analysis

2010年7月19日月曜日

イノベーションと社会性

  • Sun, Jul 18

  • 10:48  Y社からデザイン思考コンサルの依頼。企業規模が小さいのでちょっと難しいかと思っており、また会社の説明を聞くと、創業者がデザイン思考の固まりのような人なので、いまさら僕がワークショップを提供する必要もないかと思ったのだが、よく見てみると、たしかにイノベーションが必要な局面にある。
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  • 10:51  圧倒的なエンジニアリング力ときめ細かなビジネスモデルと従業員と顧客を大事にする哲学。それで成長をして大きくなるところまでなった。たまたま市場がニッチェなので大きく見えないが、占有率は圧倒的だ。プロフィットマージンも十分ある。なんだか昔コンサルをしたP社にそっくり。どこが悪いのか。
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  • 10:54  P社はつくっている商品の機能を上げることでビジネスを維持しようとした。顧客はP社についていった。だが、P社の商品を買わない顧客は当然ながら別の商品を買っていた。気がついたら時代が変わり、商品は売れなくなった。何度か幸いにも次の商品がのびて、会社を救った。だが頑固な従業員は残った。
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  • 10:57  売れない高性能高価格高品質デザインの商品を開発する技術者への人件費が会社を圧迫する。なぜこんな事が起こるのだろうか?僕は技術者の社会性の問題だと思っている。優秀な技術者をもっと社会に触れさせる。自分が生かされる場所を会社のR&Dではなくて、社会の中に求めさせる。ここが胆だ。
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  • 10:59  イノベーション研究者のクリスチャンセン氏が「ソニーの盛田氏はえらかった。研究所で新しいプロトタイプができると、若い研究者に友達に見せて意見を聞いてきたら」と進めていたという。実は僕はその「友達」だった。親友がSONYの研究所で開発をしていた。入社してCD開発チームにいた。
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  • 11:01  20代半ばは、ガールフレンドやらフィアンセやら「嫁」やらとがやがやパーティをする。そのときに、いろいろ持ってきていた。30年くらいまえだ。腕に付けてイヤフォンをして外を走るラジオ(なんと)とかVHSカセットに録音するPCMとか、親指ぐらいのステレオ録音ができるマイクとかだ。
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  • 11:03  いまは知らないがちょっとまえのSONYでこうしたことをしている人はいないはずだ。顧客はマーケットリサーチで見つけ、技術動向を調べ、商品を企画して、仕様書を書き、OEMに発注し、宣伝会社主導でブランディングをきめて広告を打つ。そのすきまにデザインがある。
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  • 11:05  面白いものが出来たら友達に見せる。それが基本だろう。もちろん盛田さんがビデオを松下幸之助氏にみせて、パクられた話は有名だ。でもこのくらい商品に愛がある。いくらでも説明が出来る。エンジニアが社会と接するとはそのくらい簡単であっけらかんとしている事なのだ。
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  • 11:07  あるときU社のイノベーション部隊を紹介されたことがある。優秀な若者をあつめて、特別に商品開発をやらせているという。僕は開発した商品を彼らに売らせないと、はなもちならないエリートになって会社の経営を結局は圧迫すると答えた。課長と共にやってきた若手「エリート君」達は大反発。
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  • 11:08  実はおなじ感じがMITのメディアラボの学生にもある。僕はおもしろいもの、すごいものを「研究」としてつくっているから、商品化は関係ないんだ、という態度だ。またアイデアとか面白いことを作れない商売人がこうしたことを商売のねたにしたくて金をだす。みんだ駄目だ。社会性がない。
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  • 11:10  おもしろいガジェットを見つけたら楽しそうに使い方を説明したり動かして見せたりしてうらやましがらせる。つまりは欲望、つまりはビジョンを語る。自分で作ったものでこれが出来たときがイノベーションなのだ。欲望の背後に哲学、つまりはニーズを探し当てたときにイノベーションはビジネスになる。
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  • 11:12  僕は一山当てようという商売人は実はあまり、いやとても嫌いだ。だが商売人は動物的精神をもって、欲望をかきたて、ニーズを探し出してビジネスを行う。エンジニアやデザイナーは動物的商売人である必要はないが、商売人の方法を学び、まあ人間的精神を持った商売人であるべきだろう。
