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2011年6月30日木曜日

我が音楽室はアナログ復活に向かう

  • Wed, Jun 29

  • 13:46  今日は午前中ゆっくりと音楽室整備。アナログのミキサーAllen&HeathZED24)を復活し、録音は最後の最後にリニアPCM(SONYPCMD1)で。アナログミックススしてからデジタル非圧縮録音。練習用にはiPad2からiRealbで調やリズムなどかえて卓に入力。

  • 13:51  実際の録音をするときはいまのところCD音源しかないが、ここはしばらく我慢。ですこし録音をしてみた。音圧を高く録音できるので良い感じ。意外にCDの録音の善し悪し、CD再生装置の性能などが気になる。今使っているTASCOMのスタジオ用が意外に音が薄っぺらくてだめだ。

  • 13:53  いまどきCDプレイヤーとかで音質をきにしているのはあるのだろうか。いずれにしてもなかなか良い感じ。マルチトラックをアナログでという贅沢はさすがにできないのが、音とCDのミックスをアナログで行うときにミキサーをつかうと、こまかく調整できて音圧を高くとれて良い感じになる。

  • 13:56  マイクプリアンプとかエフェクターとかつなげてみたくなるね。iPad2ApogeeOneGaragebandでかなりのことが出来る。そのあとはアナログの録音環境。ここまで書いてきてアナログの4チャンネル録音くらいはしたくなった。さて仕事に戻ります。2時から出版社と打ち合わせ。


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2011年6月23日木曜日

情報環境を取り込んだ21世紀の「建築」へ

  • June 22

  • 11:03  20世紀の建築の歴史を振り返ってみると、本当に建築のいや建築家の世紀だったと思う。思想も美学も技術も社会的使命も大学院における教育方法も実によくできている。20世紀建築を可能にした技術はすでにその使命を終えている。

  • 11:07  情報環境を取り込んだ21世紀の「建築」とどのような思想と美学と社会的使命感をもつのか、そしてその教育方法は?MITの故ビル・ミッチェルが試行錯誤した世界とは違うはずなのだ。コンクリートと鉄とガラス、エレベータとエアコンと高速道路。僕らの生活はこうした設備に囲まれている。

  • 11:09  だが、こうした固い環境の中で人間のモビリティとコミュニケーションをより豊かなものにすることは出来ない。もちろんむき出しの自然には戻れない。20世紀都市の遺産を活用しつつあたらしい環境を「建築」していかなくてはいけない。これってジオ・ポンティやソットサスが考えてきたことだ。

2011年6月20日月曜日

ジャズ的日常 2011年6月

  • Mon, Jun 06

  • 06:29  おはようございます。今日は気持ちの良い朝ですね。午前中少し『デザイン思考と経営戦略』第5章の執筆をして、10時30分KMDメディアファニチャー戦略会議、1時KMDお客さん訪問、3時30分から5時30分まで大阪イノベーションクラブ戦略その他。

  • 06:32  今日は6時から麻布十番で4名で夕食。そのあと8時過ぎからジャズ。六本木IZUMIへ。深山エダさん(VO)のライブ。ピアノは緑川愛ちゃん。合間に4名全員が歌ったり演奏したりと楽しむ予定。楽譜準備しなくちゃ。

  • Sun, Jun 05

  • 12:47  今日はバーベキューのセットを水洗いしてシーズンに備えようと思っているが、夕方は雨かな。ホースや散水装置などを買ってきたがTakagiという会社の製品がどれもしっかりとしているね。感心。ゴーヤの棚をつくって、あじさいに水をあげて、夏にむけて庭作業。

  • 19:31  スーパーナニワ屋で、3センチ厚の豚ロース300グラムを3枚入手。今日はオーブンで焼く。庭からとったローズマリーとニンニクと塩と胡椒と白ワインを混ぜてもみこみ15分まつ。それから200度でしばらく火が通るまで。

  • Tue, Jun 07

  • 07:53  今日はこれからKMDへ。9時からVIP訪問。稲蔭さんと。10時45分から2こま続きでメディアデザイン基礎の最終発表。そのあと8時過ぎまでミーティング。今日はなかなかタフな1日。

  • Wed, Jun 08

  • 13:51  軽い風邪をひいたので協生館1階の診療所に。綺麗で気が利いているレイアウト。サービスも丁寧。しかし、患者がいない!!僕一人。となりにベネッセがあるのに小児科がないとか、「慶應」の名前が出てないとか、いろいろ難しいところがあるんだろうけどもったいないね。となりの調剤薬局で薬。

  • Fri, Jun 10(シンガポール)
  • 10:37  さて、今日は11時から稲蔭さんと一緒にあるVIPとミーティング。午後3時からCuteセンターにいるPh.D学生すべてのショートプレゼンテーションを聞いてレビュー。この時は稲見さん、エイドリアン、稲蔭さん、僕というKMDデザインの4名の教員がそろう。珍しいな。
  • 19:48  CuteセンターPhDの学生11名全員のプレゼンテーションを3時間ほどかけて聞く。学問の形を覚えるのはなかなか大変だけど、中には非常に可能性の高い学生がいて感心。これから稲見さん、稲蔭さんとCuteに現在いる教え子達と食事。
  • Sun, Jun 12

