放送と通信の融合の20年を振り返る
- Thu, Jan 27
- 07:00 随分昔に、あるプロジェクトでテレビ放送がデジタルになって電波が空いたときにどうするかの基本的な調査を沢山行い、試作もしてみた。どこから電波を出すかも大分調べた。まあ調査はたいていそうだが、結構明るい未来がありそうな結論になった。どうもいまは違うみたいだね。
- 07:02 さらにその前、そもそも放送と通信の融合がアメリカでもあまり現実的じゃなかった状態からCATVでそのあたりを崩していった流れとそれを前提とした新しい産業の可能性の調査もした。MTVって当たり前にあるけど、最初はけっこう過激なコンセプトだったんだよ。CBSの偉い人と大分勉強した。
- 07:04 CATVの日本上陸はコンテンツ的には僕はあんまり納得できなかった。またそうした産業を前提とした映像都市構想みたいなものもリアリティは無かった。でもそのころの偉い人たちはハリウッドみたいなことが出来るんだと興奮していた。SONYやPanasonicがハリウッドのスタジオを買うころ。
- 07:38 そのあたりはすこし『経済セミナー』に連載していたが(20年くらい前)忙しくなって中断。結果CATV産業は日本に上陸しなかったが、僕はそれで良かったと思う。アメリカ型のエンターテイメントはゲームも含めてこれでもかこれでもかと刺戟を前に出す。これは強烈。
- 07:41 CATVは要するにコンテンツ制作と配信の垂直統合をなくすという話だった。おなじころニューヨークでACMの創業者と会った。http://www.amctheatres.com/ハーバードクラブというハーバード大学の卒業生のクラブ。東海岸の名門の生まれだが、中西部的ばんから。
- 07:43 セオドール・ルーズベルトと同じようなタイプだと思ったが、話は面白かった。ショッピングモールにシネプレックスを導入したパイオニアだが、最初はハリウッドのスタジオは映画を回してくれない。日本でも東宝を始めみな反対していた。彼はそれに抵抗しなかったという。
- 07:49 上映できる映画であればいいのだと。ショッピングモールは多くの人が来て子供連れもいる。かれらが時間をつぶすために複数のコンテンツを上映する小規模中規模な映画館をつくる。シネプレックスだ。そこに人が集まれば市場が出来る。その市場をもとに映画会社と交渉するという。
- 07:52 なるほど、とおもった。このプロジェクトは結局日本の映画会社の強烈な反対になって、開発をしている会社は諦めた。そのあと日本ではシネプレックスは普及する。難視聴者対策となったCATVとは違う展開になった。今日本のシネプレックスは第二段階だ。ここを制した映画会社が残る。
- 08:18 メディア業界の再編は経済モデルや政治モデルと並行して技術革新も関わる。このバランスが非常に大事なのだが、20年振り返ってみると、技術革新というか技術論に問題を絞ってしまう傾向が日本にはある。オーディオも車もそうなのだが、能力のある技術者が「技術論」というか科学主義になる。
- 08:20 MITのメディアラボはメディア技術をビジネスに展開する点でかなり強烈でこのころ日本企業はメディアラボ詣でをした。一方で日本進出の動きもあり、その交渉の現場にいくつか立ち会ったが、結局は日本のメディア技術の閉じこめ策だなと感じた。逆に言えばメディア技術国際化の才覚が日本にない。
- 08:22 サンフランシスコのエクスプラトリウムの日本地方自治体への営業の現場も立ち会ったことがあるがこちらも同じだ。CATVと同じでどちらもまあたいしたインパクトを日本に与えていない。その次にきたのが光ファイバー網の話だ。切っ掛けは勿論通信会社の技術だ。
- 08:24 その頃(10年以上前)NTTの研究所でテレビをすべて録画して蓄積して自在に番組を選んで別の場所に送信するというデモをみた。いまでは当たり前だが、僕はくらくらときた。放送とか通信とかいうカテゴリーが経済あるいは政治の取り決めに過ぎないと言うことがわかったからだ。
- 08:26 当時僕はNTTの研究所の非常勤のメンバーだったのでこうしたデモをみたのだが、NTTが解散になってしまう。研究所のメンバーとしてすることがなくなったので、光ファイバーを通して映像を送受信するプロジェクトを提案してその実験を2年半おこなった。といっても技術的にはどうということはない。
- 08:28 問題は映像を自由に見るということで既存の経済モデルが壊れて多くの人の生活がたちいかなくなるとか新しくビジネスをする人が登場する、ということだった。光ファイバーを使ったこうした実験はまだだれも研究所の外でやっていなかったので、手探りでいろいろと考えた。
- 08:30 国際的にはいろいろとあったが光ファイバーでやれることは見当がついた。そのころいまでいうオンディマンドでサービスをする可能性を放送局が勉強を始めた。フロリダでシリコングラフィックス社が中途半端な機械で大規模な実験をしていたころだ。NECなど日本のメーカーの方が凄かった。
