これを産業にするにはどうしたらいいのか?ここに上手く答えられない。まあこれは日本も同じだね。強烈なインフラサービスはそれ自体、輸出産業になる。ここを想像することができると、おもしろくなる。

  • 18:23  グループEはDCCの若手の教員中心。Skitが秀逸。数学の時間だが、先生の解析学の授業が何を言っているのか分からない。英語のなまりもひどいし、内容も難しい。わからないところを聞きたいが「アジアの学生はシャイだから授業中に質問は出来ない」。でもたもたしていてついて行けなくなる。

  • 18:24  先生の方は先生で学生がわかっているのかわかっていないのか解らない状態で教えていてこれも不安だ。このあたり、学生の感覚がのこっていていいね。で解決の方法が、大講義室の椅子に付いている折りたたみの机を備え付けの頑丈なコンピュータの板にする。すわって、それを出してログイン。

  • 18:26  先生の授業がわからないときはそのことをこのコンピュータに入力。それが先生に伝わる。先生はそこでもう一度説明を試みる。これは単純だけどいいね。ワークショップ型の授業をしているとどうしても知識型、分析型の授業が追いつかないし、これを少人数でやるのはコストがかかる。

  • 18:27  オンラインでやると勉強してるのかいないのかわからない。基礎的な数学とか物理とか工学とかそういったものを教えるために大教室を生かす、というのはなかなかおもしろい。電子教材もあまり入らない。今までのように教えていればいい。実践型の授業が増えたときに逆に必要になりそう。

  • 18:28  といった感じで、3日目は無事終了。発表後、多くの参加者が名残惜しそうに小林さんの周りに集まっていたのが印象的だった。(この項 完)
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2011年2月24日木曜日

Tinkeringしなくちゃ意味がない その2

  • Feb 24、2011
  • 大分前に「Tinkeringしなくちゃ意味がない」を書いたが、その第2弾。最初の記事は下記のURL
  • http://okude.blogspot.com/2010/05/fri-may-21.html

  • 08:53  おはようございます。今日はNUSDCCワークショップ第4日目。昨日は小林さんの講義とワークショップで大盛り上がり。作りながら考える作業にTinkeringを導入することに否定的なもっともな議論が多い。今回もここの導入はNUSの担当教員側から一番抵抗があった。 »»

  • 08:54  だがTinkering無しには何も始まらない。ユビキタスコンピューティング環境の中で我々はこれからの日常世界を構築していく。すべては動かしてみないと解らない。分解して再編して動かして感じる。その基本がTinkeringだ。半田付けとセンサーとアクチュエーターの連結。 »»

  • 08:56  詳しくは第3日めとしてレポートするが、ここを導入する決定が出来ないので、今回は大阪市とKMDとの共同プロジェクトのミッションであるワークショップ開発の一貫として行った。つまり予算はこちらのプロジェクトから出した。報告書にもここは詳しく載せるが、非常にうまくいった。 »»

  • 08:58  結局はなんのためのデザイン思考か?ということなのだ。びっくりするぐらい我々の身の回りは変わっている。そこに対応した新しい世界を創り出すための方法がデザイン思考であり、そのために不可欠なのがTinkeringとFabricationを我々自身の「リテラシー」とすることなのだ。 »»

  • 08:59  というわけで、チャレンジングなミッションの実行を小林さんにお願いしたわけですが、有り難うございました。若い参加者はこれを待ちわびていた、という感じだし、偉い人も目から鱗だったとおもいます。魅力的なワークショップでした。今後はデザイン思考のパッケージに組み入れ仕上げていきましょう。 »»

  • 09:00  RT @kotobuki: 1泊4日のシンガポール出張、無事に終わりました。本日の会議などの関係で一部の日程のみの参加となりましたが、ワークショップの最終成果が楽しみな展開でしたので、最後まで見られないのがとても残念です。引き続き滞在されるみなさんの健康とワークショップの ... »»

  • 15:37  RT @kotobuki: 今回のhardware sketchingワークショップではSeeed StudioGroveを使いました。もしかしたらWSでの使用は世界初かもしれません。実際に使ってみるといろいろ要望は出て来ますが、基本的にとても良いキットです。 http ... »»