  • 12:01  今日は11時30分からシンガポールのインターナショナルスクールを訪問。どのようなポリシーで教育を行っているのか実際に見聞できるので楽しみ。夜は未定だがハイテクレストランがThe Business Timesに紹介されていたので行ってみようかな。

  • Mon, Jun 13
  • 11:32  昨日は夜は予定を変更して一人20シンガポールドルで食べ放題の火鍋屋さんに。Bugis地区。若い人が多くて相当面白かった。Albert Cafeteriaという。

  • Fri, Jun 17

  • 06:26  この二人のスーツ、ネクタイ、シャツ!!生地、柄、デザインは男の正装の鏡。愛読しているblog の発信元Experientia の社長Michele Visciola がイタリアの大統領からイノベーション賞を受けている写真。http://t.co/c50q318

  • 06:59  おはようございます。今日はKMDで9時、10時30分、13時、14時30分、16時30分、18時30分、20時30分からそれぞれミーティング。なんと詰まった日だ。
  • Sun, Jun 19

  • 05:34  「Citation Indexの使い方」のTweetsをblogに上げました。ニュートンも会長をつとめた王立協会以来、アイデアを出版し共有する引用が学問の本質です。 http://okude.blogspot.com/2011/06/fri-jun-17.html

  • 10:14  ゆっくりした日曜日。午前中は21日のメディアイノベータークラスの準備。午後は時間があればジャズ練習。両親の家を訪ねて、その後銀座へ。5時過ぎに日比谷公会堂のJazz Vocal Jamboreeへ。澤田師匠の歌を聴いて、その後帰宅予定。

  • 10:32  「VR展示システィナ礼拝堂制作の思い出」のTweetsをちょっと加筆してblogにあげました。参考に。 http://okude.blogspot.com/2011/06/sat-jun-18.html

  • 15:19  火曜日の講義の準備、話の流れとスライドの枠は出来上がった。イタリアデザイン論なのでイメージを貼り付けていかなくてはいけない。明日の朝とか時間をみてやろう。

  • Mon, Jun 20

  • 09:07  おはようございます。今日は早起きをしてあしたの授業の準備。3分の2から4分の3終了。コンクリートと鉄のモダニズムではなくて、木と布のモダニズムをイタリアのデザイン100年を振り返って考えています。11時から池袋でコンサルティング、3時から6時までKMDでメディアファニチャー。

  • Tue, Jun 21

  • 09:58  おはようございます。これからKMDに向かいます。1時から大阪イノベーションクラブプロジェクト、2時45分からメディアイノベーター授業僕の担当でイタリアモダニズム。そのあとミュージックアンドサウンドプロジェクトで、おわったら三田へ。

  • 20:20  三田での会議に向かう途中で高校時代の友人二人とばったりあう。一人はコネチカット州にすんでおり25年くらいまえには時々あっていた。もうひとりは出版社の取締役でデジタル教科書なんかからんでいるので時々あうが二人一緒にあうのは38年か35年ぶり。あと一人通信社にいった仲間がいる。

  • 20:27  日吉から三田までの地下鉄のなかで目黒から乗ってきたのだが、なつかしかった。これからサントリーホールに二人でマーラーを聴きに行くといって白金高輪で降りていった。40年の付き合い。慶應高校から文学部に進学した数少ない仲間。再開してみるとそのまま昔に戻るから不思議な感覚だな。
  • Wed, Jun 22
  • 09:59  おはようございます。今日はシンガポール行きでちょっと滞ってしまった『デザイン思考と経営戦略』第五章からの清書を続けて、3時にお客さん。プロトタイプをつくることが事業戦略になるとは?5時赤坂でアーバンメディア打ち合わせ。だいぶ概略が見えてきた。夜は久し振りに遊びに行くかな。

  • 10:19  Paul Dourish10年ぶりの新著Divining A Digital Future Mess and Mythology in Ubiquitous Computingが届く。Genevieve Bellとの共著。これは読まねば。奥出研究室博士課程学生と緊急輪読会しよう。
  • 11:24  (誤字があったので修正)今週の土曜日は学芸大学のAtrainでセッション。友人が仕切る。まあいつものメンバーが六本木から場所をかえるだけって気もするが、凄腕の女性プロボーカリストも来ることがあるので、それもたのしみ。自戒をこめてセッションは継続が大事。

  • Thu, Jun 23

  • 12:54  RT @_anohito: 人間の頭の善し悪しはアポイントメントの取り方で決まる.ダメなやつはアポイントメントとれないんだ,

  • 12:55  RT @koso: 日経にも。RT @nikkeitter ユニクロ、ジル・サンダー氏との契約終了 http://s.nikkei.com/jQzgaE #nikkei

  • Sat, Jun 25

  • 14:38  ジャズレッスンから帰宅。4ビートをしっかりと覚えた後で2ビートは結構大変。すこしわかってきた。ジャズマンがボサノバに出会ったときに興奮した理由が分かるね。格好いいさわやかさの奥にビートのうねりというかグルーブがある。来週はOne Note Samba終了予定。
  • Sun, Jun 26

