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2010年6月16日水曜日

デザイン思考 Day3

  • 2010年6月15日  デザイン思考Day3

  • 07:33  デザイン思考 Day3: 今日はビジョン技術の棚卸しの発表をまず行う。ビジョンは欲望であるが、中級レベルなので表現する言葉を戦略的に選ぼう。楽しい食卓が欲しい、ではなくて、恋人と食事をするときにロマンチックなレストランみたいな照明になる食卓が欲しいである。どこが違うのか。
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  • 07:37  デザイン思考 Day3: 恋人って誰?食事って何?ロマンティックって?どんな照明?といった疑問がわいてくる。聞き手が疑問を多く持つビジョンをつくる。するとそれに答えなくてはならない。この質疑応答の連鎖が非常に大切である。ウサギのぬいぐるみのような胡椒ひきが欲しいとかね。
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  • 07:39  デザイン思考 Day3: これはやってみると意外に難しい。なぜ欲しいのか、この問題を深く考えていないからだ。この段階でのビジョンは仮で良い。調査や分析、さらにはアイデアを作っていく段階で変わってもいい。だがこの段階でビジョンを明文化しておかないと、反復作業がおこらないので、まとめておこう。
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  • 07:41  デザイン思考 Day3: エンジニアリングを勉強してきた学生はとくに欲望を前に出してものつくりをしてこなかった。彼らの研究論文のイントロダクションはいつも表面的である。もったいない。イントロダクションが哲学とビジョンと社会の接点を書くところだ。自分が好きなものの理由を明文化する。
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  • 07:43  デザイン思考 Day3: 技術の棚卸しはビジョンの詳細を考えてそれを実現する為の技術を個別に特定していく。ここは丹念に調べなくてはいけない。また最終製品を作るわけではなく、その効果を検証する為なので、ソフトウェアとハードウェアをつかって「スケッチ」をする感覚だ。
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  • 07:45  デザイン思考 Day3: センサーと無線をつかう、というのではだめなのだ。どのセンサーを使って、どのような無線をつかうのか、その制御はどうするのか、を考える。実はものをつくるとき、このような上流過程で具体的な技術の話をするところが大切なのだ。それが可能になった技術革新がある。
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  • 07:47  デザイン思考 Day3: 電子工作に使う部品が進歩して価格も安くなっている。センサーアクチュエーター(アウトプットを表現するスピーカーやモニターのようなもの、モーターでも良い)の価格もマイコンチップの価格も下がった。この段階で、ビジョンのアイデアを実現する仕掛けを考える。
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  • 07:48  デザイン思考 Day3: 慣れないうちはぴんとこないかもしれないが、一度経験すると、アイデアを電子工作するときに部品選びからおこなうという作業が自然になる。この段階でこのような方法で技術の棚卸しをすることが非常に大切なのだ。すこし頑張ってリストを完成させよう。
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  • 07:50  デザイン思考 Day3: いまはまだ、こうした段階で使う技術と商品を構成する技術の種類が違う。だた、PSocなどこの段階で使う技術のまま商品を構成する技術につながっていくものも開発されつつあるので、何を作るかのコンセプトがきまるまえに、アイデアの段階で技術の棚卸しを行う。
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  • 07:54  デザイン思考 Day3:ヴィジョンと技術の棚卸しの発表がおわったら、民族誌の講義を行う。僕のデザイン思考は解釈学的人類学とよばれる、現象学の流れをくむ理論を元にしている。提唱者はクリフォード・ギアツだ。30年くらいまえに注目された理論だ。最新の理論ではないが、いまでも重要である。
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  • 07:57  デザイン思考 Day3:民族誌的手法はIDEOが先駆的に取り入れた。ジェーン・フルトン・スーリ 『考えなしの行動』が翻訳されているが、この手法は単体のプロダクトをデザインするときには強力だ。だが、我々は複雑な人間関係のなかで日常生活を送っている。ここに攻め込むには非力だ。
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  • 07:59  デザイン思考 Day3:ギアツの方法は、人間関係を観察して記録する。ただただ記録する。これを「厚い記述」と呼ぶ。自分の主観で記録を続ける。解釈学的人類学と呼ばれる所以である。だがこの記述が日常生活の行動を反映する。人間の行動の背後に隠された真実があるわけではない。
