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2010年8月8日日曜日

プロダクトデザインとブランディング

  • Sat, Aug 07
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  • 18:11  いま京都のオークラにとまっているのだが、アメニティのシェーバーの切れ味が抜群。ジレットに慣れていると別の感じがする。デザインは実は知り合いだが、うーん、売れないなと感じる。ブランディングが駄目。「おれはいいもんをつっくってんだ、てやんでい」って親父にデザインを提供するには?
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  • 18:13  このシェイバーは貝印なのだが、プロダクトデザインとしてカミソリの切れ味と持った感じ、使った感じも良い。だがデザインってこれを超えなくてはいけない。顧客とコミュニケーションしなくてはいけない。広告業界あがりのデザイナーはここが上手くて、社長と友達になってがんがんブランディングする。
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  • 18:14  こうした分かりやすいデザインはマスコミにも受けが良いし、たしかにブランディングという意味では一目おいてしまううまさがある。だが、こうしたブランディングだけで勝負していると売り上げもグローバル市場での競争力も育たない。なぜならリピーターというかファンが生まれないからだ。
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  • 18:18  このあたりは実は難しい。ちょうど会社の収益の改善をするために短期的にはR&Dとかそうした処を削り人件費を削る(首を切る)と効果がある。これがあたかも経営の本道のように言われ、昔は僕の研究室からも外資系コンサルに就職した。だがこれはていの良い首切り支援にすぎないと気がつき退職する。
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  • 18:19  ブランディングも同じだ。ロゴを変え、パンフレットを変え、広告を変え、キャッチコピーを変える。社長はデザイナーに深々とお辞儀をする。で、何も変わらない。こんなもったいないデザインの使い方はない。でも多くの会社はデザインをこの程度に考え、この程度の仕事で商売しているデザイナーも多い。
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  • 18:21  だが、違う種類のデザイナーもいる。昔からグラフィックデザイナーはビルを建てることが出来るが、プロダクトデザイナーは貧乏だと業界では言われる。頑固親父の風格のある優秀なプロダクトデザイナーが多い。彼らがつくるものは機能も統一感も良いし、プロダクトとして魅力 radianceもある。
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  • 18:23  だが、利用者がその商品に対してどのように思っているのか、あるいは思って欲しいのかがメッセージとして伝わらない。こんなに合理的な美しい形をしてこんなによく切れるのだから、売れないはずはない、と思ってしまうのだ。だが、安物の刃にブランディング戦略を組み合わせた方が市場では強い。
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  • 10:33  こ のギャップをデザイナーは独力で埋めて行かなくてはいけない。デザイン思考をプロフェッショナルのプロダクトデザイナーにも学んでもらいたいと思うのはこ こだ。髭をそるときは、あるいはむだ毛をそるときは貝印のシェーバー以外はあり得ないよね、って気持ちを顧客に持たせるには?
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  • 10:40  実 はこれはデザインを職業とする人が知らないうちに身に付けている陳腐化戦略と逆の方向だ。人がある種のものにたいしてもつ特別な感情、思わず手にとって 飾ってしまうような、日常性を超えた感覚、実はデザイナーの大切な役割はこうした価値をもつものやサービスを創造することにある。
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  • 14:00  問 題はこの感覚とプラトニズム的な本質論を混同することにある。複製技術がない頃はミメーシスをおこなうには手の作業が必要だった。だが、その必要が無くな ると、本質だけをもとめてモダンアートが生まれた。モダンデザインも同じだ。何百万台と複製をしても変わらない本質を求めた。
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  • 14:03  だ が、もう一度アートアンドクラフト、ウィリアム・モリスの作品を見てみると、19世紀半ばの粗雑な機械に対して手の作業を復権させただけではなく新しいデ ザインを生み出している。20世紀の荒ぶれる製造装置にたいして、インダストリアルデザインがあった。21世紀のしなやかな機械に対しては?
  • 14:05  こ の問題を考えなくてはいけない。80年代の初頭に製造装置に否をとなえたポストモダニズムの作品を良く検討する必要がある。そのなかに潜む精神性をどのよ うに21世紀に生かしていくのか?デザイン思考でコンテキストを探した後は、今あるもののコンテキストを外して、組み合わせる。その次が必要。
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  • 14:07  コ ンテキストをうしなった形が複数組み合わさり、それをみた我々がそこに意味を見いだす。志向性である。さらにそのモノが使われる新しいコンテキストを探 す。あるいは創り出す。そして寄せ集めを一気に再編して新しい形を与える。そのときに利用者が主体的に主観的に感動する。ここが勝負だ。
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  • 14:11  イ ノベーションとデザインとブランディングの絶妙な一致。ここにデザイナーのみならず創造的産業のコアがある。貝印の絶妙な切れ味とレベルの高いインダスト リアルデザインの造形をみていて、これに精神性が加われば、ジレットなど眼ではないものになるのになあ、と思った次第である。(この項、完)
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