  • 17:04  いいねえRT @DSKishikawa: コトを成すためにモノを創る。RT @ryokashiwagi: 「こと」が重要になって来たからこそ「もの」のクオリティーも最重視する必要があるんだよね。「こと」だけでは、なんか薄っぺらく感じる。

  • 17:25  江古田ソルトピーナッツに移動中。友達のアルトを聞きに行く

  • Tue, Jun 28
  • 09:08  おはようございます。今日KMD授業4時限目メディアイノベーター科目はカーレーサーの井原慶子さんのお話です。http://ameblo.jp/iharakeiko/ 国際レースで活躍した経験をたっぷりとお話ししていただきます。お楽しみに。

  • 09:15  なんと、原点とはこういうことか。恐れ入りました。RT @BruceTurkel: LIttle Richard 15 years before Tutti Frutti. http://t.co/XXD3bsU


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2011年6月19日日曜日

VR展示システィナ礼拝堂制作の思い出

  • Sat, Jun 18

  • 08:55  凸版印刷の本社に併設されている印刷博物館に250インチのスクリーンのVRシステムを使ったシスティナ礼拝堂展示がある。各国のVIPから日本企業のトップまで様々な人がみたコンテンツである。10年前に僕が直接プロデュースをして故若桑みどりさんと一緒に作ったものである
  • 08:57  10年少し前に大型のVRコンテンツを作ることに夢中になった時期があり、慶應大学ではグーテンベルクの聖書、NTT研究所とは厳島神社と能、凸版とはシスティナ礼拝堂をつくった。どれもコンピュータ設備だけで5億とか8億円かかり、贅沢なしかけだ。

  • 08:58  研究とはおもしろいもので設備が先端的でお金がかかるとそれだけの理由で研究費がついたりする。いまだと高性能のパソコンくらいの性能だが10年ちょっと前にはその性能のコンピュータが一台2億円も3億円もした。このような高性能のコンピュータを複数台使って文化財のデジタル展示に使った。

  • 09:00  機械を維持するコストも高いので、慶應大学の展示もNTTの展示も研究の終了とともに破棄されたが、凸版のシスティナ礼拝堂はその後10年にわたって多くの人が見ることとなった。プレゼンテーションの最後に僕の名前がプロデュースと監督で出てくるので、知り合いが見たときにはびっくりして連絡をしてくる。

  • 09:05  3次元コンピュータグラフィックスをつかった文化財の保存展示はいまでも盛んだが、僕が制作の指揮をとったシスティナ礼拝堂はこうしたデジタル展示とは根本的に違う特徴がある。それはこの展示をみると感動することである。イタリアやバチカンからのVIPも中国からのVIPも胸を詰まらせた。

  • 09:07  印刷博物館のシスティナ礼拝堂が人々の琴線に触れることは最初から観察された現象だった。その理由をコンピュータグラフィックスの精度(当時の)にあると考えてその後いくつも文化財のデジタル化が試みられたが人を感動させるモノにはならなかった。そのあと現在多くのVR作品が文化財修復の専門家と共同しているが結果は同じだ。

  • 09:09  どれもが人々の心を打たなかった。技術を高め修復の専門家と相談しながら幾つもの作品を作り続けるが、所詮デジタル複製に留まった。10年経っていまや古びた機械で再現されるシスティナ礼拝堂はやはり心を打つ。今回最新の機械でもう一度作り直すことになり、その報告を凸版から受けた。

  • 09:12  凸版から受けたと言っても担当はSFC奥出研出身の卒業生である。感動の秘密は実はストーリーテリングにある。ここに時間をかけないと実は修復の専門家が納得したり、博物館の学芸員が自己満足したりするレベルに留まる。このことはここ数年何度も凸版に言っているのだが、技術に走ってしまう。

  • 09:13  まあこれは凸版に限ったことではなくてMITミケランジェロの彫刻をデジタルで再現したときもどこまで細部が再現されたかという技術の話だった。それはそれとして、技術を駆使して再現したら感動するかというとそんなことはない。システィナ礼拝堂にこめられた物語を経験すること無しに涙はない。

  • 09:17  だがこれはハリウッドなどの物語テクニックを駆使して見せると言うことでもない。もっと本質的なものである。そもそも文化財は近代的な絵画や彫刻として存在しているわけではない。そのものと文化や宗教が深く絡み合っている。文化財自体が3次元的な存在ではなくて歴史や記憶のなかにあるからだ。

  • 09:19  システィナ礼拝堂のデジタル化をおもいたったのはバチカンの図書館でグーテンベルクの聖書のデジタル化の実験をしている風景を視察に行ったときである。小耳に日本のテレビ局がシスティナ礼拝堂の修復に関わり、そのデジタル化の権利ももっていると聞いたからだ。そこで凸版と相談して制作を開始した。

  • 09:23  3次元グラフィックスをOpenGLでプログラミングする担当は慶應の工学部、高精細で写真フィルムをとりこみ、レタッチしていく担当は芸大の出身で、そのほか何名か俊英をそろえた。当時の水準で最先端を目指した。だが、一番注意したのはシスティナ礼拝堂とはなにかが解る仕組みである。

