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2010年9月12日日曜日

ポスト西洋社会と新しい啓蒙主義

  •  Sat, Sep 11
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  • 09:22  昨晩は9時ちょっとまえから六本木IZUMIでジャズ遊び。ピアノの関根敏行さん、いつもだが、半端なく上手いね。3曲ほどセッション。夜中は友人Aとバーで。非常に社会的意義のあるファンドを運営していたが2年前にリーマンショックで大変なことに。でもまあつぶれることもなく最近は活躍。
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  • 09:23  リーマンショックのあと世界の構造は本当にかわったのだが、これを実感できている人は少ない。彼は「世の中のためになることしかビジネスにならない」と実感したという。「まえだって、社会的貢献度高かったじゃないか」と言うと、「でも心の中で本当に軸足は社会だったのか」と思うとの返事。
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  • 09:26  ぼんやりとでも有名なところなので誰かわかるので、詳細を省いて話を続ける。企業がCSRやエコロジーを唱えても偽善ばかりだという。だがリスクをとって社会のためになることをしようとするとそこには凄く儲からなくてもビジネスとして成立する実体がある。起業するとは社会のために尽くすことだ。
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  • 09:29  自分は安全地帯にいる「あがった」人が立身出世金儲けを若者に説く。制度からの離脱、自由に生きることを説く。でも自分のことばかりなんだよね。また、人の為って言うと、なんか凄く困っている人にものを恵むような話。分かりやすいテーマを選び、善行をお金をかけて広告したりする。そんな話ではない。
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  • 09:31  「会社は」と聞くと「創業のパートナーと、スタッフ一人。良く付いてきてくれると思うよ」と答える。社会を見渡す。自分が出来ることを考える。そして、地道にそこで頑張る。彼の最近の活動の書類を見せてもらったが、納得。でも僕たちはどうしてこうした経済活動の価値を見失ったのか。
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  • 09:34  リーマンショックの前に妙な資本主義が登場した。市場からの資本の直接調達、日本の資産だった郵貯をむしり取りに来るグローバルな金融資本主義、そして妙な銀行の登場。日下公人氏は何冊もの著書でこのことを的確に鋭く批判をしていたが、その声を聞いて実行した人は少ない。そして心ないお金が動く。
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  • 09:37  固有名詞を出して恐縮だが、ニュースにもなっているからいいよね。東京スター銀行、新生銀行、あおぞら銀行。ほかにもあるか。長銀や興銀はどうなったのだ?まあ資本主義の強烈な組み替えに翻弄されてきたのだ。当事者は大変だったろうが、金融のグローバル化に吹き飛ばされた。
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  • 09:40  吹き飛ばされた後に登場したのが新しい金融システムだ。ファンドをつくり、投資する。安く買って高く売る。グローバルにこれを繰り返す。ババ抜きになる。頭の良い人がややこしい理屈を作り、我々の生活とは関係ないところに「市場」をつくる。そしてリーマンショックでそれが壊れる。
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  • 09:43  我々の日常世界はお金と偽善と薄っぺらな道徳に生活環境といったものの集まりになってしまった。が世の中は面白い。その世界が崩壊したのだ。リーマンショックはそのくらいの事件だ。そして日常世界の混沌が再び訪れた。合理的計画的ユートピア・デストピアは崩壊して、混乱した日常で前を見て生きる。
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  • 09:46  するとやることはいっぱいある。有名にならなくても金持ちにならなくても幸せになり、プチブルジョワジーのような自己中心的価値ではなく、といって英雄のように世界を支配するわけでもなく、生きていく。そのためには英知も技術も倫理も、そしてなによりも資本が必要となる。新しい資本主義だ。
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  • 09:51  Dominique Moisiという人がいる。The Geopolitics of Emotion: How Cultures of Fear, Humiliation, and Hope are Reshaping the Worldという本を書いている。
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  • 09:55  ファイナンシャルタイムズのコラムニストでもある。この本は世界の文化を感情で区分したもので、というもので、具体的にはインドと中国が希望、イスラム諸国は屈辱でヨーロッパアメリカは恐怖が特徴。でグローバル化とはこうした異なる価値観を持った"他者"との関係が重要になる、といっている。
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  • 10:03  Moisiはちょっと前のファイナンシャルタイムズにThe west must start living up to its own idealsと題したコラムを書いている。リーマンショック以後の世界は「ポスト西欧社会」だという。この世界が何かを理解するには「プレ西洋世界」を知る。
