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2010年7月14日水曜日

博士論文工房 夏休み英語の宿題に向けての準備

  • Tue, Jul 13
  • 博士論文工房夏休み宿題にむけての準備と心構えについて
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  • 08:14  博士論文工房の学生諸君にはすこし夏休みに英語の勉強をしてもらおうと思う。その勉強の前に自習をするようにという話は、「博士課程の英語は独学で鍛える」で紹介した。http://okude.blogspot.com/2010/06/mon-jun-14.html
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  • 08:18  さて、それを各自自助努力でおこなっているとして、次の課題に進もう。僕はアメリカから帰ってきたあと岩波書店から『夢の秘法』というウィリアム・ドムホフの本を翻訳出版した。(ヴァーチャルリアリティの哲学的考察を巻末解説でのせている。ここは今でもいけるとおもうので、一読を。)
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  • 08:20  ところが原稿を出したら、名編集者で後ほど岩波書店の社長にもなる大塚信一さんが「こまったなあ。これじゃあ出版できない」ということで、英文学者で名翻訳者である富山太佳夫さんに相談した。富山さんは一読して「ああ、英語が出来る人の日本語ですね。」といって訳文の書き直しを引き受けてくれた。
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  • 08:22  というわけで、この本は共訳ででている。この件は僕の翻訳術が未熟だったわけだが、実際に僕が英語を読んでいる感覚と翻訳書は大分違う。というか翻訳では英語で読んでいる感覚とちがってしまい、一方で、英語を読んでいる感覚で日本語を書くとプロが書く文章として成立しない。その理由は言葉が違うとしか言いようがない。英語で理解している僕がいる。それを日本語では表現できない。
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  • 08:24  だが、これは「英語で考えなさい」という話とは大分違う。僕自身はバイリンガルではない。だが、英語を読むテクニックを持っていることはたしかなのだ。これをcritical readingという。博士工房の学生には夏休みにこの方法を理解だけではなく身に付けてもらいたい。英語がネイティブでもこの技術は必要。
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  • 08:28  まずは形から入ろう。辞書を買おう。前にも書いたが、単語を増やす為なので、電子辞書ではいけない。意味を確認するなら英辞郎で大抵は十分だ。単語の増やし方はまた説明するとして、英和大辞典、英和中辞典が必要である。受験勉強用になっていない研究社のものにしよう。大人だから革製。(Blog最初の写真を参考)
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  • 08:32  英英辞典はPOEDPOADをそろえる。意味がずばっと書いてある。あとLongman Essential Activator。このあたりは英語の達人斉藤兆史さんのお薦めである。そして単語帳。APICACD10WN。これにつきる。APICA社は知的ノートを大分出しているな。
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  • 08:34  教科書は「博士論文工房 本格指導開始」http://okude.blogspot.com/2010/06/sat-jun-12.htmlでも紹介したが、The New Media Reader(MIT,2003)を使う。実はここがポイントなのだ。
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  • 08:36  インタラクションデザインやデジタルメディアの世界はエンジニアリングの論文と哲学というか文化論的な論文がでている。この世界の流れを変える論文はエンジニア論文としては発表されない。というかそのように発表することは不可能だ。そして、それを我々は翻訳でよんでいる。ここが致命的なのだ。
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  • 08:39  このことは僕の師匠である慶應大学名誉教授の鈴木孝夫氏が『新・武器としての言葉』で、自然科学では情報は書物の中で独り立ちしているが、社会・人文科学では全く違う。この分野ではそこに書いてあることだけではなく、書いてないことがだいじなのだとのべている。
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  • 08:42  (本や論文を)「書いた人が依って立つ、場合によっては著者本人さえ意識していない彼の文化、社会構造、価値観、そして更には世界観までを、全部暗黙の前提として含んでいるからである。書物は情報資料としては、一人立ちしていないのだ。」『新武器としての言葉』121ページ。
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  • 08:50  この感覚は斉藤氏にもある。コミュニケーションの道具として外国語を学ぶことは不可能だ、という感覚だ。達人とされる外国語使い達がもっているこの「不可能感覚」を理系の研究者は理解できない。学部を出て大学院に入って英語で論文一つ書けないとは、外国語教育がなってない、というわけだ。
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  • 08:54  道具としての英語を標榜している人も多く、そうしたカリキュラムを採用している大学もあるし、小学校から英語で教えようという暴挙もあり、これもまた英語の達人である鳥飼久美子氏などが大反対している。斉藤氏は「これは格の違いだ」と述べる。『英語のたくらみ、フランス語の戯れ』36ページから。
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  • 08:56  つまり、英語が読めるとか書けるというレベルの議論が違う、というのだ。一度奧の深い表現の世界になると、他者の言葉を使っている感覚がどんどん強くなる。だが、むしろこれは幸いなことなのだ。母語がしっかりとあり、他者の言葉が使える。この状態が好ましいことは言うまでもない。
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  • 08:59  ここに到達するには、多くの英語の達人が述べているように、日本語をしっかりとみにつけたあと、英文法をまなび(ここまでは博士工房の学生は自助努力でおこなってね!)原書の多読を中心とした語学学習を行うしか方法はないのだ。(斉藤『日本人に一番合った英語学習法』130ページ。)
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  • 09:02  さて、具体的にどうするか。まず発音。日本語と英語は音韻体系がかけ離れているので、完璧習得はまああきらめよう。かわりに、正確に発音する方法を工夫する。これは前掲のblogに紹介しているので、参考に。文法は斉藤秀三郎の作り上げた学校英文法があるから、これで学ぶ。ここも参考書も紹介してある。
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  • 09:03  さて、ここからが本番。英語の論理性を知る。英語はイギリス植民地によって支配言語として世界に広まり、アメリカで移民達が自分たちの文化を超えてコミュニケーションをするための要求もあり、文化的な違いで誤解が生じないように、言葉の論理性で意味を伝達する言語になった。ここを知る。
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  • 09:07  斉藤氏は「留学生は日本に勉強しに来ているのに、」なぜ英語でおしえなきゃいかないのか、馬鹿言っちゃあいけないと怒っているが、(前掲書、146ページ)KMDでは日本語ができない留学生には英語で教える。それは我々が考えていることを英語で世界に発信するという考えがあるからである。そのあたりは鈴木氏の考えに近い。
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  • 09:11  英語がそれほどできなくても世界から尊敬される技があればいい。斉藤氏はイチローや松井の例を挙げる。優秀な科学者もそうだろう。だが、文化や社会という領域をあつかうと、それでは済まない。書いている方も無意識が多い世界だ。ここに入っていくには論理的に書くという英語の約束事を知る。
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  • 09:15  今回はこのくらい。まずは形から。辞書と論文集とノートを購入しよう。道具がそろったら論理的に書かれた英文をそのまま理解する練習に入ろう。(完)
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