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2010年6月4日金曜日

『東大式世界をかえるイノベーションの作り方』を読む

    2010年6月3日
  • 14:28  早川書房の小都さんから『東大式世界を変えるイノベーションの作り方』を送ってもらった。スタンフォードのdSchoolの方法を東大が導入したものである。まず参加者にビッグビジョンを与える。そして未来を発想する。そのあとは僕の『デザイン思考の道具箱』で詳細に紹介したIDEO法である。
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  • 14:30  IDEO法とは、観察し、議論してアイデアを生み出し、作って考えてさらにアイデアを発展させて、コンセプトを作る。この手法のパワーは誰がやってもおどろく。そしてデザイン思考を行うスタジオの説明。空間がイノベーションを創発させる。このあたりは方法として普遍的なところだ。
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  • 14:53  さて、問題はビッグピクチャーを与えているところだ。NUSの工学部にデザイン思考を導入する方法の相談を受けたときにも、ビッグピクチャーを与えてから行うと言うことだった。この方法だと、選んだテーマが自分の日常生活から離れてしまう。IDEO型強力イノベーションが宝の持ち腐れになる。
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  • 18:16  さすがに、IDEOが先導をきったワークショップでは日常生活がテーマに上げられていた。だが、他のテーマはまさにダボス会議で議論しているようなビッグピクチャーである。big problem ではなくてwicked problemに挑戦しようとデザイン思考の専門家が主張する点だ。
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  • 18:19  定義も分析もできない難しい問題を解くには、観察して、アイデアを作り、アイデアをコンセプトにして、それをプロトタイプにして実際に使ってみるしかない。デザイン思考の真価は動くプロトタイプをWicked Problemの現場に持ち込むところにある。ここがあって始めてプロセスは終了する。
  •  6月4日
  • 06:54  デザイン思考の実践において、日常生活に焦点を当てながら、社会の問題に目を向けるところが一番難しい。 ささやかな日常の出来事なのだけど、wicked problemであるものを見つけて観察して発想をしてプロトタイプを作って、ユーザーに使ってもらってその価値を検証しなくてはいけない。
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  • 06:57  イノベーションというのは本来そう言うものだと思う。Wicked problem に出会う。解かなくてはいけないのだけれど解き方が分からない。あれこれと分かっていることを組み合わせていくうちに別の世界が生まれる。アブダクション だ。この仕組みだけを方法論として切り出してはいけない。
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  • 06:59  アイデアを作る方法がデザイン思考ではない。wicked problemにたいしてプロトタイプをデザインして検証するのがデザイン思考だ。有能な技術者を巻き込み、敏腕な経営戦略家と共闘するための共通言語を 提供するのがデザイン思考なのだ。ここはティム・ブラウンも分かっているはずだ。
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  • 07:04  その意味では、母親と子供のコミュニケーションをテーマにすると、日常生活の観察と「気付き」だけになっ てしまって、単なるアイデアや提案に終わってしまう。デザイン思考をつかった商品開発が陥る欠点だ。そこに使うと、消費者の欲望をくすぐる豪腕のインダス トリアルデザイナーにはかなわない。
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  • 07:06  20年近く前に隈研吾さんと対談したときに、どんなに工夫した住みやすい商品住宅を造っても、結局はあり 得ないような幸せな家族を演出する、実は住みにくい家の方が売れるという話になった。それは今でも変わっていないだろう。
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  • 07:09  IDEOが苦戦しているところも実はここだ。(僕はIDEO派だけどね。)デザイン思考を発想法の方法論 として採用しても、その結果は意外に平凡である。普通では解けない問題をプロトタイプを作ってあれこれと試し、修正をして、納得のいく答えを出す。これが デザイン思考の神髄なのだ。
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  • 07:11  日本の企業は多くの優秀な人材を抱えている。したがって、デザイン思考をつかったイノベーションを外部の コンサルタントが請け負うというビジネスは難しい。したがって、デザイン思考の方法のエッセンスを企業のメンバーに伝授する。このビジネスが成り立つ。だ が、おそらくこの方法で成果は出ない。