  • 09:25  日本語で何冊も礼拝堂の修復に関する本が出ていた。それを片っ端から読んで故若桑みどりさんの本にであった。読んだとたんこれだと思った。文章もさることながら、ミケランジェロの気持ちが伝わってくる。そこで若桑さんにお会いした。そして意気投合した。

  • 09:27  何度もお話しするうちに、ミケランジェロがフレスコ画を書き上げるスピードを意識して、彼の気持ちの物語が進行して、その一方でキリスト教の礼拝堂としての構造がわかるようにした。さらに若桑さん自身のシスティナ礼拝堂への気持ちもサブストーリーとして組み込むことにした。

  • 09:28  物語をナレーションで語るのではなくて、イメージの連鎖クローズアップ音楽との連携光の変化などで物語を展開できるようにした。またには徹底してこだわった。若桑さんは美術評論家であり色についてかなりしっかりとした意見を持っている。さいわい僕はその話しについていけた。

  • 09:31  制作をしながら物語をきめ、インタラクションとして埋め込み、その成果を若桑さんに見せて意見をもらい、それを制作のメンバーが理解できる技術へと僕が変換する。この作業を何ヶ月にもかけて行った。そして出来上がった。それを見せたときの取締役の反応は「よっている気がして気持ち悪い」。

  • 09:34  つまりVR酔いだ。だが、僕は確実に若桑さんの語る物語をイメージの連鎖で感じることが出来た。いつも若桑さんが話すわけにはいかないので簡単なシナリオを作ったが、ちょっと勉強してもらえばだれでも説明できるようにした。そして常設の展示を始めたのだ。

  • (追加)若桑さんは作るときに誰がこの作品を見るのか、について思いを語られた。彼女は美術館の説明が無知な庶民をヨーロッパ芸術を学んできた専門家が啓蒙するような語り口(ディスコース)は意味がないと述べた。ちなみに現在の美術評論はほとんどがこのディスコースである。ヨーロッパ美術の専門家が日本人を啓蒙する視線だ。彼女は言う。ヨーロッパに長年駐在しているサラリーマンやその奥さん達はたっぷりと美術館で本物を見ている。その感受性にこたえるような作品にしたい、という。
  • 僕も常々そう思っていたので、賛同した。蘊蓄ではなくて、VR作品の表現力そのもので勝負しようときめたのだ。技術的制約の中でいろいろとこころみた。ミケランジェロのブルーを再現するときに何度も何度もやり直したことが懐かしい。
  • さて、凸版はシスティナのあと幾つもの作品を作る
  • 09:38  そしてこれらをVRシアターで展示を続ける。すでに10年以上続けており、相当のノウハウもたまった。VR技術もだいぶこなれてきて制作のコストも下がった。寺院が修復にはいるときに修復終了まではVR展示をするということも行われるようになった。

  • 09:42  だが、僕が若桑さんと凸版のエンジニア達と時間をかけて物語を作りだしたような作業は行われていない。今回システィナ礼拝堂を新しくするに当たっても物語の仕組みは継承するという。人の心を打つのは物語である。だがそれはエンジニアとともにつくらないとシステムには組み込めない。

  • 09:46  物語とCG技術を結びつけるのはインタラクションだ。そしてこれは明らかに新しいメディアを創造する作業なのだ。(この項 完)
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2011年6月18日土曜日

Citation Indexの使い方


  • Fri, Jun 17

  • 18:12  Citation Indexの使い方:博士論文を書くための作業のうちliterature review に関して少し方法を話しておきたい。必要な論文や本が集まったらreviewをするわけだが、「必要な」論文をどのように探すのだろうか。普通の検索では不十分だ。

  • 18:14  僕が博士論文を書き始めた30年ほど前にはリサーチライブラリーというものがしかるべき大学にはあり、そこにリサーチライブラリアンがいて調査の手伝いをしてくれた。そのときの武器はなんといってもCitation Indexである。誰がどのような本や論文を引用しているかが解る。

  • 18:16  人間が何かを研究するときに何を参照すればいいのかはひらめきであって、上手に参照文献をそろえていくことが研究の作法である。Citation Indexが膨大な巻数の書籍となり書棚にそろえてあるさまは壮観だった。図書館に何時間もこもってIndexをつかって論文を探す。

  • 18:18  実験室での発見にも似て、図書館で思いもよらない、でも本質的な論文を探すのはセレンディピティの極みであり、とても楽しい作業である。固定的なSubject検索ではわからない知の広がりを感じることが出来る。このサービスはCDとなり、いまではWebで活用することが出来る。

  • 18:22  慶應であれば図書館のWebにアクセスをして、調べる/探すの項目の中でデータベースナビをクリックして、Citation Indexで検索するとWeb of Scienceにたどり着く。どのように使うか詳しく説明してある。時間をかけて探索していると大体使い方が解る。

  • 18:27  コンピュータ化されて引用の頻度とか著名な学会誌の論文で多く引用されている論文などが解るようになり、学者の研究評価につかわれたりして、なんとなく世知辛いが、この仕組みの面白さはそこではなくて、知の意外な結合や結合の連鎖の広がりにある。これを楽しみ、質の高いビブリオグラフィーを作る。

