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2011年3月31日木曜日

デザイン思考と経営戦略 いよいよ勝負!

  • Wed, Mar 30

  • 20:14  大阪市の会オープンイノベーションビレッジ(仮称)の委員会午前中。午後一杯2年間続いたある会社のワークショップ最終回。5月過ぎに経営陣に新事業提案。グローバルコンペティションで生き残っていくために売り上げを3倍にする。その一翼を担う提案が出来るか!!メンバーはいよいよ勝負だ!

  • 20:18  デザイン思考は人間を観察してアイデアを作る方法である。これ以上でも以下でもない。そして非常に強力な方法だ。だがこれだけでは経営戦略には使えない。アイデア開発手法として教育プログラムにくみいれられるのがせいぜいだ。だがそれではこの方法の真価は出ない。

  • 20:21  売り上げと利益率の両方に貢献しないと、宝の持ち腐れである。だがここはマッキンゼーのような戦略コンサルティングかマーケティングが主導権を握る領域だ。ここにデザイン思考の方法を活用してどのように切り込んでいくか。京都との会社のワークショップはここが焦点だった。

  • 20:23  方法の習得、デザイン思考スタジオのデザインと実際の施工、そして新事業提案と進んできた。僕が手がけてきたコンサルティングの中では比較的売り上げが少ない。大きな会社の事業部くらいの売り上げなのだが、この規模が幸いして小回りが利き、人材も育ち、イノベーションも出来たと思う。

  • 21:10  民族誌をきちんと行う。ここがなんといっても難しい。潜在的な顧客を観察して記述して分析をする。ここがすべてである。しかし、ひたすらフィールドワークを行っても駄目である。ある程度民族誌の技法がつくまで経験が必要である。だが、その段階が終わったら誰を観察するのかが大切になる。

  • 21:23  つまりこの段階で市場を考える。そう、マーケティングとデザイン思考は実はほとんど同じ作業なのだ。市場にいる顧客の購買分析をするのがマーケティング。今存在しないマーケットに対して商品を企画する方法がデザイン思考なのだ。したがってまずは市場を見つけないことには話は始まらない。

  • 21:30  市場をみるとは顧客を見ることだ。メーカーの場合、初期の基礎開発から事業化を目指す製品開発の段階で市場を見ない。いわゆるプロダクトアウトといわれる方法をとる。すでに市場に製品があり競合差別化のときだけ市場を見る。お客様のニーズにそって商品開発というやつがこれだ。

  • 21:34  だが、なにか製品のコンセプトがあったとき、それをどう見るかつまりその市場をどう考えるかで大きく変わる。音楽をHIFIで再生する音楽携帯端末とみるか、音楽コンテンツの流通のメディアとしてみるかでウォークマンとiPodは勝負する市場が違っていた。そして市場とは顧客のニーズである。

  • 21:35  市場は顧客のニーズから逆算して考える。そのニーズにどのように商品やサービスを展開するかを考える。マーケティングは市場調査を重視する。だが、まだ市場はないのだ。潜在的ニーズをみつけて市場を創造する。これがデザイン思考だ。では市場をどのように定義するか
Thu, Mar 31
  • 10:05  先ずやっておかなくてはならないのは人口学的なトレンドの分析である。『イノベーションと起業家精神』ドラッカーは人口構造にかかわる変化をもとに何が起こるかを考えると間違いをすることはないとまで述べている。あらためてその重要性を指摘してもそんなこと解っていると思うだろう。

  • 10:14  ところがイノベーションのためのデザイン思考ワークショップを行っていると、実際の意志決定の時にマクロな人口学的な流れを意識することは少ない。なのでドラッカーは、まずは人口構造を理解しましょう、と述べるのだ。

  • 10:17  で、それが解ったらどうするのか。ここがポイントだ。実は人口構造の変化は前もって解る。若者は中年になり、老人になる。何年後にどうなるかは前もって解る。ドラッカーはこれをリードタイムと呼ぶ。人口構造の変化はビジネスの機会である。ここに備えてイノベーションを行う必要がある。