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  • 08:02  デザイン思考 Day3:これはハンス‐ゲオルク ガーダマーがいった「解釈学」と同じ事なのだ。多くの人がただただ聖書を解釈してきたテキストが何百年分ある。その解釈が生み出すパターンの中に本当のことが潜んでいる。この考え方が現象学に大きな影響をあたえた。
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  • 08:05  デザイン思考 Day3:現象学、とくにハイデッガーの現象学はアメリカでは ヒューバート・L. ドレイファス『世界内存在「存在と時間」における日常性の解釈学 』として紹介された。スタンフォード大学のコンピュータサイエンスの気鋭の人工知能研究者がこの本をに出会う。
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  • 08:09  デザイン思考 Day3:実際には出版前のドラフトを読むのだが、ここでこの研究者はいままでの研究をすべて捨てて新しい方向に向かうことを決心する。彼がテリー・ウィノグラードであり、『 コンピュータと認知を理解する-人工知能の限界と新しい設計理念』で現象学的設計論が提案される。
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  • 08:12  デザイン思考 Day3:ウィノグラードの影響は大きく、彼の設計理念は多くのソフトウェアエンジニアに影響をあたえ、それはGUIからユビキタスコンピューティングそして大規模データベースの検索にわたる。この手法をさらに推し進めたのがコンテキスチュアル・デザインと呼ばれる分野である。
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  • 08:18  デザイン思考 Day3:現象学的設計論における解釈学的人類学の方法を展開したのがHugh BeyerKaren HoltzblattContextual Design: Defining Customer-Centered Systems(1997)である。
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  • 08:20  デザイン思考 Day3:彼らは「濃い記述」をもとに5つのモデル分析を行うことを提案した。これについては後ほど詳細を説明する。今日はここまで。ちなみに彼らのワークショップに参加したことがある。Holtzblatt氏に「日本人だと英語がわからないからここは出来ないわよ」と言われた。
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  • 08:22  デザイン思考 Day3:赤いソフト帽をかぶった強烈な女史で、いきなりこうくるかとおもった。もちろん僕程度の英語力でも全然問題はなくワークショップは終了したのだが、普通の日本のエンジニアの英語力だとつらいかなとおもった。だけどこの方法はデザイナーやエンジニアにはぜひ身に付けてもらいたい。
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  • 08:43  デザイン思考 Day3:今日はもうすこし学ぶことがある。それは日常世界という概念とラポールという方法だ。日常世界はエドモンド・フッサールという現象学の創設者が提案した概念で、我々は非常に複雑な仕組みで動いている世界に暮らしているが、それを普通だと思っているという意味だ。
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  • 08:45  デザイン思考 Day3:簡単に見えても実は複雑。ここが日常世界のポイントで、この複雑さを描き出す手法が解釈学的人類学の「濃い記述」であり、これを分析するのがコンテキスチュアル・デザインの5つのモデルなのだ。大分民族誌の武器がそろってきた。だがこれだけではまだ不足なのだ。
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  • 09:17  デザイン思考 Day3:民族誌をおこなうにはラポールが必要。調査する側とされる側の間に成立する信頼関係である。これなしには日常世界のフィールドワークは不可能である。逆に言えばここさえ成立すればフィールドワークは簡単な方法なのでわざわざ専門家を育成する必要はない。
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  • 09:19  デザイン思考 Day3:ラポールを構築する方法として前に紹介したContextual Designの中では師匠弟子モデルを提案している。これは非常に有効だ。調査する対象を師匠と考えて、師匠に弟子入りするのだ。人間関係を構築するときに調査する側の特権を取り去るうまいやり方だ。
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  • 09:22  デザイン思考 Day3:僕は調査をするときに相手を尊敬して良いところを見つけなさい。「隠された真実を暴いたり」「有効な方法を気付いたり」してはいけませんと20年間教えてきた。師匠弟子モデルを10年ほど前から使っているが、この方法では個人の倫理とかモラルをことさら言わなくてもいい。
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  • 09:24  デザイン思考 Day3:したがって師匠をみつけて弟子入りを許されれば、ラポール成立である。誰を師匠とするか、弟子入りが許されるか、ここが民族誌調査のカギとなる。みなでしっかりと議論をして良い師匠をみつけて、愛される弟子となる努力を今週はして欲しい。終了。授業で会いましょう。
