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2010年7月22日木曜日

NUS工学部デザイン思考ワークショップDay1

  • Wed, Jul 21
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  • 09:16  今日9時からNUS工学部教授たちにデザイン思考ワークショップを提供。このワークショップを実質的に組織している若手の教授と昨日打ち合わせ。彼は新しいデザイン思考スタジオの責任者でもある。2階吹き抜けのかなりいいスタジオが柏樹さんと僕がつくったデザインで設計でききそうで、楽しみ。
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  • 09:29  さて、NUSに出発するとするか。
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  • 14:44  午前中のデザイン思考ワークショップ終了。若手の教員が中心になっていたので、話が良く通じて早い。講義もいつになくテンション高く、うまくいった。のぞきに来た偉い教授達も「よかった」と褒めてくれた。参加者のモチベーションを上げるための講義なのだが、よかった。今、全員フィールドワークへ。
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  • 15:00  機械工学と電子工学を勉強した若手の研究者が半分ずつくらいで15人ほど。3つのチームにわけた。NUSTimes Higher Educationという大学ランキングで世界の30位につけている。東大は22位、京大は25位。大阪大学は43位。NUSを工学部だけで見るとなんと10位
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  • 15:02  実際、今日教えた感じからして、日本のレベルの高い国立大学の若手教員という感じである。雰囲気や物腰も似ている。慶應とは大分違う。ちなみに、慶應142位、早稲田145位。ここまで離れると、違う尺度の評価がいる感じだね。まあそこで創造性を教えるデザイン思考ワークショップという訳だ。
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  • 15:30  イノベーションと創造性をいかに実践させるか。あと一時間ほどで最初のフィールドワークから帰ってくる。哲学ビジョン技術の棚卸しは済ませてある。戻ってきたら濃い記述と5モデル分析が夕方までの課題だ。
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  • 17:12  濃い記述を始めたが、なかなか難しいね。まず文章で書くということが必要だ。主語、動詞、目的語でかく。箇条書きにしない。つぎに、自分が経験した順番で書き出す。調査した「対象」に目がいって、自分の心のなかを流れていった時間を意識できない。
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  • 17:13  分析しようという気持ちが先になって経験を書き留められない。これは良くある現象。たっぷりと濃く経験したことを記述する。辛抱してこの作業を行うことがデザイン思考の基本だ。無意識を扱っていくインタラクションデザインの場合は特にそうだ。頑張っていこう。
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  • 17:33  自分が経験したことを書き出しても、それは全体の一部なので対象をりかいしたことになるのか、という話が出る。もっともだ。だからこそ解釈学的人類学なのだ。自分なりに解釈をする。だがそれでデザインができるのか?という話になる。それももっともだ。だが、たとえばOSXやWindows7は?
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  • 17:35  いま僕たちがつかっているGUIのインターフェイスはウィノグラードが提唱した現象学的設計論に従っている。人間の行動を解釈してそれをもとにつかっていて気持ちが良いインターフェイスをデザインしていく。画面と人間とのインタラクションの間にある「経験」が丁寧にデザインされている。
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  • 17:37  経験をデザインするには観察して発見するというIDEOの方法がある。だが、この方法だと複雑な経験がデザインできない。そのために現象学的民族誌をつかうのだ。経験を解釈してそこからえられた構造を生かして新しい経験を創り出す。ここが大切。これは解釈学の伝統と同じだ。
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  • 17:39  解釈学は聖書が何を言っているかを調べる学問として始まったが、その目的は聖書の背後にある真実を探すのではなくて、解釈学のコメントを生かして、牧師や神父が自分で説教を実践するための指針としてあるのである。日常生活を解釈して記述して分籍して、それをつかって新しい経験をデザインする。
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  • 17:45  経験は物語として語られる。Situationがあり、物事がおこり、つまりcomplicationがあり、why とhowの質問に答えていく。3つのグループにこのあたりのことを指導していく。だんだん良くなってきた。フィールドワークの経験が物語、つまり民族誌になっていく瞬間だ。
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  • 18:00  濃い記述ができたらここから5つのモデルをつくる。面白い質問があった。アーティファクトモデルにおいて、誤用があるのだけれど、という質問だ。誤用は現象学的設計論においては大事な現象だ。日常で使っている限り「誤用」ではない。使いにくくてもすこし問題があっても使っている。
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  • 18:01  この状態をappropriationという。ところが壊れたりヘンなことがおこったり、「どうしてこのように使うのですか」といわれると、あれっとおもう。これをbreakdownと呼ぶ。観察者の行動を解釈して目的を明らかにすると、大事なのは目的達成であって、その過程ではないと分かる。
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  • 18:03  その段階で、無理して使っているあるいは誤用の状態をすっきりとしたものに変えてしまっても、利用者は文句はいわない。それどころかこうしたかったんだと言う。ここがみつかってくるとイノベーションはとても楽になる。5モデル分析でこのあたりに気付くとはなかなか飲み込みが早い。
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  • 18:21  物理モデルは人間を取り囲む環境のモデルだ。アーティファクトモデルは人間がつかっているモノのリストと使い方だ。人間と物理的世界の関わり方の二つのモードである。情報機器やネットワークの登場によってこのモデルは大きく変わっていく。未来の自動車や医療や都市はこの切り分けが大きく変わる。
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  • 18:35  デザイン思考のワークショップの一日目終了。みんなの顔つきが変わってきた。デザインを自分の言葉として経験として語り表現するようになった。デザインというとインダストリアルデザインが頭に浮かび、どこか他人事だったのが、デザイン思考によって自分で考えると自信がついてくる。
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  • 18:37  デザインはintegreation, harmony, radianceの統合したものだ。前者二つはエンジニアが能力として持っている。そこに自分の力で魅力を付けてみる。人々がいいなと手に取りたいものを考える。それが明日の課題だ。ムナーリのファンタジアを活用しよう。明日が楽しみ。
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  • 18:45  おまけ:文化モデルがみえなくなったときは、観察した人たちの間の力関係をみる。誰が誰に影響をあたえているのかを明らかにすると、どのような文化のなかに人々が暮らしているのかが見えてくる。文化的特徴だけを抽出するとときによってモデルが作れなくなる。ちょっと注意する点だな。(完)
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