  • 18:28  さらに自分が尊敬する研究者が見つかる。するとその人の著書をあたり、そこで紹介されている文献を調べる。それを最近引用している研究者を捜していく、という方法でCitation Indexは使う。頻度が高いことも大事だが、何がどのように研究されてきたのかが一目瞭然になる。

  • 18:30  知の冒険をアシストしてくれるのがCitation Indexなのである。いまではその結果を整理してくれるビブリオグラフィー作成のソフトウェアも充実している。自然科学、社会科学、人文科学の論文を縦横に調べてくれるのだ。非常に楽しい。アカデミズムの第一歩は知の連鎖を経験することだ。

  • 18:31  一週間ほどかけて丁寧に自分の知的好奇心のおもむくままWeb of Scienceを使ってみよう。そして気に入った論文を文献整理ソフトにためていく。そのうちに自分の行おうとしている学問領域の水平線が浮かび上がってくるはずだ。そして見上げれば知の星座が見える。ここから研究を始める。
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2011年6月16日木曜日

シンガポール言語事情 家庭編

  • Wed, Jun 15

  • 10:51  シンガポール最終日。10時30分クレメンティの駅で瓜生君と待ち合わせ。銀行などの作業を行う。その後NUSでいくつか作業。Cuteの博士課程の学生の相談にも対応。夕食はNUSデザインインキュベーションセンターの友人と。

  • 17:35  今晩の夕食は、・・・or cold crab with braise duck?と聞かれた。たまらないなあ。楽しみ。
  • 07:41  チャンギ空港シンガポール航空ラウンジ。これから帰国。

  • 07:44  昨晩、友人と食事。彼の先祖(?)の出身地の中華料理屋さんで。姉たちと来るとお店の人にあれこれ注文を大きな声でつけて恥ずかしいと。そのくらい日常で利用しているということ。ファンシーな店ではないがワインのコレクションが半端ではない。セラーもしっかりしていて、店主の好みだと。

  • 07:45  彼は今年の9月から小学校に進学する娘がいる。彼女は英語ではなす事を好んでいて、このまま英語でいくのだろうなと。僕かその少し上くらいの世代で交流がある人たちは母語が中国語で中国文化を継承している。大学はイギリスやアメリカをでている。

  • 07:48  子供は大学を出て就職を始めたくらいだが、この世代はかなり英語が流暢で、一方中国語は普通に話せるが、歌とか小説とかを味わうレベルではない。コミュニケーションには使えるが文化をあらわしている言葉ではないと言われたりする。この世代から英語で小説やエッセイをかく人たちも登場している。

  • 07:50  だがその次の世代、いま小学校にはいるか幼稚園に通っている世代からは急速に中国語が消滅している。シンガポールが豊かになり快適な暮らしをする一方で母語が変わりつつある。いまの大学生くらいまでは母語と公用語としての英語が共存しているが、その次の世代は英語がドミナントになっていく。

  • 07:52  一方で中国の力が増大するにつれて普通話(マンダリン)の必要性も予見できる。授業で中国語があり両親もあまり中国語に自信がないので塾が幅を利かせているが、普通話を公用語にするという政策は非常に難しいという。国はその方向に向かっていこうとするが、その一方で民族間の平等がある。

  • 07:54  いま中国語を2番目の公用語にするとやはり中国系シンガポール人が得をする。なのでこの政策を積極的にすすめることは難しい。人間の生得的な能力に依存しつつも社会システムと根本の所でかかわっていく言語を巡る意志決定は非常に難しい問題がある。

  • 07:56  かつて僕の師匠の一人である社会言語学者の鈴木孝夫氏は日本人が海外に駐在すると安易に日本語をすてて、子供は英語が母語になっていく現象を中国人の中華思想つまり母語にこだわる姿勢と比較したことがあるが、シンガポールにおいては母語としての中国語が弱まっている。

  • 07:59  もちろん文化伝統はそんなに簡単には消滅しない。シンガポール国立大学は中国文化研究の中心に将来なっていくだろうという予感はある。また政治的に有声になっていくのは中国語でも普通話であって、中国語には広東語福建語もある。またアジア人が英語で書くモダンな小説もかなり面白い。

  • 08:02  文化的には「不器用に」複数の言語を使い分けながら文化表現の可能性を探るモダンな試みも面白い。国際的な活動をする会社や団体でコミュニケーションの手段として使われている英語はかなり国際化して特定の文化の縛りから自由になってきている。今後20年言語をめぐるアジアの現象は目が離せない。

  • 17:27  成田エキスプレスで帰宅中。
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2011年6月14日火曜日

グローバルニッチ企業が生き残るには

  • 6月8日水曜日

  • ある分野で圧倒的に世界一の会社から相談をうけている。ある素材で世界一なのだが、いまは良いが、先が見えている。その素材を使うビジネス自体が展開しなくなっているからだ。そんななかでどのように生き残っていくか。

  • 13:53  1時から秋に行うコンサルティングの打ち合わせ。9月から。オーナーである会長はイノベーションをしたい。60代の取締役は変えたくない。業績はこのままではじり貧。特命をうけた部長と案を練る。仕事の環境を変え、未来のビジョンを与え、前向きな仕事への取り組みの態度を育てる。

