analysis

2011年7月13日水曜日

プラグマティズムへの読書案内 鶴見俊輔『思い出袋』から

  • Tue, Jul 12

  • 00:28  鶴見俊輔『思い出袋』(岩波新書)読了。高校1年生の時『思想の科学』という雑誌を知り、彼の名前を知った。そしてプラグマティズムを紹介した『アメリカ哲学』。彼を軸として多くの思想家の本を読んだ。80歳をこえた彼が思い出の人と本を語る。読みたい、あるいはもう一度読みたい本が出てくる。

  • 00:36  21世紀に生きていくということを資本主義が回転を始めたアジアで経験するという時代にいま僕たちは生きている。先生のなかに正しい答えがあると信じて、それを写すという優等生の呪縛から抜けなくてはいけない。周りを見回して状況を理解して自分で考えていくのだ。そんな先達として2名紹介される。

  • 00:43  一人はジョン万次郎。もうひとりは金子ふみ子。ジョン万次郎はいろいろ本が出ていてどれも興味深い。金子ふみ子は瀬戸内晴美の小説『余白の春』の主人公。詳細は略すが、自分の経験を吟味することで人生を開いた。プラグマティズムの教えだ。

  • 00:47  状況を自分の力で読み取った人として西郷隆盛のいとこの大山巌、彼が総参謀長にした児玉源太郎。この二人には学習によらない知恵があったとする。先進国の知識を最短期間に学習するという日露戦争後の日本の学校教育とは違う知があったとする。ここがまさにジョン・デューイの学校論の本質だ。

  • 00:50  アガサ・クリスティのミステリー。戦後すばらしい訳者をそろえて早川書房からたて続けに出版されて読んだという。彼女の小説にはエルキュール・ポワロとジェーン・マープルという2人の異なった名探偵が登場する。ポワロは仮説演繹法による推理の達人。マープルは観察と記憶から犯人を捜す。

  • 00:58  小学校の友達の永井道雄。教育社会学者で三木内閣のときの文部大臣だ。『虚無への供物』をかいた中井英夫も小学校の同級生。高等師範付属小学校。鶴見はこのあと不良少年になり行き場がなくなり父親にアメリカに送られる。

  • 01:07  オックスフォード大学で高い位置までのぼりつめ、ラテン語で書かれた聖書を英語にする。14世紀のことだ。人民が読める言葉、ヴァナキュラーな言語で聖書を翻訳する。そのことで僧侶の特権がなくなるのだ。そんな文章がのっている選集を海軍の仕事をしているときにシンガポールで購入。

  • 01:08  その本は、Sir Arthur Quiller-Couch The Oxford Book of English Verse, 1250-1918である。ここにウィクリフの聖書英語訳があったという。ヴァナキュラーでの表現というイタリアのダンテにつながる挑戦。

  • 01:14  学生への課題で身近な人の伝記を英語で書くという課題を出して100点をつけた学生に卒業後20年経ってあったという。彼はノモンハンの戦闘で捕虜になった父親の話を書いたという。1960年代にはこの戦争のことはまだ知られていなかった。

  • 01:14  村上春樹の紀行『辺境・近況』『ねじまき鳥クロニクル』でノモンハンのことは広く知れ渡った。そうなんだ。

  • 01:25  水木しげる『河童の三平』これはいま貸本版がでているね。この本のお祖父さんと孫と死に神の話をしながら戦争が始まりアメリカから帰国するまでの思い出が出てくる。当時ハーバード大学で教えていた都留重人は経済的な力量からいって戦いにならないので、経済の大物達が相談して戦争回避に向かうと。

  • 01:28  鶴見俊輔は家が政治家なので彼らのやり取りがよく分かる。かれらの思考のくせからして戦争に向かう意志決定をすると判断する。ここも面白い。彼の祖父は後藤新平である。

  • 01:33  西洋の定義を真に受けてその適応をこころみるのが明治以来の学問だ。そこには自分で定義をつくり経験が定義のふちをあふれそうになる手応えや弾みがない。ここはデザイン思考でおしえているところであり、プラグマティズムそのものでもある。

  • 01:36  意味が生まれてくる瞬間といってもいい。ここを研究したI・A・リチャーズ『意味の意味』W・エンプソン『曖昧の7つの型』が紹介される。いずれも中国の研究者。意味が一つに特定できない現象を考えた。夏目漱石『文学論』で挑戦した世界だ。自分で意味を作りだしていくのもプラグマティズムだ。

  • 01:51  西洋の知的流行に答えを求めてそれに自分をあわせようとする明治の知識人にたいして福沢諭吉門下の藤田茂吉『文明東漸史』で国策で知識人地位向上をはかる輩をきりすて、自発的にヨーロッパから学んだ高野長英渡辺崋山を上げているという。藤田の本は読みたいな。さて今晩はこのくらい。


Powered by twtr2src.

0 件のコメント:

コメントを投稿