  • 15:38  RT @kotobuki: .@NaohitoOkude チャレンジングな機会をありがとうございました。正直なところ、始めるまではかなり不安でしたが、みんなとても楽しそうに取組んでいたのがとても印象的でした。細分化が進んでしまった工学部向けのtinkeringワークショッ ... »»

2011年2月23日水曜日

NUSDCCデザイン思考ワークショップ第2日目


  • Feb 22, 2011

  • 11:30  NUSデザイン思考ワークショップ2日目レクチャー3としてGoal directed designの話をする。Alan Cooperの方法とContextual Inquiry の方法の組み合わせについて説明。濃い記述から5モデル分析をして、ペルソナを作り、ゴールを想定する。 »»

  • 11:32  ゴールを達成するまでを身近な劇(Skit)として発表する。そのための小道具が開発するべきプロダクトでありサービスとなる。何が必要かをブレーンストーミングする。ポストイット、紙粘土、ダンボールと素材をどんどん変えていく。開発のプロセスの説明をSound Candyを使って行った。 »»

  • 11:34  Sound Candyは少し前のプロジェクトだがメディア芸術祭でも賞をもらったし、テレビでも何度も紹介された。幸いに開発のプロセスの記録が残っている。民族誌調査をしてコンセプトをつくり、スケッチを繰り返す。そのあとセンサーやアクチュエータをプログラムしてアイデアを形にする。 »»

  • 11:36  電子工作でTinkeringを繰り返しながら、当時購入したばかりの3Dプリンターを使って形を検討した。最終的にはその形にふわふわの毛が着いている布を被せた。フィールドワークから創造的にモノを作るまでの過程を詳細に説明した。 »»

  • 11:37  民族誌と反復的プロトタイプを繰り返して創造的なモノを作る。デザイン思考はこのプロセスをしっかりと実践しながら、社会における具体的な問題に挑戦することが出来る。複数のペルソナがお互いにコミュニケーションしながら問題を解決する現場を分析することが出来るからだ。 »»

  • 11:39  そうした分析をへて、発想の基盤をつくる。そのあとは、それを忘れるくらいに自由にいろいろな発想を繰り返す。そこからコンセプトを作り出す。そのコンセプトは作り手が主観的に作ったものなのでもう一度現場に戻してみないとその妥当性が解らない。その最初の作業が寸劇である。 »»

  • 11:41  寸劇をみて、だれもがこれでいいね、と納得したときに、メンタルモデルが検証されたとGoal directed methodでは呼ぶ。ここを目指して何度も反復開発を繰り返すのである。まずはペルソナとゴールを決めることがお昼までの課題だ。昼食後プレゼンテーションを行う。 »»

  • 12:46  ワークショップ中。グループ毎に進捗状況が違うが昨日フィールドワークに同行したグループBの出来が半端ではない。粘土で作ったモデルで人形劇を始めた。neurological physiotherapyのリデザインをデザイン思考で行う。素晴らしい。1時までにどこまで仕上がってくるか。 »»
  • 13:42  コンセプト発表は1時の予定を2時に変更。コンセプトが出来てるBチームはスケッチとプロトタイプ作業を始める。残りのチームは頑張って仕上げよう。時間があればという声が出始めたが、TAにコンセプトの切れ味を保つには時間を掛けては駄目、アイデアは閃きなのだから、とハッパを掛ける。 »»

  • 16:53  コンセプト発表プレゼンテーション。Aグループ。初老のストリートシンガーが公共交通を利用するところを調査。シンガポールには各所にハンディキャップのシンガーがいる。歌って生計をたてている。彼らの目から見て、公共交通の利便性を考えてみる。 »»

  • 16:54  Bグループ。神経学的理学療法を自宅で行う。調査したリハビリの文化モデルは病院なり施設に週1回かよって、あとは自宅で行うというもの。家庭で出来るコンセプトを考える。コストカットにもなる。良くできている。あとはどのようにappropriateなデザインが提供できるか。 »»

  • 16:56  Cグループ。大学構内のバス停留所を調査。待ち合わせをして多くの本や雑誌や鞄をもって乗車する学生を観察して、また実際にも持ってみる。4人から6人の小型の車で目的を解決できないか?アイデアはいい。どのようにシステムをデザインするかが問題。プロトタイプ主義で考えてみる。 »»

