- Fri, Jan 07
- イノベーションの事業化:新しい経営戦略論にむけて
- 13:18 イノベーション:10年ほどイノベーションコンサルティングをやっているが、ふりかえってみるとびっくりするようなことがある。みんなやってたよなあ、という感じなのだ。10年ほどまえから3年か4年、次のネットワークサービスを考えて調査してプロトタイプまで作った。
- 13:20 そのときクライアントはビジネスには出て行かないで個人コンテンツに行く戦略に変えましたといって頓挫した。しばらくしてgoogle カレンダーが出た。同じく、GIS情報のオープン化があり、シルクロードをナビしようという実験プロジェクトを行った。そうそうたるメンバー会社でおこなった。
- 13:21 衛星を上げて地図情報をとっているからオープンにするのは嫌だというところと、何処に顧客がいるか解らないという声で実現しなかった。これはgoogle map とearthになった。インターネット上での情報技術の流れをみていると、こうしたことはまあちょっと民族誌調査をすれば思いつく。
- 13:24 数年前に手ぶらインターフェイスというコンセプトで情報家電を考えようというプロジェクトをおこなった。これもプロトまで作った。が最後にCTOが案を蹴った。研究所のトップもびっくり。いまやキネクトが安価に市場にでている。テレビを家中のセンサーとアクチュエータにするチャンスだったのに。
- 13:25 またあるところとラップトップの次のコンピュータを探すプロジェクトをおこなった。予算もたっぷり使い、徹底的に民族誌調査を行った。ネットワークにつながる電子写真立てのようなものが間違いなく市場に受け入れられる予感があった。プロトも作った。台湾のEMSを使うことも検討した。
- 13:27 だが、担当の事業部長が副社長になったにもかかわらず、案は実行されなかった。デザイン思考はきちんと使うととんでもないアイデアだが社会の中にコンテキストをもつものを見つけ出してくる。プロジェクトが実現しないときは悔しい思いをしてもっといいアイデアだったらとおもうが、振り返ると違う。
- 13:29 ある程度の技術の目利きが出来てきちんと顧客が生活している世界をみると、そこそこの製品やサービスのイノベーションは出来る。だが、それを新規事業とするかどうかの意志決定を経営陣が行うことが出来ない。そこが一番の問題だとここ2〜3年は考えている。
- 13:32 日本の会社の現場のエンジニアやデザイナー、あるいは企画やマーケティングは創造的で作業が誠実で実に優秀である。ポーターの影響でサプライチェーンの合理化を行う戦略が中心になり、顧客にむかってバリューチェーンを構築していく経営戦略がない。ここに突き刺さるような新しい経営戦略論が必要。
- 13:34 さらに新しい組織論も必要。創造のための時間への投資ができない。テレビや車やラップトップといった人が形を決めたものを易く壊れないものにするための投資は出来るが、何をつくるか、なぜつくるか、を考え抜く時間や人材への投資がない。ここはデザイン思考の役割だ。ここがない。
- 13:35 そして、どうやってつくるのか、自社のコア技術は何か、作りたいモノをつくるにはどのような技術がいるのかを考えない。ここはオープンイノベーションであり破壊的技術が活躍するところだ。さらにどうやって生産するかがある。工場の問題だ。次にどうやって顧客に届けるかの問題がある。
- 13:37 作るモノが明確で何故作るか、どうやって作るかがわかってくれば工場は日本にはもうないだろう。また市場も日本ではない。アウト・アウトと呼ばれる。だが何を作るかなぜつくるかどう作るか、さらには製造工場の設計と維持のための人材育成、これは日本で行うことが出来る。
- 13:38 アメリカとヨーロッパに市場があれば5000億円くらいのビジネスを行うことは難しくないし、そうした隠れた優良企業が日本にはある。だがこうした企業が次の先導的企業つまりは一兆円以上の売り上げになると考えると、アジアの顧客にどうやって売るのかを考える必要がある。
- 13:39 いま執筆中の『デザイン思考と経営戦略』はこの問題も含めてイノベーションが産業となる方法について具体的に展開している。(この項 完)
- 14:39 イノベーションが何故実行されないのかという質問がいくつかありました。本当に何故実行されないのでしょうか。台湾も韓国もメーカーは同じメンタリティです。この問題をきちんと整理することが大切ですねえ。4月からのKMD奥出研究室博士課程ワークショップの大きなテーマの一つです。
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2011年1月8日土曜日
イノベーションの事業化:新しい経営戦略論にむけて
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