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2010年8月3日火曜日

IKEA, H&M そしてユニクロ

  • Mon, Aug 02
  •  北欧デザインにおけるスタイルの抽出について考えてみたい。
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  • 11:31  なぜ、スウェーデン?携帯電話のエリクソン、車のSAAB、VOLVO、家電メーカーエレクトロラックス社はワインセラーがいいね。あとカメラとレンズのハッセルブラッド社などが20世紀産業。21世紀産業として、世界最大の安価な家具会社イケア 、ファッションブランドのWESC、H&M。
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  • 12:10  IKEAにしてもH&Mにしても、スタイルという点からするとかなりの水準だと思う。素材や工法、あるいは流通の制約で一部のラグジュアリーな商品に閉じこめられていたスタイル、これは無形だからね、を考えだし、安価で人々に提供した。このビジネスの方法は評価に値する。
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  • 12:12  素材にこだわり、スタイルがとってつけたような家具やアパレル。どちらも中途半端なままで80年代90年代と日本のファッション産業はやってきた。だが、職人の手に閉じこめられていた裁断や縫製の技術が機械に置き換えられて、いまではびっくりするような服が作れる。そうなるとスタイルが大切。
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  • 12:14  北欧は素材に裏打ちされたあるいは自然の中で暮らしているべったっとした感じと、抽象的な表現(ロックだとABAとか、北欧ヘビメタとか)が妙に混在しているが、その微妙なところを形にしたのがIKEAやH&Mだと思う。そしてスタイルのある生活という経験をデザインして見せた。
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  • 12:16  北欧家具はイタリアの高級ブランドの椅子の3倍くらいの値段を平気で付けていて、それでも売れている。むかしイタリアの家具ショールームの調査をしたとき、ある家具屋さんが、北欧家具のセレクションをみせて、これが売れていると行っていた。誰が買うのといったら、半分冗談だろうけど、弁護士だと。
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  • 12:18  当時イタリア政府は経済的なスキャンダルで大物がどんどん逮捕されていた。彼らの弁護で儲かってしょうがないので、高い家具をかうのだよ、と笑っていた。そして「これがジオ・ポンティの椅子で」などと行って見せてくれた。骨董屋さんの世界だ。日本でも同じノリの店がある。店名はちょっと伏せるね。
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  • 12:27  素材もデザインも別格のモダン家具がある。良くデザインされた宝石が与えてくれる感動と同質であり、それは経験をこえて精神的なものだ。この精神的な感動をどれだけ安価に出来るか、これがプレタポルテ産業の勝負だったと僕は見ている。最近亡くなったアレキサンダー・マックイーンの素材の使い方!
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  • 12:30  北欧の椅子で200万近いものがある。デザインは違うがイタリアの高級家具の椅子は20万台だ。(ソファーは150万くらい)。でイケアは2万円かそれ以下。このランクが家具のプレタポルテだと思っていて、20年くらい前にB&Bの家具を評論したことがある。だがモダン家具は産業にならなかった。
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  • 12:32  ポストモダンの流れがやってきて、家具デザインはそちらに流れた。自動車や家電のデザインへの挑戦を家具やインテリアデザインでおこなったのは、コストがかからないからだ。スタイルの実験が前面に出て、家具はつまらなくなる。日本のデザイナーがポストモダンのコンテキストでもてはやされた。
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  • 12:36  マテリアルとスタイルが分けがたく融合したところにうまれてくる精神的な充実。これがデザインだ。ソットサスはスタイルの硬直性を批判してポストモダンを始めた。メンディーニやアレッシが家具や食器でポストモダンのスタイルをしめす。だがムナーリもそうだが、その背後には機械への不振がある。
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  • 12:38  機械を職人の作業の再現にしぼって活用したのがIKEAやH&Mだ。工作機械のイノベーションは大分前におこっている。日本でも縫製の機械のイノベーションは目を見張るようだ。だがこのイノベーションをビジネスにしなかったので、日本のアパレルは行き詰まる。家具に至ってはデザイナーの工夫家具。
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  • 12:41  スタイルも素材も中途半端な家具を買うくらいなら、スタイルを優先させる家具を買う。若いときはそれでいい。そこで快適な生活の経験をする。IKEAの家具はしばらくするとくたびれてくる。いま考えているメディアファニチャーではそのあとの市場に挑戦したい。精神的な充実感のデザインだ。
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  • 12:45  強気の価格をつけている超高級家具をゼロが二つ違う価格で提供出来ない。素材と工法への割り切りがIKEAやH&Mの勝利の理由だ。だがゼロを一つ下げて、素材と工法は同じ品質で、ということは不可能ではない。するとここからが勝負で、精神性を感じさせるような家具をどうデザインすればいいのか。
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  • 12:52  こう考えるとアパレルデザインは進んでいる。ポストモダンを超えて、精神性をプロダクトにしている。たとえばドリス・ヴァン・ノッテンは僕よりちょっと若いが、アントワープ王立美術アカデミーのデザイン科を卒業して、メンズファッション工場と協力してModepaleisをオープンした。
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  • 12:55  デザインの中にある精神性。これをスタイルだけでどこまで挑戦できるか。IKEAのあるいはH&Mの製品は写真の中で見ると、あるいはショールームで見ると快適な生活が経験できそうだ。実際経験は出来るだろう。だがデザインにはその先がある。人間工学などでは理解できない世界なのだ。
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  • 12:59  IKEAを批判してはいない。単品のデザインで精神性を感じさせるのは簡単だ。IKEAはここは分かっていると思う。だが、生活や環境といった大きなスケールでデザインを考えるときに、機能中心ではだめだが、経験だけでも表面的だ。精神性に深く食い込んだデザインが必要なのだ。ここを見極めたい。
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  • 13:14  ちなみに、ゆにくろはIKEAやH&Mの逆をいっている。機械を駆使して、良質の素材を顧客に届ける。デザインはスタイルに挑戦しないで、アメリカントラッドに留まる。Landendsなど通販トラッドのお店の商品の劣悪さに対抗して、高度な素材の衣料を低価格で提供した。20世紀産業の見本。
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  • 13:16  誠実に高品質なものを低価格で供給するという活動を続けていくと、市場は成熟して、かつて価値のあった商品がコモディティ化する。この悪循環をのがれるために次々と新機軸を打ち出していくのが、ユニクロである。今後は信越化学のようにコモディティ路線と高付加価値路線の組み合わせとかが必要。
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  • 13:17  こうなってくると、話は通常の会社経営の議論となり、創造的産業とかイノベーションの話ではなくなる。21世紀の我々が必要としている精神的充足をユニクロの商品は提供できるか?と考えるとちょっと違うね。ブルックスブラザースは初期20世紀資本主義のアイコンだった。ポロがそれを乗っ取った。
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  • 13:20  このあたりの話は書いているときりがないので拙著『アメリカンポップエステティクス』のなかのラルフローレン論を読んで下さい。当時ファッション批評のまねごとをしていて、そのときもらったプレス資料で論文をかいた、というものです。(この項、完)
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  • 補遺
  • 15:07  @koso さっきRetweetした奥出直人氏( @NaohitoOkude )の一連のユニクロ評がすごくしっくりくる。(中略)というわけでTogetterにまとめておきました。 http://togetter.com/li/39306 >>奥出です。ありがとうございます。  [in reply to koso]
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