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2011年2月25日金曜日

NUSDCCデザイン思考ワークショップ第3日目


  • 15:50  NUSDCCデザイン思考ワークショップ第3日目:昨日のワークショップを振り返っておきたい。今日は場所をGlass Houseに移動して9時から小林茂さんのレクチャーを開始。DCCは学部学生のためのプロジェクトで今年が第1年目。50名ちょっとは成績優秀者から選らんだ。

  • 15:52  これについてはプロジェクトの責任者である副工学部長が「失敗だったかな。来年から創造性で選ばなくては」とちょっと言っていたが必ずしもそうではない気もする。見方がおもしろい。スタンフォード大学のd.school的な社会的使命感を持っていることが解る。まあ、だから優等生なんだろうけどね。いずれにしても俊英である。彼らがワークショップをするための場所としてGlass Houseが作られた。2階建てである。

  • 15:56  SFC時代の奥出研究室のスタジオのような雰囲気もある。小林さんのレクチャーはここでやることに計画の当初からの計画である。全員にTinkeringを行ってもらうので一望しながらやろうという計画である。また参加者はTinkeringを非常に楽しみにしている。

  • 16:03  講義は小林さんのローランド時代のスライドから始まった。シンセサイザーにビデオ編集機が紹介された。ローランド退職後IAMASで教え初めてGainerを作った話をへて、PrototypeLab出版までが手短に紹介された。この本で紹介されている作品は、編みロボなどおもしろいね。

  • 16:06  小林さんはその後Arduinoをつかったボードを開発する。このボードをつかって「ハードウェアスケッチング」というコンセプトで活動を始めた。スケッチングとは文字通りスケッチである。絵を描くときにどんな絵にしようかなどいろいろなことを考えて気軽にスケッチをかく。

  • 16:08  この感覚で気楽にスケッチを描くようにハードウェアを組み立てようというのがハードウェアスケッチである。絵はスケッチできる。粘土やダンボールでも形のスケッチが出来る。ところがハードウェアになると気軽に出来ないという状況を改善すべくArduinoが導入されたのだ。

  • 16:10  ビデオを使っても簡単に「スケッチング」できる。デザイン思考にビデオを導入することをためらう会社が多いが、このリテラシーは一度身に付ければ後は簡単なのでおすすめだ。さて問題はハードウェアである。ここで簡単にスケッチができれば何を作ればいいかが非常に簡単に解る。

  • 16:11  なんどかハードウェアスケッチングを繰り返してプロトタイプへと向かっていくのである。出来上がったプロトタイプは展示会なので展示可能になっている。このプロセスからできたモノとして非常に評価が高いのはMountain Guitarである。このビデオは素晴らしい。

  • 16:19  さてスケッチプロトタイプであるが、どのように違うのか?Bill BuxtonSketching User Experience において、手間暇とお金を掛けないで素早く作るプロトタイプをスケッチと呼んでいる。(138p)

  • 16:20  ものをつくるときに何度も何度もスケッチをすることが大事なのだ。そのためにArduinoがある。短時間でどんどんとスケッチを行わせる。今回のワークショップはこの作業の管理を徹底して行っている。もっと時間があればとか余裕があればという意見が出てくるがそれは間違いだ。

  • 16:21  このワークショップを計画するときもそこに注意をした。クロッキーという作業を知っているだろうか。短期間にスケッチをどんどん行う。すると細部ではなくて面や線で対象を見ることが出来るようになる。ハードウェアスケッチングでも同じである。ゆっくり行うと全体が見えない

  • 16:23  だが粘土はともかくハードウェアでスケッチを行うのは難しい。これが定説だ。それを覆せないかといろいろな人が過去10年ほど工夫をしてきた。そのなかで最近になってArduino周辺の技術がまとまってスケッチが出来るようになってきた。ここを理解してもらうのが3日目の目的である。

  • 16:27  小林さんが実際にファシリテーションを行ったハードウェアスケッチングのワークショップの写真が何枚か投射された。何が作れるかの写真もおもしろかったが、どうやったらハードウェアでスケッチできるかの説明のスライドは非常に説得力があった。

  • 17:20  いくつかおもしろい作品の紹介があった後、Tinkeringの説明に入った。まずはPhysical Computingの話から。Tom Igoeがこの本を出したときは衝撃的だった。コンピュータという箱をハックすると中はセンサーとアクチュエータとそれを媒介する基盤だけになる。

  • 17:22  我々の物理的な世界そのものにコンピュータ環境を導入することが出来るということが明らかになった。その解明は決して簡単ではなかった。抵抗から始まりさまざまな部品がぎっしりと詰まった箱を分解してその構造の意味を再定義する作業はかなりの知識が必要となる。

  • 17:24  Igoeはそこを明確にして記述した。この本によって、コンピュータの問題を考えるときに、キーボードと箱とモニターという形にこだわらなくても良いことを教えられたのだ。そしてArduinoが登場する。これは「オープンソースハードウェア」として登場した。

  • 17:29  このころインタラクションの装置を作ろうとすると、PicARMといったマイコンをプログラムする必要があった。まあいまでも本格的に作るためには必要だ。だがちょっと試すつまりスケッチするには大変である。この問題を解決するために工夫されたのがArduinoである。