  • 16:59  Dグループ。公共交通の使い勝手の調査。だれがおもにつかっているのか。小規模金融でお金を回収する役割の老人をペルソナにする。名前は最初Tangさんだったが、フィールドワークで出会った人の写真はどうみてもマレー系だというので、Aliさんへ。このあたり多民族国家。 »»

  • 17:00  Eグループ。NUSにおけるエンジニアリング教育の再デザイン。まあテーマはありきたりだが、NUSは立派な大教室がいくつもある。そこで教授から「知識」を伝授され、あとは課題をこなしながら勉強していく。どんどん授業が進むのでわからなくなり、面白くなくなる。 »»
  • 17:01  フローモデル、シークエンスモデル、アーティファクトモデル、物理モデルと分析がすすんで、ペルソナをたててきた。だが、文化モデルは?つまり講義で知識を伝達して、それを繰り返しのドリルで身に付けるという文化モデルと実際の学生の生活や興味が一致していないのでは?と質問。 »»

  • 17:03  ある程度分析が出来るようになると、人々がシステムの中で適応して自然だとおもってある種の行動のパターンを発生させている現象が理解できるようになる。そうなった段階で必要になるのは、その行動の背後にある文化モデルの理解である。事態に適合しない文化モデルと現実との狭間に注目。 »»

  • 17:06  多くの人は工夫をしてしのいでいるappropriationという。問題を見つけたら、それを解決する方法を提案する。だが人々が馴染んでいる世界を壊すとその提案は普及しない。つまり新しいけれど人々にとってappropriateでなくてはいけない。ここを突き抜けるのがデザイン思考だ。 »»

  • 17:07  このように説明すると難しいが、iPodがMP3の曲を大量に整理する「ウォークマン」だったことを考えると解る。ヘッドホンで移動しながら音楽を鑑賞するというappropriationを破壊しないで、大量の音楽を自在に聴くという新しい経験を提供している。 »»

  • 17:12  合理的で論理的に構築されてある程度の効果が確認されているシステムを改善することは出来ない。多少の不都合があっても人々はそれに適応しているからだ。したがって都市問題や医療問題はそのままでは手が付けられない。これをwicked problem と呼ぶ。何度か書いた。 »»

  • 17:14  wicked problemを解くためには何度もトライ&エラーをしなくてはいけない。論理的分析的な作業ではなく、創造的なプロトタイプ作成作業のみが難しい難問を解いていくことが出来る。したがって、文化モデルをしっかりと理解して、人々のappropriationも理解する。 »»

  • 17:17  そして、問題点を解決する方法を人々の日常世界に着地させるためにデザイン思考を活用するのである。そんな話をしてコンセプト発表会の総括とした。次は第一回目のスケッチの発表。つくる全体像が見えたら、そこからキモになるような場所を抽出して、作ってみる。納得がいったら寸劇で語る。 »»

  • 19:38  5時30分から今日の最終プレゼンテーション。ダンボールを使って実サイズで。グループAは公共交通のバスをつかってハンディキャップをもった音楽家が移動できるようにというプレゼンテーション。新しい都市交通と移動手段へのスコープを持とう。 »»

  • 19:39  Bグループはダンボールをつかって新しい理学療法システムの提案。もうかなり完成していて、ステークホルダーの分析とビジネスモデルの分析をしてデザインにさらに反映させるようにということで。 »»

  • 19:42  グループCは大学内のバス交通への代替案。学生がバスを使っている方法のままあたらしい交通手段の提案。これはおもしろい。基本的には大量の機器を分散的かつ自律的に制御する。その方法を考えよう。 »»

  • 19:44  グループDはシンガポールのタクシーシステムへの代替案。シンガポールの公共交通システムは充実している一方で利用者への負担も大きい。必要なときに必要なサービスを提供するための新しいシステムを必要としている。そこまでスコープを広げる必要がある。こうした挑戦が実際に出来るのがおもしろい。 »»

  • 19:45  グループEはDCCの先生達が中心。知識の伝達から実践能力の育成に高等教育が変わっていくときにどうすればいいのか。いくつかのアイデアのプレゼン。カリキュラムを変えていくところに注目してそれに必要なデバイスも考えてみると言うことで。シンガポール大学の特徴の大講義室を活用する案。 »»

  • 19:47  アイデアをより大きなスコープにつなげて、意味のあるデザインを提案する。モノのデザインでもシステムのデザインでもなく、融合したところにしっかりと焦点を当てて、いろいろと考えてみる。 »»