  • 13:56  これってKMDのリアルプロジェクトと似ているね。一昨日相談を受けた会社も同じような悩み。技術も人材もある意味お金もある。ないのは希望と自信と創造性。高等教育の役割も見えてくるね。出世や生涯収入などの功利的な目的ではなくて、自分の力で自信をもって幸せに仲間と生きていく為に必要。

  • 13:58  何を作りたいかはっきりさせて、誰に売るのかも明確にする。これってビジネスだけど、人生をどう生きるかにもつながっていく。どう作るか、どう販売するかを考えると組織運営の問題にも突き当たるし。世の中はイノベーションを待っている

2011年6月13日月曜日

スマートデバイスとクラウドの時代へ

  • Sat, Jun 11

  • 13:10  1980年にパソコンの存在を知り、1981年にAppleIIを買い、その後様々にパソコン遍歴を重ねてきた。このあたりは、「デジタル環境あれこれ」 http://okudenao.exblog.jp/13099789/ に詳しく書いた。

  • 13:13  30年続いたパーソナルコンピュータの帝国が終わろうとしている。PCの次は何か、これはここ何年かのデジタル業界での大きなテーマであり、僕も何社かとPCの次を探るための調査やプロトタイプの制作を行った。おもしろいことに、振り返ってみると、クライアントは違ったものの結論は同じだった。

  • 13:15 スマートデバイスとクラウドである。だがこの二つを一つのものとして意識することが難しいため、経営陣は意志決定が出来なかった。ネットワーク側がある程度解るクライアントは高性能のサーバーを作ろうとする。端末側が解る会社はネットワークの価値が心から解っていない。解っているところとそうでないところで最近勝負が付いてきた。

  • 13:21  FTのComputing Outlookというコラム(6/11/2011)から抜粋してみよう。電話からテレビまで機器を「スマート」にしようというアプローチがある。スマートな端末はクラウドの情報にアクセスする為のアクセスポイントとなる。この視点からポストPCを考える。

  • 13:27  ポストPCとはPCがなくなることではない。PCが浸透することが出来なかった領域にコンピューティングの活動を展開することである。まずはタブレットPCだ。iPadが先導するこの市場は拡大を続けている。ゴールドマンサックスは35%のPCがタブレットPCに置き換わると悲観的な予測をする。

  • 13:30  少し前に廉価版のPCすなわちNotePC が一時期PCの市場を侵食したがそれと同じを見なすわけである。マイクロソフトのタブレットPCの考え方はこの延長上にある。かたちはタブレットだが使い方はPCなのだ。インテルもultrabookというコンセプトを提示して同じ戦略を展開する。

  • 13:36  だが、PCではない、という見方をとるグループもある。このグループにとってタブレットPCはイノベーションの対象なのだ。ソフトウェア開発者はもはや特定のマシンのためにプログラムを開発しない。複数の機械をまたいで動くソフトウェアを作ろうとしている。

  • 13:42  アップルiCloudを導入して、PCを使わないでiPhoneやiPadなど複数の機器が使えるような仕組みを生み出した。PCの帝国はおわったのだ。http://on.ft.com/kkNHWg

  • 13:43  RT @yosuke5698: スマートデバイスもアプリも、全てがクラウドです。クラウドデバイス、という言葉を、そろそろ一般化させたいです。 RT @NaohitoOkude: クラウドとスマートデバイスである。だがこの二つを一つのものとして意識することが難しいため、経営 ...

  • 13:43  RT @awajiya: 当時のBUG NEWSコラム読んでたなぁ… QT @NaohitoOkude: 1980年にパソコンの存在を知り、1981年にAppleIIを買い、その後様々にパソコン遍歴を重ねてきた。このあたりは、「デジタル環境あれこれ」 http://j.m ...

2011年6月12日日曜日

シンガポール 21世紀の言語政策は?

  • Sat, Jun 11

  • 12:50  シンガポールで英語と中国普通話(マンダリン)の両方を教えるバイリンガルの学校がでてきた。EatonHouse International Schoolという。授業のすべてが英語の教師と普通話の教師のチームで提供される。幼稚園レベルではこの試みがあったが小学校では初めてという。

  • 12:54  普通話をおしえることがあっても言葉のクラスとして教えているのが普通である。EtonHouseでは授業が2カ国語で同時に行われる。カリキュラムはIBに従って作られており、多くの児童の両親が子供に中国の文化を失わせたくないという要求に従っているという。

  • 12:58  言語として教えるのでは不足で、実際に生きた環境の中で覚えていくことが必要だと言う。児童の両親の多くは普通話を話しているわけではない。さらにEtonSchoolでは幼稚園も準備しており、最初に普通話を教えて、最後の年に英語を教えるという。(The Straits Timesyより)

2011年6月3日金曜日

デザイン思考と経営戦略 2年プロジェクト終了 

  • Wed, Jun 01
  • 21:33  新規事業プレゼン終了。社長以下嬉しそうに議論してくれた。結果は聞いていないがおそらく決定。3年後にこのビジネスが始まるときに、ドキュメントとして本を出そうと思っている。それまではしばしこの件は沈黙。しかし、経営陣、よく決断した。日本からイノベーションが生まれるかも。
  • Thu, Jun 02 