  • 10:22  ところが若者に物を売れば利益が出るという既成概念がものつくりの世界では消えていない。途上国にいこう、というのも若者がいまいるからだ。しかし若者も中年になる。「途上国」すらなくなろうとしている。平均寿命が70歳を越える国はざらである。

  • 10:23  変化が顕在化する前に手を打つ。これが人口構造をマクロに捕らえてイノベーションを行うときの態度の一つである。この方法は非常に有効である。なぜなら競合他社は変化は先に起こることだと思っているからだ。しかし起こってからでは遅い。今イノベーションをする。これがマクロで市場を見ることだ。

  • 10:30  次にミクロに市場を見る。普通にマーケティングで使われている道具が役に立つ。誰を観察するのか。どのようなニーズを持った顧客に対して売るのかなどを整理する。そのための道具がどのマーケティングの教科書にでも普通に書いてあるセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングである。

  • 10:39  セグメンテーションとは市場を細分化することである。ターゲティングはセグメンテーションで細分化された市場のどこをターゲットとするかを決めることである。ポジショニングは顧客にとって開発する商品やサービスが何であるかを明確に位置付けることである。この三つは同時に行うが異なる作業だ。

  • 10:43  こうした作業をおしえていると、セグメントサイズとか顧客アンケート調査とかの話と混合する。こうした話はマーケティングリサーチの話だ。デザイン思考はマーケティングリサーチにおける定性的な手法としても使える。だがそれではもったいない。もっと過激なイノベーションに使うべきなのだ。

  • 10:46  今ある市場の分析をいくらしても新しい市場は解らない。新しい市場は自分で創るしかない。デザイン思考という方法でイノベーションに挑戦して新規市場を生み出すのである。このあたりの整理はある程度フィールドワークを行ってからでも遅くない。マクロな市場動向は変わらないが、ミクロは変わる。

  • 10:50  さて、セグメンターション、ターゲティング、ポジショニングを明確にした後で、もう一度そこに相当するであろう人に対して民族誌的調査を行う。濃い記述と5モデル分析を徹底的に行う。ここでマーケットリサーチの方法を無意識に取り入れてしまうことが多い。多分会社でそういった研修があるのだろう。

  • 10:52  だがデザイン思考は創造的な活動なのだ。顧客にとってどのような商品やサービスが受け入れられるのか、つまり隠された無意識のニーズが何であるかはいくらアンケートをしたり観察して気付こうとしても無理である。観察して記述するのだ。それから自分で顧客の生活世界を解釈してモデルを創る。これをメンタルモデルと呼ぶ。

  • 10:55  そのメンタルモデルを反映したペルソナを想定して、ペルソナが使う製品やサービスをとりあえず作ってみる。そして顧客に渡してみる。顧客の反応がよければ、メンタルモデルの正しさは検証されたとする。反応が悪ければ作り直す。この作業を繰り返すのだ。セグメンテーションとターゲティングが変わることもあるだろう。

  • 10:56  この作業を確実におこなうためにアラン・クーパーが開発したのがペルソナ法である。この方法でなければいけないということではないが、ペルソナを作りゴールを設定してゴールを達成するまでのインタラクションプロセスを工夫することで、非常に正確に顧客のニーズにあった商品やサービスができる。

  • 10:58  また個別のプロダクトを作るだけ、つまりプロダクトアウトの製品でしっかりとした利益を生み出していくことは非常に難しくなってきている。モノがないときに製造設備を強化してものを行き渡らせた。これが工業社会の仕組みだ。モノを作ることが簡単になると、今度は広告やデザインで欲望をかき立てた。

  • 11:00  これが戦後消費社会の仕組みだ。だがモノを所有することで幻想を楽しむというという仕組みも市場において有効性を持たなくなってきた。人は所有による幻想以外の人生の目的をもっているのだ。それが何であるかを捜し出してイノベーションすることが必要なのだ。

  • 11:02  まとめ:マーケティングの基本道具に加えて民族誌記述と分析による仮説的メンタルモデルの構築。これがデザイン思考の第1フェーズである。ここが終わった段階で次はプロトタイプを作りながらメンタルモデルの検証をおこなうというbuild to thinkのフェーズに入る。(完)

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