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  •  授業中のコメントから
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  • 10:21  デザイン思考 Day3: ビジョンと技術の棚卸しの発表で気がついたこと、今後注意することをいくつか書いておこう。まずVoiceということを覚えよう。声である。発表するとき にはっきりとした声で発表する。自分の声を自分が確認して聞いている感じである。そして早口にしない。
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  • 10:23  デザイン思考 Day3: これは単に分かりやすくというわけではない。声で企画をつくっているのだ。人間の身体は、自分の声にかなり反応する。早口で小さな声で話すと企画のスケー ル感が出ない。骨太の企画は骨太の声で作る。自分の声を感じてはなせれば合格だ。これがVoice問題。
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  • 10:24  デザイン思考 Day3: rationaleを明確に。これはいつも言うことだ。ヴィジョンを発表するときは、なにがインプットで何がアウトプットか、その間にはどのような仕組み があるのかを明確にする。簡単なことが。でもそれを忘れて説明を始める。そのうち何が何か分からなくなる。
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  • 10:31  デザイン思考 Day3: 物語で語る。これは意外と難しい。概念的な枠組み(rationale)を図で示すと、その部分の説明をしてしまう。図を説明するときに物語になるように する。いつどこでだれがなにをするのかを前提で図を説明すればぐっとビジョンが明確になる。いつも物語を意識する。
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  • 10:33  デザイン思考 Day3:ビジョンを楽しむ。ビジョンをつくると、どうやってこれを実現しようか、アイデ アが浮かぶ。それを書き留めたり一枚の紙にrationaleを書いてアイデアをちりばめていく。この作業はすこし拡散気味にする。ここでコンセプトを作 ろうとすると、魔法が解ける。
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  • 10:35  デザイン思考 Day3:コンセプト、それもイノベーションのコンセプトは要素の組み合わせ以外の何者で もない。ヴィジョンをもとに作っていくアイデアはイノベーションのための要素なのだ。自由にいろいろ考える。アイデアをコレクションする。コンセプトを作 ろうとすると窮屈になる。注意すること。
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  • 10:37  デザイン思考 Day3: 魅力探しをする。compellingという言葉がある。ぐっとくる魅力みた いな意味だ。コンセプト作りをあせるとビジョンが色あせる。ビジョンは人々を魅惑しなくてはいけない。上手にここが表現できていたグループがいくつかあっ た。まずは人を魅惑することが大事だ。
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  • 10:39  デザイン思考 Day3: 技術の棚卸しが皆へたくそだ。コンセプトを決めてしまうと検討する技術が少な くなる。これでは棚卸しにならない。こつはアイデアをいくつもつくったあとで、似たようなアイデアで実際にサービスやプロダクトをつくっているところを調 べることである。沢山リストする。
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  • 10:41  デザイン思考 Day3: この段階で、類似のサービスがどのような技術を使っているかを検討する。セン サーであればどのような種類のセンサーなのか、LEDであればどのようなものなのか。ものだけではなくて、ソフトウェアも含む。アルゴリズムの名前もだ。 こうしたことをgoogleで調べる。
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  • 10:44  デザイン思考 Day3: アイデアを実現するには実にいろいろな技術が使われていることが分かるだろ う。こうした情報を大量の「引き出し」に入れて並べる。これが技術の棚卸しだ。実際に使えるか、その技術力があるかないかは必要はない。だが出来るだけ細 かく情報を分解していく。
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  • 10:46  デザイン思考 Day3: コンセプトをつくるまえにこの引き出しを作っておかないと、技術が決めうちに なってイノベーションの可能性が一気に下がる。ビジョンのまわりにアイデアを一杯ちりばめて、技術を調べて、大量の引き出しを作る。この作業を丹念に行う 必要があるのだ。
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  • 10:48  デザイン思考 Day3: 次回(明日)への宿題はビジョンと技術の棚卸しをしっかりとおこない、プレゼ ンをする。加えて、フィールドワーク先に連絡した進捗状況も報告する。誰を師匠とするか、コンタクトしたときの反応は、調査の可能性は?といったところを 各チーム3分で報告してもらいたい。
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