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  • 07:13  東大のi-schoolがエグゼクティブにデザイン思考とは何かを学ばせて、部下からのプロトタイプをつ かったイノベーション提案を理解する素地を作ると言うことであれば、これはなかなか正しい。スタンフォードのd.Schoolがデザイン思考カリキュラム としてゆるいのは、実はそこにある。
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  • 07:16  だが、そこからは本当のデザイン思考実践者は生まれてこない。エンジニアリングと経営戦略の専門家を巻き 込み、wicked problemに飛び込ませ(deep dive)、言葉ではなくて身体でコンセプトを作り、示す。そのための方法がデザイン思考である。
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  • 07:18  では、この方法はどう使うのか?たとえば、インドが新しい鉄道をつくることになり、グローバルに入札を行 う事になったとしよう。新幹線という素晴らしい電車がある。これをヨーロッパ企業と戦いながら、インド政府に買ってもらうにはどうすればいいのか?上下水 道でもいい。
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  • 07:21  この問題に観察とプロトタイプで挑戦する。広告会社がイメージキャンペーンしても、電車メーカーが技術の 優秀さを説明しても駄目だ。インドの人々にとって鉄道とは何であり、どのような問題があり、何を解決すれば皆が満足するのか、答えを利用者の日常生活の中 に投げ入れその価値を理解してもらう。
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  • 07:25  Bill Moggridgeが民族誌学者のJane Fulton Suri と出会って、観察してアイデアを作り、それを形にして、ユーザーと相談しながら商品にするという方法がデザイン思考であり、そのために「デザイナー」以外 の人とコラボレーションするのがデザイン思考なのだ。
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  • 07:28  ティモシー・ブラウンがビル・モグリッジに始めてあったときに、どこにも「デザイン」する活動がないの に、どこがデザイン事務所なんだろうと思ったという。だが、この方法がいま我々が使っているラップトップコンピュータを生み出したのだ。
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  • 07:29  社会の仕組みと人間を同時に考えて、その二つがインタラクションするところにプロダクトを配置する。ラッ プトップコンピュータは30年前の答えだ。だが、現在社会の仕組みと人間との関係にインターネットが導入されて状況は一気に変化した。ここをふまえて、 wicked problemを解決する。
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  • 07:32  そして、方法は煎じ詰めると東大のi-schoolで展開しているIDEO手法につきる。この方法を何の ためにどのように使うか、実はこれももう一つのデザイン思考の方法である。最近メタデザインと僕が呼んでいるところだ。デザイン思考をwicked problemに適応させる方法である。
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  • 07:34  うーん。ここまで書いてきて、これは3年前に『デザイン思考の道具箱』を書いたときにはぼんやりとしか分 かっていなかったなと気がついた。『デザイン思考の道具箱 2.0』を書くタイミングだな。早川書房の小都さん、もうちょっと待って下さいね。
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  • 08:19  @Ozzy_the_orz Ozzy Ozzy_the_orz 先生のつぶやきを見守っておりました。i.schoolは結構社会志向ですよ。企画をお待ち申しあげます。>>奥出:少々お待ち を。出版以来3年デザイン思考を実践してきていろんなことがあったので、それを反映させますね。
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  • 10:31  @tamdai99 気づき(問題)とアイデアは独立して生み出すべき、と書いてるんですが。>>確かにね。でも所詮暗黙知活用アイデア創出法では他者のコンテキストではな く、自分で勝手に「気づく」。僕がワークショップをしていてもすぐ「気づく」。でもそこから先に進まない。他者がいないから。
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  • 10:42  デザイン思考はデザインをする方法だ。その方法とエンジニアリングそして経営戦略を組み合わせる。する と、分析で解決できない問題が解決できるイノベーションを行うことが出来る。アイデア発想法に限定してはいけないのだ。いずれにしてもデザイン思考は批判 も含めてまだまだ発展する。
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