analysis

2011年2月26日土曜日

NUSDCCデザイン思考ワークショップ第4日目


  • Fri, Feb 25

  • 11:51  NUSDCCデザイン思考ワークショップ第4日目:Tinkeringの次は、スケッチングからプロトタイプへと移行する。Neil Gershenfeld Fab: The Coming Revolution on Your Desktopの意義から説明する。

  • 11:54  6年ちょっとまえだが、久し振りにMITのメディアラボを訪問してびっくりした。工作機械などに溢れていて、コンピュータグラフィックスと人工知能のメディアラボとは全く違う雰囲気になっていた。さらにその機械を使いこなす実践的な授業が提供されていた。

  • 11:56  ユビキタスコンピューティングを実現するのはこれだなと思った。ワイザーユビキタスコンピューティングの考えは普及していたが、それはPCが超小型化したものをネットワークでつなぐだけであった。8年ほど前に情報住宅を造って大規模な実験をしたのだが、生活環境に馴染まない。

  • 11:59  人間の頭はすぐに本質論を論じて一般的な答えを出そうとする悪い癖があるので、コンピュータと生活環境は馴染まないといったそもそも論が出てしまう。またその逆に無節操にコンピュータを日常世界に持ち込む愚挙も例を挙げればきりがない。

  • 12:01  ネットワークによるシステム的なサービスの提案が生活に着地しないのだ。家電メーカーと何度か共同研究をしたが、プロトコールの標準化ばかりでらちが明かない。そのうちに気がついたのは、下請け、孫請けの構造だ。ほとんどの電子回路はメーカーの人は作らない。アナログ回路にいたっては孫請けだ。

  • 12:04  ようするに組み込みと呼ばれている市場である。この仕組みがある限り、車とか冷蔵庫とかテレビしか作れない。ネットワークの方はユビキタスになり自在なコミュニケーションが可能になるが、それを人間に媒介してくれる「メディア」を自在に作ることが出来ないのだ。

  • 12:08  理論的にここを突き破ったのがMIT石井裕先生のTUIで(Tangible User Interface )だ。ユーザーインターフェイスはGUIである必要はない。インターフェイスをGUIに限定していたパーソナルコンピューティングの世界が変わる

  • 12:11  GUIが一気に普及したのはマウスをグラフィックスに連携させたからだ。エンゲルバートマウスの発明がGUIと結びついた。では石井さんのTUIがGUIに相とすると、マウスに相当するモノは何か?実はここに大きな問題点がある。

  • 12:12  僕はTUIはGUIのユビキタス版ではないと思っている。むしろTUIはマウスとおなじデバイスの話だと考えている。その意味でTUIはチューリング賞をもらっても良いくらいだ。しかしGUIに相当するインターフェイスの仕組みをユビキタスコンピューティングは持っていない。

  • 12:18  TUIの延長にKuniavskySmart Thingsがある。サブタイトルが Ubiquitous Computing User Experience Design となっているようにずばり本質的な議論だ。

  • 12:20  人間があり、smart thingsがある。それを「端末」としてユビキタスコンピューティングの世界に入っていく。前置きが長くなったが、GUIの次のユーザーインターフェイスをまだ我々は解明していない。マウスに相当するような何にでも使える端末をまだ見つけていない。

  • 12:23  日常世界を新しくデザインしていくためには「端末」を次々とデザインしてその有効性を検証することが必要だ。この作業を繰り返すためにパーソナルファブリケーションは強烈な武器なのだ。センサーとアクチュエーターからなる端末がネットワークにつながり、人間とインタラクションする。

  • 12:30  この複雑な関係をデザイン思考は挑戦するわけであるが、キーボード、マウス、ディスプレイという仕組み、冷蔵庫、テレビ、調理機器、洗濯機などの家電の仕組みを繋いだのでは邪魔で愚鈍な仕組みしかできない。これがインターネット家電やインターネット「テレビ」がデザイン的に未熟な理由である。

  • 12:32  家電やパソコンを「ハック」して組み替えるわけである。この「理論」と技術はTom Igoe小林茂さんたちによって確立した。Tinkeringの哲学的な意義である。さて、問題はハックして再構成したモノにもう一度形を与えなくてはいけない。形がないと人間は使えない。

