- Tue, Jul 20
- モダニズムと勤勉:
- 今年の5月、ヨーロッパでアイスランドの火山が爆発して火山灰が飛び散り、多くの国際便が欠航した。僕は噴火したばかりのころに数時間遅れてミラノに入ったのだが、その後ヨーロッパの多くの空港が閉鎖となった。帰国をするにあたり、南の方に向かった人が多かった。
- 10:25 ホテルで読んでいたインターナショナルヘラルドトリビューン紙July20に面白い記事があった。新しい国際航空網が生まれつつあるという。中東の航空会社が売り上げを19%伸ばしたのだ。日本でもEmirates of Dubaiの大キャンペーンが最近あったばかりだ。
- 10:30 中東の航空旅行市場が拡大するにつれて航空機市場も変わり始めている。まず整備工場が造られている。やがて航空機製造にも乗り出すという。大量にBoeingやAirbusを買い付けている。彼らも協力せざるを得ない。ここからが面白い。アブダビの近くの街Strataに製造工場が出来た。
- 10:33 ここで現在500名の人が働いているが、将来は1万人雇用する計画だという。中東は石油をアメリカ、ヨーロッパ、日本に売ってきた。その利益は巨大である。働かなくてもお金が入る状態になり、勤勉で礼儀正しく勇気のある遊牧民の伝統が失われていった。この状態を航空機産業を起こし、脱出する。
- 10:38 僕は30年前にアメリカに留学したが、中東系の留学生はとにかく勉強しないで贅沢をしてすごしていた。20年前にアメリカに教えに行ったときも同じだ。湾岸戦争で勝利したクウェートの若者が贅沢に育っただらしのない怠け者で、負けたイラク側の貧しさと対照的だった。その後、これが悲劇となる。
- 10:40 サウジアラビアの王様はこのことを憂う発言を何度もしている。今回の航空機産業は単に利益を上げるためではなく(もう十分お金持ちだし)、高度な仕事を創出して、それに参加して国の経済の発展に貢献する精神を学んでもらうためだという。航空産業には莫大な資金がいる。そのお金はある。
- 10:47 甘やかされて育てられているアラブの若者に、高度な技術が必要な航空機の整備と製造、さらには設計。加えて、一日8時間オフィスできちんと仕事をする。エンジニアリングの教育をうけたり、オフィスでホワイトカラーの仕事をしっかりとする教育をうけた若者がこれから必要なのだという。
- 10:48 金融資本から産業資本への変換。なんという挑戦だろうか。ヨーロッパの空港は老朽化している。フランクフルトも古い。ヒースローは立て直したにもかかわらずもっと古びている。ロシアの飛行機を買う航空会社が減ってきている。上海ではリージョナルジェットのサービスをするニッチェ会社が出来た。
- 10:54 ファイナンシャルタイムズのJuly20が伝えるところによるとイギリスで開かれたFarnborough航空機ショーでEmiratesがBoeing777を30機注文したという。先月のBerlinのショーでは32機のAirBusA380を注文している。日本のメーカーが見えないねえ。
- 10:58 トヨタもホンダもアメリカでは小型機ビジネスを展開している。また三菱重工は日本で小型機ビジネスを展開している。だが、なかなかビジネスは大変だ。結局経済性とか環境負荷とかそういった売り方しか思いつかない。これは日本の車と同じだ。またファイナンスの方法のイノベーションもない。
- 11:00 言ってみれば勤勉なだけなのだ。シンガポール航空の内装から食事からワインからすべてを統括している上級副社長はもとミス・シンガポールである。低価格ジェット機サービスもイノベーションであれば、快適な旅の提供もイノベーションだ。世界を見て、広く質の高い経験をしたい、そこをねらえないのか。
- 11:03 航空旅行のような胸がときめく豊かな経験を提供できるサービスはあまりない。それを利便性や経済性だけで勝負していてはもったいない。ちなみにヨーロッパでは短距離航空機需要は落ちていて、鉄道会社が盛り返している。航空会社だけが提供できるサービスとは何か。そこがポイントだ。
- 11:11 経済成長をしている国の人たちはいま世界を経験したがっている。また金融資本をもっている中東の国はそれを活用して大量の飛行機を購入するだけではなく、それを維持して活用する航空機産業を興そうとしている。ここに参加するガッツを日本の製造業はもって欲しい。さて、仕事に戻ろう。(この項、完)
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2010年7月21日水曜日
モダニズムと勤勉: 変動する航空産業とイノベーション
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