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2011年7月19日火曜日

プラグマティズムへの読書案内 その3 鶴見俊輔『思い出袋』から

  • Sun, Jul 17

  • 04:19  学問をするときに欧米の先生の定義にあう事例を探して書く態度が日本の知識人にあるという。いまシンガポールで教えたりビジネスの準備をしたりしてアジアの知識人やエリートにも同じものを感じる。学問をする喜びを知らない。

  • 04:25  鶴見は出会った実例が定義をこえていくときの感覚をあふれ出る(brimming)というすてきな言葉を紹介して説明している。学問をするとはこの感覚を持つことなのだ。そして犀のように一人で黙々と歩む。これはブッダの言葉だが、瀬戸内寂静『釈迦』(2002)から紹介する。


  • 04:37  日本人で犀のように歩んだ人としてジョン万次郎富永仲基を鶴見は上げている。ジョン万次郎は確かにおもしろいね。その生涯は中浜 博『中浜万次郎—「アメリカ」を初めて伝えた日本人』で。また乾 隆『ジョン万次郎の英会話』もなかなかだ。英語の発音の音変化をカタカナで結構うまく捉えている。

  • 04:43  富永仲基はだいぶ前に加藤 周一氏の編集で、『日本の名著 (18) 石田梅岩・富永仲基 』にでていた。加藤氏は『富永仲基異聞—消えた版木 』という本も出している。18世紀に活躍した大阪の町人学者。鶴見は犀をみつけるのが名編集者だとして、林達夫、花田清輝、谷川雁の名を上げている。

  • 04:49  鶴見俊輔の本を良く読んでいた高校時代に僕は林達夫著作集にであう。平凡社から出ていた。これにはびっくりした。博学というか明晰というか。平凡社の百科事典の編集長だと知るが、さらに影響をうけたのが久野収との対談『思想のドラマトゥルギー』これはいまでも平凡社ライブラリーで読める。

  • 04:53  こう考えてみると自分の知的な歩みは結構一貫しているなとおもう。まあ好きな本を好きなように読んできたから当然か。20年ちょっと前に岩波から『トランスナショナルアメリカ』を出版して、その月に岩波からでた一番良い本、という評価をうけた。これは社内の話だけど、ご褒美がある。

  • 04:57  当時の社主の岩波雄二郎氏から風呂敷に包んだ『トランスナショナルアメリカ」十冊を渡される。「親父が夏目漱石に初版を届けるときからのやりかたです」と岩波氏は述べた。その後暫く話をするという儀式なのだが、これには興奮した。なぜか初期のインターネットサーバーが岩波の本社にあった。

  • 05:00  で話は村井純さんのことになり、そのあとニューヨーク左翼知識人の話に移った。Publisherというのはなかなか大変な地位なんだなあと思った。その後僕は文章を書く仕事から足を洗ってしまい、岩波の編集者からSFCの教員になった小熊英二さんに「なんで奥出さん書かないんですか」と。

  • 05:03  その頃アメリカの大学で教える機会があっていったら、ヴィンセント・サーフがワシントンのホワイトハウスにインターネットをやらないと日本にやられると大ロビー活動をしていた。NTTのVIP構想をしっているか!!という感じであおっていた。『経済セミナー』にそのあたりを連載。

  • 05:07  その途中で、突然、こんなことをしている場合じゃないと思って、コンピュータの勉強を自ら始めた。『経済セミナー』の連載を落としてその後中断。竹中平蔵さんが『経済セミナー』の原稿、おとしていいんですか?と聞いてきたのが印象的だった。で気がついたら20年たって今に至るわけだ。(この項完)

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