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  • 10:10  イギリスがインドを征服して、中国の帝国が亡びる前の世界のことだ。この時代のあと、西洋はインドや中国を自分たちより「劣っている」と考えた。16世紀のヴェネチアとオスマン帝国の関係、あるいは初期の東インド会社とインドの関係は共感と好奇心に満ちたものだった。だが、西洋世界が到来。
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  • 10:12  西洋が他者を支配し劣ったものと見る時代が到来した。だがその仕組みがリーマンショックでついに崩壊したという。人口学的にも2050年にはヨーロッパとアメリカ合衆国の人口の合計は全人口の12%にすぎなくなる。そのときに西欧は他の世界との関係をどのようにしていけばいいのか。
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  • 10:17  インドも中国も現在経済的に高度成長期にある。このまま拡大して多くの問題が生まれてくるだろう。西洋社会はこうした国と新しい関係を結ぶ必要がある。それは経済・財政、あるいは軍事的な関係ではない。理念あるいは理想、つまりは民主主義である。つまり法による支配と人権の尊重だ。
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  • 10:19  資本主義と民主主義はおなじものだという幻想が西洋にはある。だがそんなことはないと、中国の例を見て思う。民主主義なくして資本主義が成立している。したがって資本主義と民主主義を結びつけたこと自体は西洋の大きな貢献なのだ。ヨーロッパの帝国が世界を覇権した18世紀、啓蒙主義が生まれる。
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  • 10:24  進歩の人間の偏見からの解放。いま勃興している新しい資本主義の道徳化が必要なのだ。18世紀末の啓蒙主義による民主主義は20世紀後半にはその存在も危うくなり、北欧でかろうじて残っただけだとMoisiは言う。権力はつつましく、女性の社会進出が確立している。アメリカ合衆国とは違う姿だ。
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  • 10:26  北欧モデルはいまのフランスともイタリアとも違う。ヨーロッパも啓蒙主義の理念からはほど遠い。そして20世紀の資本主義は終わった。いま始まる新しい資本主義に啓蒙主義的民主主義をどのように組み込むか。物質的な繁栄だけではなく、知的で精神的な豊かさをどのように獲得するのか。
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  • 10:28  西欧の国は自分たちの忘れ去った理念をもう一度自分たちの社会のなかで「再発明」するべきなのだ。そしてそれはアジアに始まっている新しい資本主義と啓蒙思想をどのように組み合わせていくかをアジアとともに考える事でもある。以上Moisiのコラムから紹介したが、非常に考えさせられる。
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  • 10:33  19世紀後半から20世紀の倫理や哲学では解決できない問題なのだ。福沢諭吉は資本主義と民主主義を融合させる枠組みとして功利主義を用いた。それが実学の枠組みだ。だがその魔法が上手く機能しない。むき出しの人間の身体が精神のない肉のかたまりのように社会のなかに放置される状況が生じる。
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  • 10:35  そのとき、20世紀の倫理ではそれを生み出したシステムの運用者の良心に訴える。あるいは個人の規範に訴える。だが何も変わらない。システムから変えよう、それもいま変えることができるシステムから自分の力で変えよう、これが社会起業家の方法だ。リーマンショック後、この方法が有効になる。
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  • 10:38  社会起業家たちの活動はいまの世界の現場にある。世の中に為になることしかビジネスにならない。そんな仕組みを生みだそうとしている。そのときに必要な能力は天才的な閃き、超人的な技術力、神のような芸術性ではない。自分と異なる他者とコミュニケーションする力だ。
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  • 10:40  様々な人が社会で様々に出会いコミュニケーションをする。この環境を維持し守ることが大切で、ここを守れなくなると、資本主義と民主主義の融合は社会主義になる。だが、自分勝手に活動をすると、殺伐たる合理主義の跋扈する世界になる。超人的な芸術家や科学者も合理主義社会の住人に過ぎない。
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  • 10:42  コラボレーションすること、お互いにコミュニケーションすること、お互いに依存すること、お互いを必要とすること。これは18世紀啓蒙主義にあったが19世紀20世紀とあまり機能しなかった特徴だ。せいぜいユートピア運動だ。だが、いま、グローバル資本主義が倒れ、新しい可能性が生まれた。
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  • 10:42  @hosokawashige 御意 ポランニーの大転換を彷彿とします。RT @NaohitoOkude:... >>ありがとう。そうだった。思い出した。  [in reply to hosokawashige]
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