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2010年8月14日土曜日

金子哲男『「激安」のからくり』に21世紀資本主義の可能性を見る

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  • 12:56  21 世紀産業におけるブランドやデザインの価値はどこにあるのか。金子哲雄氏の『「激安」のからくり』を読んで感心。新しい資本主義と民主主義の思想家の登場 だね。金子氏は40歳ちょっと前か。日本経済が右肩下がりになった頃に青春を迎えている。慶應高校出身で資本主義の裏舞台を経験。
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  • 12:58  泉 麻人が日本資本主義の本音を慶應高校で経験していた頃は日本経済がバブル突入中。慶應高校カルチャーではないが、田中康夫氏や、麻布高校の古川さんが高校 生の多感な時代に日本資本主義を感じていた状態は慎ましさがラグジャリーに変化するど真ん中。きちんとした中産階級の子供は贅沢をしない。
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  • 13:01  そ んな中で贅沢道を突っ走り、ポパイ、ブルータスに景気をあおられ、1980年代半ばのブラザ合意のあと、ついにバブルに突入。いけいけで、1990年にバ ブル崩壊。右肩下がりの経済が始まる。SFCが始まった頃だ。僕はアメリカのアイオワ州のGrinellという名門の小さな大学で教えていた。
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  • 13:04  日 経新聞の記者から「バブルがはじけました」というファックスを受け取ったことを覚えている。それから20年あまり。グローバル化につぐグローバル化の時代 が過ぎた。グローバル化は3つ。金融、流通、情報だ。そして、その流れがここ半年ほど決着を見ている。新しい資本主義と民主主義の台頭だ。
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  • 13:06  こ の話は別にするとして、そんななかで金子哲雄氏はお金を賭けない慎ましい生活が暮らしを豊かにするという主張で、いくつか本を出してきた。流通業界は百貨 店ビジネスが慶應卒業生が多いことから、僕も10年くらいまでずいぶん深くおつきあいをしてきたが、安売り店の登場でどうしようもなくなった。
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  • 13:09  金 子氏はちょっと前から『お金をかけないほど、新しい仕事はうまくいく』、『今どき儲かる商店街』あるいは、自分のプライベートな歴史と哲学を軽く語ってい る『超三流主義』『僕の教科書はチラシだった』を出している。このあたりも読んでいて非常に面白いのだが、『「激安」のからくり』は傑作。
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  • 13:11  流 通のグローバル化がもたらした「激安」のからくりを戦後の安売りの歴史と合わせて非常に正確に議論している。人件費の安いところで、安い素材を使って商品 をつくるから安くなる訳だが、そのからくりは何種類もある。消費者が激安の商品を好むから買う訳で、その理由も詳しく調べていく。
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  • 13:13  商 品を購入するときの購買者と売り手の関係の分析もうまく、無人の販売から対面の販売まで比較していく。そして、圧巻は合理的な激安サプライチェーンが完成 したあとの姿を描き出したところだ。無駄を極限まで切り詰めた商品に囲まれた生活がいかに寒々しいか。だからといって高い商品は買いたくない。
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  • 13:18  品 質も価格も合理的システムが世界的に普及すると、のこるのはデザインと販売されている場所になる。つまり彼の使っている言葉で言うと「情緒的意思決定」で ある。商品に特別な物語を感じる、素材生産者を搾取していないフェアトレード、こうしたことに敏感な消費者が生まれてきているという。
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  • 13:20  や すかろう、わるかろう、の商品が普及すると地球規模で経済が衰退する。「激安さかえて国滅びる」をどう解決するかが生産者も消費者も考えなくては行けな い。地球資源を搾取し続ける穀物メージャーでもなく、工場労働者の搾取を続けるメーカーの中国進出でもなく、かつ安くていい物にあふれた市場を。
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  • 13:23  無 茶な注文に見えるが、僕は金子氏が紹介しているドンキホーテの例の説明をみたりすると、新しい民主主義と超合理的資本主義が、次の世界を作る気がする。情 緒的意思決定に民主主義が必要なのだ。『「激安」のからくり』は新書。気楽に読める。ブランディングとかデザインとかを考える出発点になる。
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  • 13:26  つ つましさと豊かさと世の中の平和と個人の幸福。難しい方程式が解けるかもしれない。今後の金子氏の思考の展開に期待したい。ライシュは『暴走する資本主 義』で民主主義が飲み込まれてしまう現象を指摘したが、解決策はカント的倫理の復活だ。だがグローバルに広がった資本主義には新しい倫理がいる。
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  • 13:28  金 子氏は39歳。僕がSFCで教えていた一期生や二期生と同じくらいの年代だ。この世代から21世紀における資本主義と民主主義の問題に挑戦する人が出てき たことを評価したい。経済の右肩下がりに多感な青春を送った最初の世代だからね。ブランディングやデザインの意味がようやく見えてくる。(完)
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  • 補遺
  •  金子さんからのTweet
  •  金子哲雄 GEKIYASUO @NaohitoOkude 先生 このたびは拙著をお手にとって頂き、ありがとうございました。平成2年 塾高を。平成6年 文学部史学科東洋史学専攻を卒業し、石油会社等を経て、現在に至っております。今、ポスト激安社会をテーマに取材をしております。今後とも、よろしくお願い申し上げます。
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