- 08:32 光ファイバーの可能性にどうしてあれほど皆夢中になったのかとも思うが、実は光ファイバーはあまっていて(ダークファイバーという)使いやすかった。とくに都市計画を新しくするときにはかならず目的はなくても整備していた。そのあたりを考えて、いまで言うコンテンツのクラウドコンピューティングを構想した。
- 08:34 これはあるところで現実になっているが、これだけの設備をビジネスにつかわない、というのが現状である。まあ使えないという諸事情もあるのだろう。このあたりのプロジェクトが一段落した頃デジタル地上波の話になった。光ファイバーで全部出来るのになぜ電波?という気がした。
- 08:36 とはいえ、ダウンロードが地上波でアップロードが携帯電話網なりインターネットという組み合わせでのビジネスの可能性を考えるのは結構面白かった。技術動向をみても電波でIPをというものは結構あり、いくつも実験が行われていた。
- 08:52 だが、実際の所はどうなのか、ステークホルダーが多くなっていてわからなかった。民放テレビキー局、地方局、広告会社、NHK、NTT,NTTDocomo, NTTData, SONY, 松下、東芝などなどは?更には制作会社が関係してくる。
- 08:57 レーガン・サッチャー時代(1980年代前半)に通信会社の民営化を行い、放送と通信の垣根をこわすという判断がなされて20世紀は終わったと思う。国家や社会という枠組みを再考する時代になった。また封じ込められていた技術が野に放たれた。この感覚は日本では当時NTTの立川敬二氏によるVIP構想として登場した。
- 08:59 いまgoogleしてみたが情報がみつからなかった。これはV visualization, I intelligence, P personalの略である。Vはブロードバンドで、Pは携帯電話で、Iはgoogleなど大規模検索サーバーでいま実現している。
- 09:00 この構想の凄かったところは、だれも通信技術にこのような可能性があるとはおもっていなかったときに、研究所の技術を社会に展開するとこうなると示したことである。20年前僕はアメリカの小さな大学(インテルのNoyceが卒業したところ )で教えていたが、あるとき新聞の記事が目をひいた。
- 09:03 ヴィンセント・サーフがVIP構想を取り上げて、アメリカに光ケーブルだけを考えていると大変なことになるとワシントンにロビー活動をおこなっていると。この後、高速光ファイバーネットワーク構想(これがゴアの情報ハイウェイの最初の形)の主役がインターネット網へとかわる時であった。
- 09:04 話は10年ほど前後するが、いずれにしてもデジタル地上波のことがまあどうもはっきりしない。というわけで前述のステークホルダーを全部お呼びして意見を聞く研究会をおこなった。民間ベースでおこなったのだがとても面白かった。いろいろと解った。DOCOMOでは4Gの研究が始まっていた。
- 09:06 でこの研究会をとおして僕が感じたのは光ファイバーを張り巡らせる(ラストワンマイル)みたいなことは必要ないのでは、ということだった。自宅や事務所に光ファイバーを引く申し込みをすると、技術者がやってくる。当時はNTTMEってのがまだあった。僕の自宅は事務所はその地域で最初に引く家だったりした。
- 09:08 すると、技術者が「おお、これが光ファイバーか」と言っている。こっちがびっくりだけど。話は30年まえになるが、アメリカからの強烈なプッシュで電電公社がNTTになるとき、交渉に当たっていた課長補佐が20年前にあるパーティで非公式に光ファイバーにしてから民営化すべきだったと述べた。
- 09:10 要するに、光ファイバーありきでいろいろやってきたのだがデジタル地上波をみて、なんだ無線で出来るじゃないか、とおもったのだ。さらに無線LANは免許も入らない。クリントン政権のときに無線LANについて大分色々議論されて、そのあとどんどん技術は進んだ。
- 09:12 電話網と無線LANとデジタル地上波、まあやりかたはいろいろあるし経済モデルも政治も面倒なことは色々あると思う。しかし、光ファイバーありきの時代は終わっていると思う。もちろん光ファイバーは必要だ。だが我々の日常世界に直接インターフェイスしてくるのはどうかな?
- 09:14 ネットワークに接続している多くの家では光ファイバーから無線LANにして、その電波でインターネットを利用しているところが多いのではないか。一度この視点から見ると無線帯域というのはコミュニケーション資源として非常に大切だ。無線に開かれたインターネットは実は可能性に満ちている。(完)
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