  • 09:22  昨日の某社の新事業プレゼンテーションは2週間前から追い込みの準備には入り、事務所と大学の研究室でそれぞれ3時間近いレビューを行い、それをうけてたっぷりと時間を使って無我夢中で準備をしていた。本気で最後の指導をしたが、それをうけてタマを返してきたメンバーも立派。

  • 09:23  イノベーションとマーケティングは微妙な関係にある。iPodを生み出したのはイノベーションだが、iPodminiとかnanoなどはマーケティングだ。市場をイノベーションで生み出すと、その周辺には様々な可能性がある。そこはしっかりと拾わなくてはいけない。マーケティングが大事な理由だ。

  • 09:26  だがイノベーションは違う。ゼロから1にする。新しい顧客を創造するのだ。結局は哲学あるいはニーズを見つけることにナルのだが、顧客のニーズは表面から隠れている。観察しても質問しても得ることが出来るのはヴィジョンあるいはウォンツだ。ウォンツが解らなければ始まらない。だがその先がある。

  • 09:28  ウォンツをあるいはビジョンを具体的な形やサービスとして作ってみる。そして顧客のところに持っていく。そこから本当のイノベーションが始まる。ここで顧客の民族誌を書くことが出来るか、がポイントだ。顧客がいて仮説的なウォンツがある。だがそのコンテキストには様々な人が関係する。

  • 10:42  この関係性のコンテキストの中で顧客の「ウォンツ」が顕在化しているのだが、このウォンツの背後にあるニーズあるいは哲学を顧客が意識していることは先ずない。状況に適応して問題をその場で解決する方法を生み出していることがほとんどだから。このもつれをほどかなくてはいけない。

  • 11:02  ほどく方法はいろいろあるし、人によって向き不向きがあるから画一的にこのプロセスでとい言うわけにはいかない。だが、ほどけたあとは明確なニーズが見える。ニーズ先行でこじつける開発ではないところがポイントだ。このように見つけ出したニーズとウォンツを組み合わせると、アイデアが生まれる。

  • 11:09  地球を救えとか、発展途上国を支援しよう、というプロジェクトが難しいのはニーズが先行するからだ。メディカルのプロジェクトも、うっかりするとそうなる。いま欲しいもの必要なモノ、つまりウォンツを探していく。だが目の前のウォンツにしたがって商品やサービスを解決しても駄目である。

  • 11:15  多様なウォンツの中に隠されたニーズをみつけたときが勝負だ。僕の言葉でいうところの哲学とビジョンが適切に組み合わされたときである。そこが出来てくると次はアイデアをつくる。そして最初のコンセプトを作る。それを簡単なプロトタイプにして顧客に使ってもらう。

  • 11:26  このあと、非常に集中力が必要となる。スケッチブック一冊を使い来るくらいの作業が必要になる。スケッチは鉛筆でもダンボールや紙粘土でも、電子工作でもよい。ここの量が非常に大切である。この作業をおこなわないとちからのあるコンセプトは生まれない。さらにフィールドワークを繰り返す。
  • Fri, Jun 03
  • 05:47  フィールドワークを繰り返すうちにインフォーマントとのラポールが深まる。ここが民族誌を活用してデザインを行うところの一番の醍醐味である。顧客を参加させるデザインはラポールが成立していない限り意味がない。

  • 05:49  それはデザインするものがインフォーマント(潜在的顧客)のメンタルモデルを反映している必要があるからだ。メンタルモデルを調査者もインフォーマントも意識することは出来ない。観察記録を分析して「解釈」するしかない。観察する対象が複数のステークホルダーを含んでいるとそれは非常に複雑。

  • 05:52  なので何度も作っては現場に持っていって試す。試してインフォーマントに意見を聞く。この繰り返しが参与型デザインである。ここでQ&Aを持ち込んではいけない。それを繰り返しているうちにデザインしたメンタルモデルがインフォーマントの持っているメンタルモデルと一致する。

  • 05:54  この瞬間がメンタルモデルが出来たときである。複数の人間が関わり、インタラクションを多用する現在の商品開発が必要とするメンタルモデルは簡単な形をしている(これがメンタルモデルの条件)が非常に複雑でダイナミックに変化するコンテキストの中に存在している。

  • 05:56  これが見つかればあとは、何をどのように説明していくかを普通に論理的に説明すればいい。企業相手にデザイン思考のコンサルティングをしていて、クライアントである企業のメンバーをここまで追い込むことはあまり出来ない。

  • 05:58  だが、今回のプロジェクトでは、社内にプロデュースを担当する別会社があり、一連のコンサルティングが終了した後、もう一押しするように依頼されて、2回特別のワークショップをした。その結果、見事にメンタルモデルを見つけ出した。

  • 06:00  メンタルモデルはインフォーマントの中にあるが、それを作ったデザイナーのものでもある。したがって、インフォーマントとデザイナーの共同作品だ。このようなレベルの高いメンタルモデルができると、インフォーマントが積極的に参加してくる。喜んで写真やビデオに写ってくれる。