  • 12:44  この段階で形を与えようとする。パーソナルファブリケーションの仕組みがないと1回に300万円500万円の単位でお金が消えていく。何度も試作を繰り返すと開発費は膨大になる。結局は新しい仕組みの開発は出来ないことになる。ここをこえないと、アイデアだけの作業になる。

  • 12:46  デザイン思考のワークショップの多くはここに挑戦していないので自己満足である。IDEOはここに挑戦しているが、経営を揺るがす膨大な投資を行ってきた。そこにパーソナルファブリケーションの機械が登場したわけである。かなり画期的なことだ。
  • 12:51  SFCの田中浩也さんが、自ら隗より始めよ、の精神で学生と一緒にMITのHow to Make (Almost) Anything (ほぼ何でもつくる方法) を受講した素晴らしいレポートがある。 http://fab.sfc.keio.ac.jp/howto2010/

  • 12:58  さて、問題はデザイン思考の中でパーソナルファブリケーションの占める位置を明らかにすることである。この段階になるともう「思考」では無くなっている。だがほかに言い言葉もまだみつからないのでデザイン思考のくくりで議論を進めておきたい。

  • 13:36  3Dプリンターとレーザーカッター、NC旋盤が基本となる。センサーとアクチュエータとネットワーク接続、およびこうした機能を統括するマイコンによってできた構造を収納する仕組みを作るのである。したがって形と機能のせめぎ合いになる。そのときに形もイノベーションしなくてはならない。

  • 13:38  RT @nium_: @NaohitoOkude 外部のモノであるデバイスが棄却され、身体だけが残る、という可能性もあると思います。例えば Skinput の延長線上です。また、マウスのような「共通の様式」の価値も薄まるかもしれません。

  • 13:56  @nium_ コメント有り難うございます。僕の研究はこちらにシフトしています。また身体の(無意識な)動きと意識の論理的な仕組みがカップリングされているところをみつけて、そこにインターフェイスしていくことも始めています。そこの多様性が「TUI」の次の課題にもなりますね。

  • 14:06  さて、センサー・アクチュエーター・ネットワークを今までにない方法でくみあわせて形にするまでのプロセスをPanaviを例として説明した。http://d.hatena.ne.jp/panavi/  手作りの形から、レーザーカッターを使う形に、そのあと柏樹さんのデザインで仕上げ。

  • 14:38  ここまでのプロセスを詳細に写真をつかって説明をした。このあたりまで出来ると、テレビ局の取材に対応したり展示会へのデモ出展が出来るようになる。ここまで出来たら次はいかにこのプロトタイプをビジネスに結びつけるかを考える段階に入る。これはこのデザイン思考ワークショップでは議論しない。

  • 14:41  議論しないがスコープとしてはしっかりと持っておくことが大事である。コンセプトの段階から社会的スコープを明確にすることが大事なのだ。スコープはビジネスではビジネスモデルだろうが、なにもビジネスとは限らない。制度的インパクトもスコープの中に入る。資金をどう調達するか、これも大切。

  • 14:43  以上を説明して、次はNUSインキュベーションセンターの3Dプリンターと建築学部のレーザーカッターがおいてある場所の見学。20数名で奨学生の修学旅行のようにでかけた。こうした機械が工学部に無いわけではない。だが使う用途が違っている。実際にTAが機械を動かして見せた。

  • 14:47  パーソナルファブリケーションの哲学と実際の現場の両方を見学した後はグループに分かれてスケッチをプロトタイプに変形する作業をグループ毎に開始した。ダンボールの状態のプロトタイプでいいではないか、あとは実際のモノを作るだけだし、という感じで乗り気がしないグループが出てきそうで心配。

  • 15:23  という感じで午後のワークショップが始まったが、やり始めると少しずつエンジンがかかってきた。またTAがそれぞれ適切に作業をサポートしていた。デザイン思考をしっかりと身に付けている大学院の学生が5名以上。これは強力だなあと今更に感心。メンバーの教員の学生が応援に駆けつけたりした。

  • 15:24  というわけで6時すぎまでワークショップは続いた。作業は明日の午後早くまで続く。作り始めると作業は楽しい。(この項 完)

Powered by twtr2src.

0 件のコメント:

コメントを投稿