  • 17:31  このマイコンをProcessingというプログラミング言語で操作すると、いままでかなりハードルの高かったインタラクションのスケッチやプロトタイプを比較的短時間で作り上げることが出来る。プロセッサーのつくりかたも「オープンソース」として公開した。昔僕の研究室で自作したこともある。

  • 17:33  これをつかってインタラクションのスケッチングをしようというのが3日目の午後に行われるワークショップの課題だ。今回はこの作業を支援するキットとしてGroveを使うことにして人数分のキットを手配した。なかなか良くできたキットで、センサーとアクチュエーターとマイコンを連結できる。

  • 17:35  以上小林さんの講義をサマライズしたが、非常に快適に講義はすすみ、聞いている人も楽しそうだった。午後は5つのグループにわかれてTinkeringの実習である。前日に作ったコンセプトの中で重要と思われる箇所のインタラクションデザインを行う。これが課題である。

  • 17:55  午後はワークショップをおこなった。ある程度のスキルを教えて、その後前日につくったコンセプトにインタラクションを加えていく。そして夕方にプレゼンテーションを行った。グループAは車椅子で快適に移動できるバスのデザイン。自動的に適切なスロープが出てくる仕組みをスケッチした。

  • 17:59  手堅いが、彼らのペルソナはハンディキャップのシンガーである。車椅子で移動しながら演奏を行い生計を立てている。この魅力的なペルソナが生きていない。高齢化社会になったときに、車椅子で動く人が「支援が必要な少数」では無くなる。実はここがポイントではないか。

  • 18:01  多数の人が「支援」が必要なら、それを提供することは特例ではなくなる。そして特例ではなくなったときに現在のシステムが崩壊するなら、それに変わるシステムを考えなくてはいけない。また快適な移動は乗り降りだけではなくて、バス停留所も含めたシステムが必要になる。この方向に展開したいね。

  • 18:13  グループBは家で脳梗塞の神経学的理学治療をする仕組みをインタラクションにした。リハビリテーションをしているときの環境を病院ではなくてリビングルームにする。したがってビープ音ではなく音楽にする。そのあたりはおもしろかった。

  • 18:14  がオリジナルコンセプトにあったオーストラリアにいる息子とのコミュニケーションがない。頑張ってはたらいでようやく経済的に恵まれ始めた勤勉なシンガポール人が脳梗塞になって治療をしている。仲間や家族とのコミュニケーションとリハビリテーションの作業が融合している瞬間を工夫する。

  • 18:16  グループCはNUS内の新しい交通手段。これもバス問題。バスでの移動は便利といえば便利だが末のも大変だし、乗り降りも大作業となる。若者でも大変だ。大きなバスの替わりに小型の無人自動車の提案。これ自体は珍しくないが、大学キャンパスで何台車を用意すれば需要をまかなえるのか。

  • 18:18  この段階で新しい移動手段を越えている。また個人で移動しているとも思えない。4人掛けくらいの無人自動車がニーズにあわせてキャンパス内を動き回る、というシステムを考えるのはどうなのか?学生の移動のパターンはどうなのか?いろいろと調べて考えることはありそうだ。

  • 18:19  グループDはタクシーに変わる新しい交通手段の提案。これも無人自動車。ネットワークの専門家がメンバーにいて、交通制御のリアリティも無人自動車の設計も自信がある。すごいね!ところでビジネス的にはどうなるのか?と質問。政府が買い上げるだろうという答え。これもなかなかびっくり。

  • 18:21  たしかにシンガポールならそうだとおもう。だがこれから先がある。これを産業にするにはどうしたらいいのか?ここに上手く答えられない。まあこれは日本も同じだね。強烈なインフラサービスはそれ自体、輸出産業になる。ここを想像することができると、おもしろくなる。

  • 18:23  グループEはDCCの若手の教員中心。Skitが秀逸。数学の時間だが、先生の解析学の授業が何を言っているのか分からない。英語のなまりもひどいし、内容も難しい。わからないところを聞きたいが「アジアの学生はシャイだから授業中に質問は出来ない」。でもたもたしていてついて行けなくなる。

  • 18:24  先生の方は先生で学生がわかっているのかわかっていないのか解らない状態で教えていてこれも不安だ。このあたり、学生の感覚がのこっていていいね。で解決の方法が、大講義室の椅子に付いている折りたたみの机を備え付けの頑丈なコンピュータの板にする。すわって、それを出してログイン。

  • 18:26  先生の授業がわからないときはそのことをこのコンピュータに入力。それが先生に伝わる。先生はそこでもう一度説明を試みる。これは単純だけどいいね。ワークショップ型の授業をしているとどうしても知識型、分析型の授業が追いつかないし、これを少人数でやるのはコストがかかる。

  • 18:27  オンラインでやると勉強してるのかいないのかわからない。基礎的な数学とか物理とか工学とかそういったものを教えるために大教室を生かす、というのはなかなかおもしろい。電子教材もあまり入らない。今までのように教えていればいい。実践型の授業が増えたときに逆に必要になりそう。

  • 18:28  といった感じで、3日目は無事終了。発表後、多くの参加者が名残惜しそうに小林さんの周りに集まっていたのが印象的だった。(この項 完)
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