  • 06:02  コンセプトらしきモノが出来てからメンタルモデルを内在している本物のコンセプトになるまでの道には厳しいものがある。だがそうして出来たコンセプトをもとした製品やサービスは「生きていて」それをつかって生き生きとした物語を作ることが出来る。それを聞いた経営陣は安心して意志決定出来る。

  • 06:04  さらにセールスピッチのプレゼンテーションと決定的に異なるところがある。こうしてつくったコンセプトを聞いて、技術開発担当の役員が「これは僕が作りたい」と発言して、早速頭の中で製品の設計を始めた。どのような展開になるのかイメージできたためだ。デザインが企画になり設計になった瞬間だ。

  • 06:06  そして企画提案者自身が登場人物になっていたところが素晴らしい。ペルソナを作ってシナリオを書いて作業を進めていくのだが、そのうちに登場人物と自分が一緒になっていく。インフォーマントとの生活世界が構築されて、そのなかでデザインしたものやサービスが展開するシナリオが生まれる。

  • 06:09  このようなイノベーションの企画を無事立案したチームを見ていて、ゼロから一にする最後の一押しをすることの必要性を感じた。デザイン思考を経営戦略に位置つけるには、マネージメントの問題が非常に大事なのだなあと痛感した。人間がもっている創造力を信頼してブレークスルーまで諦めない。

  • 06:11  これからまだまだ開発のプロセスがあるので今回のプロジェクトがビジネスとして成功するかどうかは予断を許さないところがある。だが無事開発が出来れば、近いうちに市場に画期的な製品が投入されるはずである。

  • 06:21  おまけ:メンタルモデルはすでにある製品やサービスを分析して見つけることも出来る。もうずいぶんと前だが、NTTの研究所のあるひとがP2Pを基本とした新しいネットワークシステムとサービスの発表をした。これは本にもなっている。

  • 06:23  発表後、「武蔵野の研究所で仕事が終わって、三鷹の駅で飲んでから帰ろうと思うけど、どの店が開いているか、タクシーはどう呼べばいいか、雨降るのかなあ」みたいな用途なんだけどなあ」と聞いたら「どうして解るんですか!」と答えた。結構透けて見えるんだよね。

  • 06:27  何を作るのかという問題と技術を摺り合わせるときに、技術者の世界が公共性をもっていないと、結局自分の世界にあわせてしまう。安心安全とかもっともらしい言葉がついていてもその背後の世界はその哲学と関係ないことが多い。このような開発をしてはいけない。技術に別のコンテキストを与える。

  • 06:28  そうすれば新しいメンタルモデルがうまれて、イノベーションが創発される。これは日常世界から隔離された郊外都市に研究所を持つ多くの日本のメーカーの抱える問題でもある。21世紀の開発は日常世界のなかで行われなくてはならない。コンセプトメーカーに面白い話を聞いている場合ではない。

  • 06:42  コンテキストからアイデアはでてくるのであるが、始まりは何もない。なので皆であつまってアイデアを共有する。ブレーンストーミングだ。それぞれが異なったコンテキストで生きているのでそこそこ面白い。だが5名で90分もすれば大体アイデアは飽和する。

  • 06:44  次に異なった種類の雑誌を色々読んだり、WEBサーフィン(死語?)したりして情報を集める。それを引き出しに入れる。いわゆる物知りというかそんな感じ。これも非常に大事。この引き出しからいろいろとアイテムを取り出して考えてみる。アイデアを作るための第2ステップ。これも大事。

  • 06:45  20世紀のものつくりはこのくらいのレベルでイノベーションが起きた。だがインタラクションから新しいメディアへとものつくりの領域が広まるにつれて、アイデアを作るコンテキストの拡張が広がった。インタラクションデザインのフロンティアを切り開いたクーパーやIDEOが積極的に民族誌に出た。

  • 06:48  電子機器やネットワーク端末のデザインは日常世界の観察を基本にする。これがここ10年の方法論だ。民族誌を描き、あたらしいコンテキストを獲得して、そこを基盤にアイデアを作っていく。ここが非常に大切である。社会性とか公共性とか言ってもいい。社会的大義のあるニーズを主張することではない。

  • 06:49  デザイン思考は社会性をコンテキストに持ち込むレベルで大きな役割を果たした。だがユビキタスコンピューティング、ウェアラブルコンピューティング、AR技術の発達は全く新しいコンテキストを我々に提示している。それは無意識世界である。

  • 06:51  今回OIKOSグループでの研究を選択したKMDの諸君にはこの世界まで研究対象を広げてもらいたい。ディープエスノグラフィーと呼びたい世界である。無意識の世界はいままでずいぶんと研究されているが、なんだか妙な研究が多い。それが大きく変わったのはやはりセンサー技術の進歩だ。

  • 06:54  人間が無意識に行動している現象を記録することが出来るようになった。また行動経済学のように無意識な行動を調査して経済活動と結びつける研究もだいぶ進んできた。AI的な考え方をしない認知科学の領域もだいぶ進んできた。

  • 06:55  台所から食卓、リビングルーム、オフィスから遊園地、ショッピングセンターから病院。手術室。飛行機のコックピット。人間は環境と共生して生きている。この世界をコンテキストとしてアイデアを生み出しイノベーションをすることが出来る。我々の日常世界はワンダーランドなのだ。