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2011年1月17日月曜日

デザイン思考と民族誌


  • 04:40  デザイン思考と民族誌:

  • デザイン思考はフィールドワークを行い、頭ではなく手でものをつくって(Make)考え、複数の人とコラボレーションを行いながらイノベーションを行う。これが基本というかすべて。Makeの部分が弱いとアイデアを組み合わせたコンセプトを反復してつくり直せない。 »»

  • 04:42  デザイン思考と民族誌(2):そこでTinkeringとかスケッチングとか行った手法を身につけるわけだ。民族誌のところは比較的身につけやすいのでいままであまり説明してこなかった。だが最近デザイン思考が普及していくにつれて民族誌つまりは観察のところがどうもうまく伝わっていない。 »»

  • 04:44  デザイン思考と民族誌(3):もちろん民族誌といってもいくつも方法があり背後にある前提も異なっている。だが、人々の生活の中にデザインされた道具を持ち込み、それを使って適切なサービスを提供することを目的とすると、採用できる民族誌の手法はひとつだけだ。それが解釈学的民族誌である。 »»

  • 04:48  デザイン思考と民族誌(4):植民地支配のための情報を収集するために始まった人類学は帝国主義的体制が凋落するに連れてその価値を失っていく。一方人間の存在について考えてきた哲学としての人類学は実証主義から批判的思考を導入し、現象学の導入に至る。解釈学的現象学の影響が大事だ。 »»

  • 04:54  デザイン思考と民族誌(5):解釈学的現象学の影響を大きくうけている方法を解釈学的民族誌と呼び、クリフォード・ギアツが言い始めた。その基本の方法が厚い記述あるいは濃い記述Thick Descriptionである。書き手とコンテキストを共有していない読み手がなんのことかわかる記述だ。 »»

  • 04:56  デザイン思考と民族誌(6):デザイン思考における民族誌は濃い記述を行うことから始まる。2時間観察をしてそのあと一気に経験したことを思い出す限りすべて書き出す。現象学で言うところの超越論的還元、つまり自分の判断を「停止」して観察したことを「かっこにいれて」記述する。 »»

  • 05:00  デザイン思考と民族誌(7):この活動ができない。まったくデザイン思考を知らなければこの方法を行ってくれるが「顧客を観察する」と思った途端に現象を記述ではなくて「説明」しようとする。いわゆる「気付き」だ。これをやってはいけない。調査して作るものやアイデアに創造性がなくなる。 »»

  • 05:01  デザイン思考と民族誌(8)Contextual Inquiryという方法はこの間違いを初心者が犯さないようにしてある。つまり調査対象は「師匠」であって、そこに「弟子」として入門しなさい、というわけだ。師匠はマニュアルを使って教えることはない。やって見せるだけだ。 »»

  • 05:03  デザイン思考と民族誌(9)デザイン思考のための民族誌の方法が一度身につくと一瞬にして超越論的還元をおこなって世界を記述できるようになる。だが分かっていないとまるで駄目だ。マーケティングの世界でも昔はそう言われた。大学を卒業してマーケティングの部門に配属される。 »»

  • 05:04  デザイン思考と民族誌(10):すると上司からデパートの売り場に行って来いと言われる。次の日、どうだったかと聞かれる。でまた行って来いと言われる。一ヶ月ほどただそれを繰り返す。あるとき突然人の流れがわかるようになる。そんな話を上司に話せるようになると合格だ。 »»

  • 05:07  デザイン思考と民族誌(11):マーケティングリサーチという手法が普及する前の話だ。だがただひたすら顧客を見て記述する。ここができないとデザイン思考は始まらない。なので濃い記述をとにかく心がける。難しいことではない。何かを発見して説明しようと思ってはいけない。それだけだ。 »»

  • 05:09  デザイン思考と民族誌(12):いま民族誌的手法をイノベーションに導入しようとしている人は多いと思うが、濃い記述ができていないとどこにも進まない。ここを確認しよう。さて、濃い記述とはコンテキストを共有していない読者に「師匠」の世界がわかるように記述することだ。ではコンテキストとは? »»

  • 05:11  デザイン思考と民族誌(13)これもわかるとわかるのだが、見る目がないとわからない。Contextual Inquiryでは初学者向けに便利な道具を提示している。これが5モデル分析だ。濃い記述を図形として書き直すのだ。まず作業の流れをみるフローモデル »»

  • 05:13  デザイン思考と民族誌(14):時間の流れを見るのがシークエンスモデル。空間の配置をみるのが物理モデル。使っている道具と言葉を一致させるのがアーティファクトモデル。そして行動の背景にある社会関係などを描くのが文化モデルである。これも練習だ。初心者はここを飛ばしてはいけない。 »»

  • 05:16  デザイン思考と民族誌(15):さて、文化モデル以外は観察して記述すれば確証をもって描くことができる。観察を記述して超越論的還元をおこない、疑い得ないという確信が持てることをフッサールは明証性 intelligibility と呼んだ。 »»

  • 05:18  デザイン思考と民族誌(16)だが、人の心のなかのような観察できないことはどうするのか?ここを「科学的ではない」と排除してはイノベーションはできない。文化モデルは調査者が解釈をして主観的に創りだしたものだ。ここに踏み込んでいかなくてはいけない。 »»

  • 05:21  デザイン思考と民族誌(17):デザイン思考では観察をしたあとアイデア作りをする。Ideationである。これは現象学でいうところの形相的還元である。超越論的還元で机を記述したあとで、脚が3本だったら、天板がでこぼこだったらなどといろいろと考えていく。 »»

  • 05:24  デザイン思考と民族誌(18):そのようにして机が机である本質を探していくのであるが、デザイン思考も同じようにする。記述とモデル分析をもとにいろいろとアイデアを作っていく。このときに目的を設定する。調査した人たちは何を目的としてるのかを明確にする。次に文化モデルを参照する。 »»

  • 05:26  デザイン思考と民族誌(19)クーパーは一連の著作の中で文化モデル、彼の言葉ではメンタルモデルを解釈してつくるところがマーケティング調査と異なる点だと強調している。ゴールとメンタルモデルを明示的にきめて、観察記述とモデル分析を参考にしてどのようにすればゴールに到達するか考える。 »»

  • 05:28  デザイン思考と民族誌(20)そしてスケッチあるいは簡単なプロトタイプを作る。これは観察に基づいた主観的なものだ。正しいか正しくないかではなくて、適切か(appropriate)どうかが問題になる。それはフィールドに持っていかなくてはわからない。もう一度民族誌だ。 »»

  • 05:30  デザイン思考と民族誌(21)此処から先は中級レベルになるのであらためて論じたい。だがなにかイノベーションを行おうとしたら参考になりそうな人を探して師匠として入門して濃い記述をおこないモデル分析をしてメンタルモデルとゴールを設定してアイデアをいくつも作る。 »»

  • 05:32  デザイン思考と民族誌(22):そしてスケッチやアイデアとして手に取れるようにして、もう一度フィールドに行き、観察をする。この作業をまずは手を抜かずに行う。ここをおろそかにするデザイン思考があまりにも多い。いくらフィールドワークをしても答えは落ちていないのだ。 »»

  • 05:34  デザイン思考と民族誌(23):フィールドを道場として自分が変わる。デザイナーもエンジニアもマーケッターも、街に出て自分の経験を拡大して他者と世界を共有する。イノベーションはここからだ。そして民族誌的手法の効用はここにある。半端な努力では日常世界のカラは打ち破れないのだ。(完) »»

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