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  • 11:17  研究所がビジネスをするべきだ、という話ではない。巨大通信会社の研究所の研究が無駄だからビジネスを考えるべきだ、ということで優秀なエンジニアや研究者に強引に商売を強いている現場を15年ほど前にみたことがある。3年間ほどだ。こんなに優秀な人たちになんとむげなことをするのだ、と思った。
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  • 11:20  音声や通信の第一級の研究をしている人がそのままその世界を社会に持ち込む。それでいいのだ。みせてほほえんでくれて「欲しいな」と思ってくれる。それだけだ。アイデアにイノベーションが加わって、はじめて人に欲しいなと思わせるプロトタイプが出来る。それがゼロから一が生まれた瞬間だ。
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  • 11:24  この瞬間を次世代のエンジニアにもってもらわないとY社の次の30年間は危うい、と創業社長はかんがえているのかなと思った。8月の初頭に時間をつくって、お話しをお聞きしてみよう。(この項、完)
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  • コメント
  • シーサー abudorasan @NaohitoOkude 孫正義と奥出先生がほとんど同じことを言っているな。大事なのはビジョンとコンセプト。
  • 浜島裕作(YusakuHamajima) yusaku_h RT @iplusd RT @NaohitoOkude 売れない高性能高価格デザインの商品を開発する技術者への人件費が会社を圧迫する。なぜこんな事が起こるのだろうか?...優秀な技術者をもっと社会に触 れさせる。自分が生かされる場所を会社ではなく、社会の中に求めさせる。
  • Rimakon Rimakon 昔は子供の頃から大人と接する機会が多いイメージ。最近は保育園~ 学校、塾、資格や大卒と時間をかけやっと会社に入る。頭でっかちんで心が未熟な成人が囲われてる感じ。 RT @iplusd: RT @NaohitoOkude 自分が生かされる場所を会社ではなく、社会の中に求めさせる。
  • issue+design iplusd RT @NaohitoOkude 売れない高性能高価格デザインの商品を開発する技術者への人件費が会社を圧迫する。なぜこんな事が起こるのだろうか?僕は技術者の社会性の問題だと思って いる。優秀な技術者をもっと社会に触れさせる。自分が生かされる場所を会社ではなく、社会の中に求めさせる。
  • 岩本 敏 iwamotosatoshi @NaohitoOkude 奥出さんのおっしゃること、実によくわかります。編集者も技術者と同じです。「いいもの作ってんだから、売れて当然」と思ってきたツケが回ってきているの が現在のような気がします。
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  • 藤木 哲也 tetsufujiki どんな仕事も「普通の感覚」に立ち返ってみることが大事だと思いま す。たとえ立場が違えど。RT @NaohitoOkude 「ソニーの盛田氏はえらかった。研究所で新しいプロトタイプができると、若い研究者に友達に見せて意見を聞いてきたら」と進めていたという。実は僕はその 「友達」だった。
  • Junichiro Toya jtoya わかるなぁ。「あっ、いいな!」と直感的に思えるようなものにしな きゃね。 RT @NaohitoOkude: おもしろいガジェットを見つけたら楽しそうに説明したり見せたりしてうらやましがらせる。つまりは欲望、ビジョンを語る。自分で作ったものでこれが出来た ときがイノベーションなのだ。
  • Takeshi Imae famiky 今日もいいお話、感謝。日射し強い午後、御身体ご自愛ください RT @NaohitoOkude この瞬間を次世代のエンジニアにもってもらわないとY社の次の30年間は危うい、と創業社長はかんがえているのかなと思った。8月の初頭に時間をつくっ て、お話しをお聞きしてみよう(この項、完)
  • Jenny El0_0l3 .@NaohitoOkude  ここでの動物的と人間的の差ってなんだろうね?理性があるかないかってこと?商売をする人には理性は必要だからそうじゃないか☆むずかしーーー♡ http://bit.ly/d46iKs
  • 矢作 孝 yahagi_takashi 考えさせられます@NaohitoOkude「売 れない高性能高価格高品質デザインの商品を開発する技術者への人件費が会社を圧迫する(中略)僕は技術者の社会性の問題だと思っている。優秀な技術者を もっと社会に触れさせる。自分が生かされる場所を会社のR&Dではなくて、社会の中に求めさせる」
  • k_2106 k_2106 RT @NaohitoOkude: おもしろいガジェットを見つけたら楽しそうに使い方を説明したり動かして見せたりしてうらやましがらせる。つまりは欲望、つまりはビジョンを語る。自分で 作ったものでこれが出来たときがイノベーションなのだ。欲望の背後に哲学、つまりはニーズを探し当て‥
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